どのノイズ対策が最も効果的か? よくあるEMS対策を比較する【準備編】:ハイレベルマイコン講座【EMS対策】(1)(1/3 ページ)
すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。今回から2回にわたって、一般的なEMS(電磁耐性)のノイズ対策手法を実際に試し効果を比較し、各ノイズ対策手法を考察する。
産業用アプリケーション、IoT機器、生活家電など多岐にわたる分野で使用されるマイコンだが、必ずついて回るのがノイズの問題だ。ノイズ源がたくさんある産業用アプリケーションはもちろんのこと、IoT機器や生活家電においても人間が発する静電気*)や雷などのノイズで、マイコンは誤動作を起こす可能性がある。
そこで、マイコンの組み込み回路にノイズ対策を講じなければならない。さまざまなノイズ対策がインターネットや技術雑誌、専門書などで紹介され、一般的に知られている。だが、どの対策にどれだけ効果があり、どれが最も効果的なのかということを数字で示す例はほとんどない。これは、ノイズは不定でさまざまな周波数成分(周波数、ピーク電圧など)を持ち、マイコンの使用環境によって有効な対策が異なるためだ。
そういった事情がある中で本記事では、実験を行って、ノイズ対策の効果を数値化して比較する。
あくまでノイズ対策の効果は、マイコンの使用環境やノイズ成分に大きく依存することを忘れてはならないが、対策効果の数値化により、漠然としたノイズ対策の紹介よりもある程度参考になるはずだ。
1回目の今回は、【準備編】としてノイズの基礎知識とノイズの対策方法を復習し、それらの基礎知識をベースにした実験方法を説明する。
2回目は【実験編】で、実験の使用機材など、環境の説明と実際の実験結果を示し、その結果に対してノイズ耐性改善効果の高い対策方法を考察する。
*)参考記事:Q&Aで学ぶマイコン講座(38):ESDとEOSの違いと対策法
ノイズの一般知識
一般的にマイコンに関係するノイズというと、EMC(ElectroMagnetic Compatibility:電磁両立性)、EMI(ElectroMagnetic Interference:電磁妨害)および、EMS(ElectroMagnetic Susceptibility:電磁耐性)の3つがある。それぞれを簡単にまとめると次のようになる(図1)
- EMC
- 電気/電子機器において、ノイズが他の機器やシステムに影響を与えず、また他の機器やシステムからノイズを受けても正常に動作する耐性
- EMI
- 電気/電子機器がノイズを出して、他の機器の誤動作を引き起こすこと
- EMS
- 電気/電子機器が、ノイズの存在下でも正常に動作する耐性
本記事では、このうちEMSのノイズ対策について実験を行い、その結果について考察する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.