正確なワイヤレス電流検出を可能にする回路:Design Ideas アナログ機能回路(2/3 ページ)
電流検出回路の多くは、検出抵抗の両端に電圧降下を発生させ、その電圧から電流を割り出しています。ところが、検出抵抗がシステムグランドと大きく異なる電圧になる場合、問題が急激に複雑化します。そこで、そうした問題を抱えないワイヤレスの電流検出回路を紹介します。
オペアンプの振る舞い
検出抵抗での放熱を最小限に抑えるために、電圧降下は通常、10mV〜100mVに制限されます。この電圧降下を測定するには、ゼロドリフトオペアンプなどの、オフセット誤差の小さい入力回路が必要です。図1の回路で使用するオペアンプは、オフセット電圧が10μV未満であるため、精度を失わずに非常に小さい電圧降下でさえ測定できます。図2に、10mΩの検出抵抗の両端の電圧を増幅およびレベルシフトするように構成したオペアンプの回路を示します。
図2:電流検出回路は、検出抵抗の電圧でフロート状態になります。LTC2063チョッパ・オペアンプは、検出電圧を増幅し、それをAD7988 A/Dコンバータの中間電源電圧にバイアスします。LT6656-3は、3Vの高精度リファレンスを供給します。
検出抵抗での±10mVのフルスケール(±1Aの電流に対応する)を、中間電源電圧を中心にして出力のほぼフルスケールの範囲にマッピングするように、利得が選択されます。この増幅された信号は、16ビットSAR ADC(AD7988)に供給されます。低いサンプリングレートでは、このADCは変換と変換の間で自動的にシャットダウンするため、1kサンプル/秒(sps)で10μAという低い平均電流消費量が得られます。電圧リファレンス(LT6656)は、1μA未満の電流を消費して、アンプ、レベルシフト抵抗および、ADCのリファレンス入力をバイアスします。
ワイヤレスモジュールの役割
LTP5901-IPMなどのSmartMeshワイヤレスモジュールは、無線トランシーバー、マイクロプロセッサおよび、ネットワークソフトウェアを内蔵しています。複数のSmartMeshモートがネットワークマネージャの近くでパワーアップした場合、それらのモートは自動的に互いを認識して、メッシュネットワークを形成します。ネットワーク内の全てのモートは、自動的に時間同期されます。つまり各無線は、きわめて短い特定の時間間隔の間だけ給電されます。その結果、各ノードはセンサー情報のソースとして機能するだけでなく、他のノードからマネージャに向けてデータを中継するルーティングノードとして機能します。これによって、信頼性の高い低消費電力のメッシュネットワークが形成されます。このメッシュネットワークでは、ルーティングノードを含む全てのノードが極めて低い消費電力で動作しても、各ノードからマネージャまでの複数の経路を使用できます。
LTP5901-IPMは、ネットワークソフトウェアを実行するARM Cortex-M3マイクロプロセッサコアを内蔵しています。さらにユーザーは、ユーザーアプリケーションに固有のタスクを実行するアプリケーションフレームワークを記述することができます。この例では、LTP5901-IPM内のマイクロプロセッサは、電流測定ADCのSPIポートを読み出し、昇降圧レギュレーターが内蔵するクーロンカウンターのI2Cポートを読み出します。マイクロプロセッサは、チョッパオペアンプをシャットダウンモードにすることもでき、電流消費量を2μAから200nAにさらに削減します。これによって、測定間の極端に長い間隔で、使用モデルの消費電力を削減します。
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