ヒューズ(3) ―― I^2t-T特性の使い方:中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(9)(1/2 ページ)
今回は、ヒューズエレメントが溶断するエネルギーの時間特性と言える「I^2t-T特性」の使い方を詳しく説明していきます。
ここまで繰り返し説明してきた通り、ヒューズは安全規格の認定部品です。つまり、多くの国で法律、もしくは同等の規制の下に置かれるものですので常に安全規格の最新版を参照し、優先してください。
今回は前回に触れたI2t-T特性の使い方をもう少し詳しく説明したいと思います。
I2t-T特性の使い方
I2tとは
電気系技術者ならI2の項から、最初に電力I2Rやそれから導かれる実効値を思い出すのではないでしょうか?
例えば区間Tsの電流の実効値は1式の通りです。
1式を展開すると2式になります。
2式の右辺は瞬時値の2乗の積分値ですからI2t値の定義そのものです。
左辺は実効値の2乗と時間の積ですから (I2R/R)×Ts=(P×Ts)/R=ジュール/Rとなり、抵抗Rに加えられるエネルギー値になります。つまり、I2t-T特性とはヒューズエレメントが溶断するエネルギーの時間特性と言えます。
I2t-T曲線の入手
この特性は納入仕様書に添付されるべき特性ですが、納入仕様書を取り交わす前の事前検討段階ではカタログ程度しか情報がない場合があります。
このような場合にはカタログに必ず掲載されているI-T特性から作成することになります。そのような作成事例を手順とともに次に説明します。
ここでは1Aヒューズを例にとります。
手順1)図1(a)に示すカタログなどのI-T曲線から時間tと電流Iを読み取ります。
(例:10mS/21.32A)
手順2)I2×tを計算します。
(21.322×0.01=4.55)
手順3)同様に複数のポイントをI-T曲線から読み取ります。
(100mS/6.75A)
(1S/2.7A)
(10S/2.16A)
手順4)各ポイントのI2tを計算します。
(100mS×6.752 =4.56)
(1S×2.72 =7.26)
(10S×2.162 =46.7)
手順5)計算点を時間別にプロットし、図1(b)のI2t-T曲線を作成します。
今回のように手動で読み取りを行うのが面倒、不正確であれば画像から数値データを起こすデジタイザーソフトの類を使っても良いでしょう。このヒューズをヒューズ(A)とします。
なお、ここではI2t-T曲線をI-T曲線から作成しましたが、本来は溶断を保証する曲線と溶断しないことを保証する2種類の曲線を仕様書に記載してもらう必要があります。
図1(b)の曲線で時間0.01〜0.1S(秒)間のような平坦部はヒューズエレメントのみが発熱していることを表しており、曲線の右側の上昇部は時間とともに熱がエレメント→口金→クリップ→空間への放熱、と伝わっていくことを表しています。
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