データシートのパラメーターの理解:DC-DCコンバーター活用講座(15) データシートの理解(1)(2/2 ページ)
今回から、DC-DCコンバーターのデータシートの読み取り方を紹介します。今回の記事では、DC-DCコンバーターのデータシート概説とDC特性の測定方法について解説します。
測定方法 - DC特性
前述したように、DC-DCコンバーターの電気的挙動は、データシートに規定されているさまざまなパラメーターによって決まります。てっとり早く、かつ効率的にコンバーターの特性を知り、データシートの有効性を知るには、計測行列が役立つことが多いでしょう。測定マトリクスを用いると、負荷と入力電圧のさまざまな組み合わせが比較できます。
図1は標準的な測定マトリクスの設定です。
有用で信頼性の高い測定値を得るためには、ユーザーは測定に際して基本的な事前対策をとる必要があります。テストの準備の際には、DC-DCコンバーターとの接触抵抗はできる限り小さくしてください。通常、測定端子にはさまざまな接触抵抗があるため、最良の計測装置は図2に示すような”ケルビン”接続です。
ケルビン接続では、電流と電圧の経路がそれぞれ独立してピンに接続されます。マルチメーターを使う場合、メーターソケットの中の4mmコネクターを2つ以上のメーターに接続したくなりがちですが、これは、重大な測定誤差につながりかねません。各メーターは、上図に示すように、それぞれ別にコンバーターのピンに接続しなくてはなりません。
コンバーターに負荷をかける場合、電力抵抗器または電力加減抵抗器が使えますが、電子負荷を使う方が簡単でしょう。しかし、電子負荷だと、電流を適切にレギュレーションするためには最小入力電圧が必要な場合もあるため、出力電圧が4V以下のコンバーターには、多くの場合、電力抵抗器が唯一の選択肢です。
ベンチ電源装置を使えば電力の調節はしやすいですが、入力テストの必要条件の全てをカバーできるような電圧および電流を供給できることを確認してください。VIN, MAXを供給するには複数の電源を組み合わせる必要があるかもしれません。電源制限は、最小入力電圧時でもDC-DCコンバーターに十分な電力が供給されるような値に設定してください。最後に、コンバーターのスイッチをオンにする前に極性を確認してください。というのも、ほとんどのDC-DCコンバーターは逆極性保護がされていないからです。
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※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
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