DC-DCコンバーターの信頼性(2)環境ストレス要因とMTBF値の使用:DC-DCコンバーター活用講座(31)(2/3 ページ)
前回に引き続き、DC-DCコンバーターの信頼性に関して説明していきます。今回は、「環境ストレス要因」「MTBF値の使用」などについて解説します。
MTBF値の使用
MTBF値は誤解されることが多く、時に不誠実なメーカーがわざと誤解を招くような書き方をすることすらあるために、とんでもない混乱を招くことがあります。MTBFが100万時間というのは、その製品の寿命が
あるという意味ではありません。
MTBFは単純に、実際の故障率の逆数として定義されます。ですから、もし100個のうち1個のDC-DCコンバーターが1万時間、動作した後で故障したとすると、
あるいは、ある程度の数量が使用されている市場での故障率が年1%未満でなくてはならないのであれば、必要な電源のMTBFは以下のようになります。
MTBF値を正しく使えば、現場環境でのメンテナンスの諸経費を正確に決める際に役立つでしょう。しかし、何万時間、何百万時間というMTBF値は、慣れていない人には混乱を招きます。上述の最初の例をみると、コンバーターのMTBF値は100万時間(114年に相当)ですが、1台のコンバーターは、使用開始後わずか13カ月で故障となりました。きっと、もっとなじみ深い例、つまり人間の寿命を考えてみれば、この明らかな「計算ミス」が分かりやすくなるでしょう。25歳の人間の平均『故障率』は0.1%、つまり、25歳の人間1000人のうち1人が死ぬということです。計算すると、人間のMTBFは800年ということになります!MTBF値がそんなに高い(そしてそんなに変わりやすい)理由は、中間の平たんな偶発故障期間中の故障率が本当に低いことです。
長期間にわたってこれを積算していくと、故障率のデルタ(故障率の経時変化率)の小さな変化は、MTBFの計算結果の大きな変化となって現れます。これは、私達が皆800歳まで生きるわけではないことの説明にもなります。25歳というのは、大多数の人間が最も健康なときで、死亡原因の第一位は事故であるという年齢です。もし、私達が年もとらず病気にもならず、唯一の死亡原因が事故であるならば、皆800歳まで生きることができるでしょう。一方、別の年齢、例えば45歳をとってみると、人間のMTBF値はまったく違ったものになります。
なぜなら、私達人間は比較的早い年齢で摩耗し始めるからです。
最後の摩耗故障段階での故障率は指数法則に従うため、信頼性は次式によってMTBFから求めることができます。
もし、時間(T)がMTBFと同じであれば、式はe1となり、37%まで下がります。これは、T=MTBFの時、まだ動いているコンバーターはわずか37%しかない、あるいは、全てのコンバーターがまだ動いている確率はわずか37%しかないということです。
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