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車載ディスプレイに魅力的な選択肢を与えるにはDDICによる最適化(1/3 ページ)

自動車を設計するエンジニアにとって、ディスプレイテクノロジーの選択は、最も重要な要素になるといえる。感情と理性の両方において、消費者の反応に最も強烈な影響を与えるのは、ディスプレイの仕様のどのような側面なのだろうか。本記事では、市場の傾向から解説していく。

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消費者への訴求力を高めるディスプレイ画像の強化

 日々競争が激化する新車市場において、ライバルメーカーとの争いは、ショールームの中から試乗体験の最中に至るまで、あらゆる場所で繰り広げられている。多くの消費者は、希望のモデルをある程度絞り込んでからショールームを訪れる。しかし、その消費行動には、個々の消費者が期待することや、消費者の懐事情が反映されている。左脳の働きによる購入プロセスであり、この時点で消費者は理性に支配されている。

 しかし、ショールームに入れば、感情を支配する右脳が強く働くようになる。人間は視覚への依存が極めて高い生き物のため、さまざまな外観は自動車に対する消費者の感情的な反応に強く影響する。その結果、運転席に乗り込んだ見込み客の視線は、主な画面操作を行うCenter Information Display(CID)に自然と引き付けられる。このディスプレイを見て、消費者の感情が脳と同じくらい作用し始める。外観が似通った自動車の中から希望の自動車を選ぶとき、CIDの品質は購入者の判断力を揺さぶる。

 自動車を設計するエンジニアにとって、ディスプレイテクノロジーの選択は、最も重要な要素になるといえる。感情と理性の両方において、消費者の反応に最も強烈な影響を与えるのは、ディスプレイ仕様のどのような側面なのだろうか。

制約の多い動作環境


画像はイメージです

 この10年で、スマートフォンやタブレット端末の競争が激化し、より大型で高解像度のディスプレイが投入されてきた。事実、サイズや解像度は差別化を図るうえでの重要な要素となっている。ディスプレイが大きくなり、ピクセル数が増えるほど評価が高まる。トップメーカーは、常に画質の改善を続けている。その傾向はハイエンドモデルに顕著であり、さまざまな手法によって性能強化が実装されている。

 現在、自動車に搭載されているCIDは、画面サイズは3.5〜5インチ、解像度は150ppi未満が主流だ。これらの値は、次世代の乗用車でさらに大きくなると予想される。画面サイズは7〜10インチが主流になり、12インチ以上の画面も登場するだろう。

 一方、解像度については、スマートフォンやタブレット端末では、上質な動画コンテンツやウェブページの小さな文字を鮮明に表示するために、300ppiという超高解像度仕様が一般的になっている。しかし、CIDの場合は、操作者の手の届く距離にマップや大きなアイコンを表示すればよいため、それほどの高解像度は必要ない。

 高級車の仕様に合わせるとしても、150〜250ppi程度で十分だろう。現在、自動車ディスプレイメーカーは、そのような仕様を満たす製品を提供することができ、近い将来に発売されるハイエンドクラスの乗用車に向けた設計が既に進められている。

 そのような製品は画面サイズが大きく、より鮮明な画像を映し出すため、次世代の自動車の外観向上に大きく貢献する。その中でも特に顕著な例が、最先端のハイエンド自動車に装備されているラップラウンド型(270度ビュー)リアカメラの画像のような、車両のイメージセンサーで描画されるシャープできめ細かい画像である。

 しかし、自動車では、このような大型の高解像度ディスプレイがあらゆる条件下で、自動車の耐用年数が終わるまで魅力的な画像、見やすい画像を映し続けられるかというと、それを阻む制約がいくつかある。そのような制約は、大型で高価なディスプレイが持つ、パワフルで感情に訴えかける外観上の価値をなくす恐れがある。

 つまり、美しい色を描画できるディスプレイとしては、供給される画像や動画信号をそのまま映すだけでは不十分ということである。必要なのは、画像信号を最適化する、洗練されたディスプレイ・エンハンスメント・テクノロジーである。

 同テクノロジーは、ハイエンドのスマートフォンやタブレット端末のディスプレイを制御する装置であるディスプレイドライバIC(DDIC)には既に実装されており、次世代の自動車用ディスプレイにも組み込まれると予想されている。

 CIDの画像品質は、下記の3つの重要な外的要因によって低下する可能性がある。

  • 画像内の高輝度光源による過度のグレアや消費電力の増加
  • イメージセンサーによる不正確または不適切なカラーレンダリング
  • 直射日光が当たった際の、ディスプレイ出力の色あせ

 これらは、DDICが補わなければならない最も重要な要因である。

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