DC-DCコンバーターの信頼性(3)信頼性設計とPCBレイアウトの考慮事項:DC-DCコンバーター活用講座(32)(1/3 ページ)
前回に引き続き、DC-DCコンバーターの信頼性に関して説明していきます。今回は、「信頼性設計」と「PCBレイアウトの信頼性に関する考慮事項」について解説します。
信頼性設計
部品の定数やトポロジー、仕様などの長寿命を念頭において適切に選ぶことで、電源に信頼性設計を入れ込むことができます。主要な設計基準は、正しい部品仕様を選ぶこと、十分にテストされた回路トポロジーを使うこと、予想される電気、熱、環境ストレスを設計段階で考慮に入れることです。
さらに、信頼性設計をする上で最も大事なことの1つは、電源を製造時に簡単かつ包括的に試験できるようにすることです。これは、電源が正常な動作範囲で動作することを保証するために、波形や電圧、温度をチェックするための物理的手段を備えておくということです。許容限界に近い値や「正しいように見えない」波形が1つでもあった場合、コンバーターがデータシートの仕様に合致していたとしても、寿命も合致するとは限りません。
前回述べたように、高温は長寿命と信頼性の敵です。各部品にはメーカーによって決められた最大動作温度がありますが、構成のしっかりした信頼性設計プロセスでは、どのような部品にも温度限界ぎりぎりで動かすようなストレスを与えることはありません。次表に、DC-DCコンバーターの標準的な最大動作温度と、推奨部品のディレーティング最大温度を示します。
部品 | 最大動作温度(メーカーのデータシート) | 推奨最大設計温度(ワーストケース) |
---|---|---|
SMD抵抗 | 125℃ | 115℃ |
SMDコンデンサー | 125℃ | 115℃ |
SMDダイオード | 125℃ | 115℃ |
FET(接合温度) | 155℃ | 140℃ |
トランス | 130℃ | 120℃ |
フォトカプラ | 110℃ | 100℃ |
PCB(FR4) | 140℃ | 130℃ |
出典:RECOM |
PCBレイアウトの信頼性に関する考慮事項
もし部品が設計温度を超えたら、PCBに銅を追加して熱を逃がすか、部品を並列に接続して電流を分担するようにします。DC-DCコンバーターのピンも、コンバーターからメインPCBに熱を逃がすのに利用できます。金属ケースのDC-DCコンバーターでは、高温の部品をできるだけケースの近くに配置するか熱伝導銅ブロックを追加すると、温度管理の役に立つでしょう。
ある部品から他の部品への熱伝導は、2つの部品を近接しないように配置することで防ぐことができます。よくある間違いは、省スペース化のために、フォトカプラをトランスに触れそうなほど近くに置くことです。トランスは内部温度が120℃に近づいても難なく耐えることができますが、フォトカプラはせいぜい100℃が限界です。そのため、フォトカプラ内部ではほとんど熱を消費していないにもかかわらず、隣接する高温部品によって熱せられ、コンバーターの最大周囲温度定格を制限する要因になります。
部品がダイオードに隣接していると、同じような状況が起こります。ダイオードは、通常、一定の順方向電圧降下のためにDC-DCコンバーター内部で発生する熱の大半を消費します。受動部品を2つのダイオードの間に置くと(例えば、2個の出力整流ダイオード間に出力コンデンサーを置く)、ダイオードが温度限界内にあっても、両側から熱せられるコンデンサーはそうはいかないでしょう。
チップ抵抗は、DC-DCコンバーター内で使われる最も信頼性の高い部品の1つです。とはいえ、セラミック基板は脆弱なため、PCBレイアウトに関して配慮すべき点がいくつかあります。
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