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接点部品(1)―― スイッチの基本と安全規格中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(22)(1/3 ページ)

今回からは接点を有する部品を取り上げます。まずはスイッチ(SW)から簡単に説明するとともにその使い方について説明します。

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 純粋な電子部品と機械部品の間に位置する部品として前回まで説明したFANに引き続いて今回からは接点を有する部品を取り上げます。まずはスイッチから簡単に説明するとともにその使い方について説明します。

スイッチ(SW)とは

 電子機器の電源のON/OFFや信号の切り替えなどが必要な場合は半導体の状態(飽和/遮断)を信号で切り替えるのもよく用いられる方法ですが、完全な遮断状態や扱える電力の制限、残留損失などの制約があります。これに対してスイッチ(以下、SW)は電源や信号のON/OFFなどを機械的な(空間的な)接続の切り替えで行うものです。機械的な切り替えですので適切な材料や処理方法を選べば良好な遮断状態や大電力の扱い、残留損失の減少などが期待できます。駆動電力が不要な点も大きなメリットになります。

部品の種類

スイッチの例
図1:スイッチ(SW)の例

 図1に押し引き動作の代表例としてロッカータイプ(図1(a))とプッシュタイプ(図1(b))の例を挙げますが、その他にも動作のメカニズムとして次のような区分があります。

レバータイプ 丸棒や平板状のレバーを操作してSWの切り替え動作を行います。
スライドタイプ プッシュタイプの押し引きではなく横方法へスライドすることで接点を切り替えます。

 ロッカースイッチの動作原理は、次の図2に示すように支点を中心にして可動接片を動かし回路の切換えを行うもので、構造的にサイズに比して大電流を流せるため小型の電源スイッチヘ多く使用されています。ツマミ部の突起が低いので機器の操作性の面でも平面的で安定性も良いなどのメリットがあります。

 その他にもキーボード用、メカトロニクスの位置検出用など、さまざまな機構を利用したものがあり、必要に応じて広く使われています。

部品の構造

 SWの代表例として図2にロッカータイプの内部の概略構造図を示します。

ロッカースイッチの内部構造概略図
図2:ロッカースイッチの内部構造概略図

 図2(a)はSWの金属フレームをネジで筐体に固定するタイプであり、
図2(b)はSWのフレームを樹脂製としスナップ機構で筐体に固定するタイプですが内部構造はほぼ同じです。この他にも端子構造や内部の機構にメーカー独特のノウハウや工夫が施されているものが数多くあります。

 また、スイッチは扱える回路の数と接点数から表1図3のように分類でき、中でも電子機器への組み込み用電源スイッチとしては単極単投、あるいは2極単投タイプが多く用いられます。

表1:スイッチの構成記号
SPST Single-Pole/Single-Throw 単極単投 極 :回路数
単投:単接点の断続のみ
双投:2接点間の切り替え
SPDT Single-Pole/Double-Throw 単極双投
DPST Double-Pole/Single-Throw 2極単投
DPDT Double-Pole/Double-Throw 2極双投
※日本語の用語はいかにも直訳ですがこの用語は昔から使われ現在では定着しています。
スイッチの接点構成例
図3:スイッチの接点構成例

 表2に例示したロッカータイプのSWの使用材料の一例を挙げます。

 これらの材料、特に接点や機構に関係する材料は安全規格にそれぞれ登録されている場合がありますのでSWの生産工程を移管される場合は材料や加工処理に変更がないかを管理する必要があります。

表2:ロッカータイプスイッチの使用材料例(EIAJ-RCR-5100に筆者加筆)
部品名 主な機能 材料名 表面処理 備考
フレーム 機器への取り付け 亜鉛めっき鋼板 スナップイン形取り付けにした全樹脂形もあります
つまみ
(ボタン)
切り替え動作用 ABS樹脂 着色や印刷表示ができます
ケース 部材支持・絶縁 ポリエステル樹脂  
端子 リード線接続用 黄銅 銀めっき 錫(スズ)メッキ品やファストンタブ形(生地)もあります
共通端子 リード線接続用 黄銅 錫めっき
可動接片 可動部接点 黄銅 銀めっき 形状や材圧で操作感を左右します
固定接点 接点 銀合金 接点材質は用途に合わせて選択します
可動接点 回路切換え 銀合金
保護板 絶縁 PPO樹脂  
駆動棒
(押し棒)
可動接点の駆動 フェノール樹脂  
スプリング
(バネ)
接触圧の保護 ピアノ線 強さで操作感を左右します

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