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A-Dコンバーターの「ノイズ・スペクトル密度」を理解するNSDとは何か(3/5 ページ)

信号アクイジションシステムについては、数十年にわたってより広い帯域幅が求められる状況が続いています。その結果、高速A-Dコンバーター(ADC)で最も重視される性能項目にも緩やかな変化が生じています。それに伴い、ADCの性能は、従来とは異なる方法で測定されるようになってきました。

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NSDの測定/算出方法

 ADCでは、S/N比の理論値は以下の式で求められます。

 ここで、NはADCの分解能です。ADCの量子化ノイズはこの値によって決まります。上記の式は、あくまでも理想的な状態において成り立つものであり、現実のADCがこの性能に達することはありません。現実のS/N比は、設計に依存する非線形性によって理想値以下に制限されます。なお、ADCにフルスケールの信号を入力した場合、全パワーから信号のパワーを差し引くと、残りは総ノイズパワーになります。また、NSDの値を基に、1Hzのビンに対応する全てのノイズを合計すると、1つのノイズパワーの値を得ることができます。

 ナイキストレートのADCについてNSDの値を求めるには、ナイキスト領域全体にノイズがどのように分散されているのかを計算し、フルスケールの信号パワーから差し引きます。そのためには、まずサンプルレートを明確にする必要があります。分解能が12ビットでサンプルレートが200MSPSの理想的なADCに対し、理想的なフルスケールの信号を入力したとします。その場合のS/N比は以下のように求まります。

 ノイズは、100MHzのナイキスト領域(fs/2)全体に広がります。1Hzのビンに対応するノイズは、以下のような対数関数を使って算出できます。

 12ビットの理想的なADCのNSDは、以下のようにして求められます。

 私たちは非理想的な世界で非理想的なADCを扱うことになります。したがって、現実のADCの現実のSNRFSを把握しなければなりません。その値は実際に測定することができますし、データシートにも記載されているはずです。

 ADCに入力するフルスケールの信号パワーは、ADCの入力抵抗と、既知のフルスケール・ピーク電圧またはフルスケールのRMS電圧によって決まります。入力電圧と入力インピーダンスが分かっていれば、フルスケールのパワーをdBm単位で算出することができます(以下参照)

 フルスケールの信号パワーは、dBmを単位として以下のように表されます。

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