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PCIe、USB、Ethernet、HDMI、LVDSなど高速伝送技術の基本を理解するために高速シリアル伝送技術講座(1)(3/5 ページ)

本連載では、さまざまな高速通信規格に使用されている物理層の仕組みや性能、SerDesの機能や特徴とその種類、高速伝送での主要なパラメーター、伝送路を含んだ技術や設計手法などを分かりやすく解説していく。

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 このRS-422はシングルエンド信号で使用されるバス接続形態の1対Nのマルチドロップ接続(図5(1))も可能です。仕様上、表3のようにレシーバーのノード数Nは最大10台まで許容されています。1978年に規定されたこのEIA 422-Aは、1994年にTIA/EIA 422-Bとして更新されています。


図5: 1対N マルチドロップ接続(左)とRS-485 N対Nマルチポイント接続(右)

 RS-422の上位規格として、1998年にTIA/EIA-485(略称RS-485)規格が規定され、ノード数の増加(32個)、完全なバス接続トポロジ N対Nのマルチポイント接続(図5(2))も可能になりました(表3参照)。 これらは各半導体メーカーから仕様に準拠したデバイスが多く供給され、異なったメーカー、異なったデバイス同士でも相互接続できます。

表3:RS-232/422/485比較
  RS-232*1) RS-422*2) RS-485*3)
信号方式 シングルエンド ディファレンシャル ディファレンシャル
ノード数 ドライバ 1 1 32
ノード数 レシーバー 1 10 32
ケーブル長(最大) 10〜20m 1.2Km 1.2Km
スピード(最大) 20Kbps 10Mbps*4) 10Mbps*4)
出力振幅 ±5〜±15V ±2〜±5V ±1.5〜±5V
レシーバースレッシュホールド ±3V ±200mV ±200mV
コモンモード電圧 ―― ±7V −7〜+12V
*1)*2)*3)正式名称:TIA/ETA-232-F TIA/EIA-422-B TIA/EIA-485
*4)10Mpbsを超えるデバイスも個別にあり

 RS-422は最大距離1.2km(115Kbps)と大変長い距離を伝送できますが、最大スピードは10Mbpsと高速ではありませんでした。

 その最大スピードを制限する主な原因は振幅と信号の立ち上がり/立ち下がり時間すなわちエッジレートです。

 図6で振幅が大きい場合と小さい場合の挙動を比較します。


図6:大振幅と小振幅のトグル時間の違い

 青い線は振幅2.8V、赤い線は振幅400mVの場合を例とし記載しています。

 条件として、赤青双方の信号立ち上がり/立ち下がり時間は同じ(同じエッジレート)とします。それでは双方の最大トグル周波数を比較してみましょう。

 A点から青赤双方の信号はHighに遷移します。その際、小振幅の(赤)はすぐにHigh状態Bになりますが、大振幅(青)は7倍の時間をかけてやっとB’へ遷移しその後High状態を保持します。信号がLowに遷移するCとC’の関係も同じです。

 DからEへの遷移では信号(青)はいったんLowになり、またHighに戻りますが、この遷移時間を最大トグル周波数とすると、赤い小振幅(赤)は何回トグルできるでしょうか?

 青が High → Low → High に1回トグルする間に赤は図のように7回トグルしています。すなわち同じエッジレートでも7分の1の小振幅にすることで7倍のスピードになっています。

 このようにエッジレートが同じでも振幅を下げることで、最大トグル周波数を大幅に上げられます。LVDSやCMLではこの小振幅により高速化を実現しています。

バスシステム高速化の要求

 コンピュータシステムの高集積化と高速処理性能が進歩し、1970年代から大型コンピュータなどのアプリケーションで、また1980年代後半から民生機器でも高速のデータ伝送や画像伝送が求められるようになり、バスシステムの高速化とそれに伴う消費電力の上昇を抑える必要がありました。


図7:高帯域信号伝送のアプリケーション

 図7のような各機器の内部パラレルバスや外部ケーブルでデータ通信、画像通信の高速化が必要となりましたが、これらは当時の汎用ロジックやRS-422/485でカバーできる帯域を大幅に越えていました。

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