接点部品(1)―― スイッチの基本と安全規格:中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(22)(3/3 ページ)
今回からは接点を有する部品を取り上げます。まずはスイッチ(SW)から簡単に説明するとともにその使い方について説明します。
安全規格の相互認証制度について
(1)CB認証制度(CB-Scheme)
認証試験機関が発行するIEC規格に基づいた安全性試験証明書(CB証明書)を利用して、各国の安全認証手続きを簡略化することを目的とした国際的制度です。電源スイッチについても、IEC規格とEN規格(欧州統一規格)が整合しているため、欧州各国および中国の認可取得にこの制度が利用できます。
(2)北米の相互認証制度
UL(米国)とCSA(カナダ)ではそれぞれ相互認証制度があり、UL認可に基づきカナダでの販売可能となる「C-UL-US」および、CSA認可に基づき米国での販売可能となる「NRTL/C」があります。
安全規格の用語説明
1.IEC規格における絶縁クラス
IEC規格においてスイッチは、絶縁の種類により次のとおり分類されています。
- (a)Class I 機器用のスイッチ
- アース端子のある電源プラグを使用し、通常の絶縁強度をもつ機器に使用するスイッチ。
- アース端子のある電源プラグを使用し、通常の絶縁強度をもつ機器に使用するスイッチ。
- (b)Class II 機器用のスイッチ
- アース端子がなく二重絶縁または強化絶縁を行っている機器に使用するスイッチ。
2.マイクロギャップ構造
IEC規格における電源スイッチの型式の分類の一つで、接点間隔が3mm以下のスイッチです。マイクロギャップ構造のスイッチには“μ”マークを表示します。また、マイクロギャップ構造のスイッチはIEC規格において用途に制限があります(屋外使用の電動工具、電源プラグのない情報処理機器などには使用できません)
3.電気用品安全法非対象のスイッチ
SWメーカーに電安法の扱いを確認してください。機器組み込み用電源の電源SWでリード端子、タブ端子形などの多くは特定電気用品の非対称品ですが、技術基準は特定電気用品と同様に満足しなければなりません。
次回はSW内部の接点定格に関する規格などを説明します。
執筆者プロフィール
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
⇒連載『中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座』バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- FAN(2) ―― クロスフローファンの原理と特性
今回は、なぜクロスフローファンは羽根車を回すだけで羽根の隙間から吸い込みと吐き出しが行われるのかについて説明をし、この原理に起因する使い方の注意点について説明します。電気系の技術者にはなじみの薄い『流れ』の話が主体になりますがファンの特性を理解する一助と考えてイメージを把握してください。 - FAN(1) ―― ファンの種類と特徴、選び方
FAN(ファン)は、一般の電気回路設計者にはなじみの薄い部品であり、使い方などの注意事項も徹底されていません。しかし、機器の小型化、電力密度の向上などによって電気回路設計者にも無縁の部品と言えなくなってきていますので簡単にファンの使い方について説明します。 - 抵抗器(3) ―― ヒューズ抵抗器/ソリッド形、金属板抵抗器
引き続き、代替えの利かない一部のタイプの抵抗器について説明します。今回は、ヒューズ(ヒューズブル)抵抗器と、ソリッド形抵抗器、金属板抵抗器を紹介します。 - 抵抗器(2) ―― 金属系皮膜、突入電流防止用、ヒューズ付き突防抵抗器
今回は、代替えの利かない一部のタイプの抵抗器(金属系皮膜抵抗器、突入電流防止用抵抗器、ヒューズ付き突防抵抗器)について説明をしていきます。 - 抵抗器(1) ―― 抵抗器の分類
今回から数回にわたり、あまり市場で話題にされないながらも、電子回路に必要な種類の抵抗器について解説していきます。まずは、抵抗器の分類を説明します。 - 抵抗の基本、選択のポイント
今回は、電気/電子回路の中で最も基本的な要素である抵抗について解説する。回路図上での抵抗のシンボルマークはその種類に関係なくすべて同じだが、実際には目的に応じて、抵抗の種類、精度(誤差)、定格電力、形状などの各要素を総合的に検証し、使用する製品を選択しなければならない。ここで誤った判断をすると、アプリケーション、回路によっては思わぬトラブルに遭遇するケースもある。すなわち、抵抗1本にも“適材適所”が存在するということだ。