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オペアンプの【出力インピーダンス】を正しく理解するオペアンプを完璧にシミュレーションするために(1)(1/4 ページ)

この連載では、全ての主要オペアンプ仕様やそれらがアプリケーション性能に影響する仕組み、テスト回路設計を支える手法など、オペアンプ用の包括的なシミュレーション・テスト・ベンチを紹介します。

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 回路設計は、迅速性が求められるとともに、より高まる性能要件に対応する必要があり、最初から適切な設計を行うことが重要であり、アナログおよびミックスド・シグナル業界の多くのエンジニアが、設計の成功率を上げるためにシミュレーションを活用しています。しかし、回路シミュレーションの精度は使用するモデルによって決まります。重要度の高い設計では、データシートで保証されている仕様にモデルが一致しているかどうかを確認することが大切です。

 この連載では、全ての主要オペアンプ仕様やそれらがアプリケーション性能に影響する仕組み、テスト回路設計を支える手法など、オペアンプ用の包括的なシミュレーション・テスト・ベンチを紹介します。


開ループ出力インピーダンス ―― Zo

 最も重要でありながら見落とされがちなオペアンプ特性の1つが、開ループ小信号AC出力インピーダンスであり、小信号安定性解析を実行する場合や、A-Dコンバーター(ADC)の駆動などで小信号出力負荷トランジェントを処理する場合に特に重要になります。出力インピーダンスの詳細に進む前に、まずはいくつかの用語の定義を見ていきましょう。

 この連載を通して、用語「Zo」はオペアンプの開ループ小信号AC出力インピーダンス、「Zout」はオペアンプの閉ループ小信号AC出力インピーダンスを表します。これら2つの用語を区別することが重要なのですが、その理由は後ほど説明します。残念ながら、アナログ半導体業界にはこれらの用語に関する業界標準が存在しないようで、各メーカーのデータシートにはZo、Zout、Ro、Routといった用語がやや一貫性なく使用されています。

 Zoは、開ループゲイン段(Aol)と出力ピン(Vout)の間に生じるオペアンプの小信号パス上のインピーダンスです。このインピーダンスとAolの周波数ごとの相互作用により、オペアンプ全体のAC応答が形成されます。図1には、オペアンプ小信号モデル内のZoを簡略化して示しています。


図1:オペアンプ小信号モデル(開ループ)の概略図

 このモデルでは、オペアンプの入力抵抗(Rdiff)の両端に差動入力信号(Ve)が発生します。VeはAolによって増幅され、目標とする出力電圧(Vo)が生成されます。この電圧は、Zoを介して出力ピン(Vout)に現れます。

 Zoはオペアンプの出力段の特性です。今より単純な設計のバイポーラアンプが市場を独占していた頃は、ほとんどのデバイスの開ループ出力インピーダンスが抵抗性で、全周波数にわたって一定でした。現在のZoは、容量性領域、誘導性領域、抵抗性領域を含む非常に複雑な特性となる場合があり、周波数の変化に伴い急激なロールオフが発生します。これは、レール・ツー・レール入出力、高い開ループゲイン、高い同相除去率、低ノイズ、低消費電力などの現在の顧客ニーズに、アナログIC設計者がさまざまな手法を用いて対応した結果です。

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