接点部品(4)――SWのディレーテング:中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(25)(2/3 ページ)
これまでスイッチ(SW)に適用される安全規格や使い方、選択のポイントなどについてその概要を説明してきました。今回は、SWのディレーティングの考え方や失敗事例などについて説明します。
電圧ディレーティング
SWの接点に損傷を与えるアークはSWのON/OFF時に発生しますが、アークを発生させる誘起電圧Vは、主として“V=L×di/dt”に左右されます。したがって回路電圧には左右されにくい現象と言えます。
(L:回路浮遊インダクタンス、di/dt:電流変化率)
AC回路
1次側の電源SWには安全規格認可品を使用しますが、この型式のSWには認可時の認定電圧があり、この電圧で試験した時に所定の断続回数が保証されています。ですからAC250V認可品の場合には公称220V/240Vラインで使用できます。
DC回路
DC回路で発生するDCアークはアーク放電を持続しやすく接点に損傷を与えますので、2次側などのDC回路における電圧ディレーティングはDC定格の50%程度が目安になります。また感圧ゴムなどの抵抗値変化を利用したSWの場合にはアークの発生はありませんので80%程度が目安です。
しかしながらAC定格品をDC回路で使用するには次のようなアーク特性の違いから注意が必要です。
AC電源での使用時にアークが発生してもAC電圧は必ず半周期(1/2f)ごとに0V点を通過するのでこの時点でアークは停止(消弧)します。反面、DC電圧ではこのような自己消弧作用はなくアークが持続しますので接点の損傷は予想以上にひどくなります。どうしても使用しなければならない場合はSWメーカーに保証をもらってください。
(同等電圧条件下では電流定格が1/20になるとも言われています)
また、逆にDC定格のみのSWを1次側のAC回路に使うことは安全規格の制約上できません。
断続回数のディレーティング
SWには機械的寿命と電気的寿命がありますが一般的には機械的寿命≫電気的寿命ですので電気的寿命を主眼に設定します。
故障率が2式で表現できるということは偶発型故障ですので寿命時間経過後にはある一定数が故障していることになります。したがって設計に当たっては残存率を規定する必要があります。
また、SWメーカー指定の値や計算式を採用する場合はその評価試験内容を理解して使用条件に反映させる必要があります。
接点保護用サージキラー回路
前述した接点アークの対策としてCRスナバー型、ダイオード型、ツェナーダイオード型、バリスタ型、などのサージキラー回路を接点間に設けることは誘導負荷から接点を保護する目的で広く用いられています。
それぞれ、負荷の種別や電源別に向き、不向きがありますので、次回以降に掲載する「リレーの章」で併せて説明したと思います。
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