どう熱を制するか ―― 車載デュアルUSBチャージャー考察:電源設計(3/3 ページ)
自動車での搭載が当たり前になりつつあるUSB充電ポート。そのポート数は増加傾向にある。ただ、ポート数の増加は、熱などの設計上の課題を招く。本稿では、そうした課題を克服しつつ、デュアルポートのUSBチャージャーを搭載する方法を考えていく。
パッケージでの工夫
同様に重要な点として、放熱特性を高めたフリップチップパッケージは、最適化されたPCBレイアウトとの組み合わせで、4層2オンス/2オンス銅および、サーマルビアを利用します(図6)。この条件で接合部−周囲間熱抵抗(ΘJ-A)が36℃/Wから18℃/Wに低下します。これは前述の標準的な例より2℃/W低い値です。
低い温度上昇
より高い6Aでの効率(+2%)とより低い熱抵抗(−2℃/W)の組み合わせ効果によって、わずか39.6℃の温度上昇ΔTが実現します。この温度上昇は前述の例より32%低く、40℃という制限以下です。
図7に示すように、39.6℃のΔTを25℃の周囲温度に加えると、ピーク温度はわずか64.6℃になります。
結論
車載充電アプリケーションのUSBポートは、過熱することなく小型スペースに収まる必要があります。デュアルポートの専用充電ソリューションの場合、部品数とソリューションサイズの増大なしに2つのコネクターに対応する必要があるため、問題が悪化します。この記事では標準的なソリューションの欠点について概説し、新しい車載グレード、小型実装面積デュアルポートチャージャーICがサイズと発熱の課題をどのように克服するかを示しました。
筆者プロフィール
Nazzareno(Reno)Rossetti
Nazzareno(Reno)Rossettiは長年の経験を積んだアナログとパワーマネージメントの専門家で、この分野で複数の特許を持ち著書もあります。彼はイタリアのトリノ工科大学で電気工学の博士号を取得しています。
Adrien Gambino
Adrien Gambinoはアリゾナを拠点とするマキシムの車載USBグループのアプリケーションエンジニアです。彼はパワーマネージメントと基板レイアウトに関する広範な経験を持っています。フランスのトゥールーズにあるEI.CESIで電気工学の修士号を取得しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ついにやってきたUSB Power Delivery(USB PD)とは
USB Power Delivery(USB PD)をご存じでしょうか? 100Wまでの給電を全てUSBケーブルで行ってしまうという新しいUSB規格。既にUSB PDの仕組みを搭載したPCも発売されています。ここでは、あらゆる機器の給電スタイルを一新する可能性のあるUSB PDがどのような規格で、どんなことができるかなどを解説していきます。 - USB Type-C昇降圧バッテリーチャージャーとは
リバーシブルなUSB Type-Cケーブル/コネクターの普及がはじまっている。そして、電源ケーブルもUSB Type-Cによる給電に移行しようとしているが、双方向での給電が可能になるなど根本的な電源供給アーキテクチャの変更が必要になる。そうした中で、登場してきたUSB Type-Cでの給電を可能にする「USB Type-C昇降圧バッテリーチャージャー」とはどのようなものか、紹介していこう。 - DC-DCコンバーターの安全性(1) 感電保護
今回からDC-DCコンバーターの安全性に関して説明します。まずは、DC-DCコンバーターの1つの機能である「感電保護」を取り上げます。 - 車載システム向けのUSB Power Deliverについて
USBの電力供給に関する仕様「USB Power Delivery」(USB PD)に対応した機器は今後、増加する見込みで、その利用シーンも拡大します。当然、自動車内でUSB PDを仕様するケースも生じてきます。そこで、車載システムにおけるUSB PD対応について考察していきます。 - DC-DCコンバーターの安全性(1) 感電保護
今回からDC-DCコンバーターの安全性に関して説明します。まずは、DC-DCコンバーターの1つの機能である「感電保護」を取り上げます。 - 急速充電器の標準化を世界レベルで
電気自動車の普及には、充電インフラの普及が欠かせない。CHAdeMO協議会は、2010年3月に、電気自動車用の急速充電器を普及させることを目的として設立された組織である。同事務局代表の姉川 尚史氏に、設立から1年間の成果と、今後の方針について語ってもらった。 (聞き手/本文構成:朴 尚洙)