電力計の構造と主な測定値や演算結果:電力計の基礎知識(2)(1/4 ページ)
電力計の基礎知識を解説する連載2回目。今回は、「電力計の構造」「電力計による主な測定や演算結果」「電力計への結線」「ノイズ対策」「電力計と組み合わせて使う大電流センサーとPCソフト」について説明していく。
本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。
電力計の構造
電力計は歴史が長く、初期の製品は精密機械である指示計器として作られた。その後、高性能なアナログ乗算回路が開発され、電子回路による電力計が登場した。アナログ信号処理によって電力を求める方式から、高速デジタル信号処理によって電力を求める方式に進化し、現在に至っている。最近ではメモリレコーダーやデジタルオシロスコープなどの波形測定器をベースにした、瞬時電力が測定できる電力計も出てきている。
ここでは、歴史の順にさまざまな電力計の構造を示す。
機械式電力計
精密機械として作られた電力計の内部構造は、下図の通りである。電力値はメーターの指針で示されており、目盛りを読み取ることで得られる。
機械式電力計は構造がシンプルであるが、自己消費電力が大きい欠点がある。現在ではあまり見られなくなった電力計である。
アナログ電子回路で構成された電力計
1970年頃に電力計に使える高性能なアナログ乗算回路が開発され、デジタル表示ができる電力計が登場した。その後、パワー半導体の高速化に伴って広帯域のアナログ電力計が数多く登場した。下図にアナログ乗算器を用いた電力計の構造を示す。
アナログ電子回路で構成された電力計は下記の課題を持っていたため、1990年初め頃からデジタル電子回路で構成された電力計に置き換わっていった。
- アナログ回路の占める割合が多く、経時変化や素子のばらつきの影響を受けやすい
- ローパスフィルターの時定数の違いで、電圧、電流間の応答の違いが発生する
- 応答時間が遅い
- 多機能を実現することが難しい
デジタル電子回路で構成された電力計
デジタル半導体の進化によって、A-D変換器で取り込んだ電圧波形と電流波形から、デジタル演算によって電力値が求められるようになった。その後、デジタル化した電力計は高機能化が進み、グラフィック画面を持つパワーアナライザーに進化した。
デジタル電子回路で構成された電力計の構造を下図に示す。
高機能なパワーアナライザーは、電力エネルギー計測に関わる多くの測定値を得ることができるため、開発の現場に広く普及している。
波形測定器ベースの電力計
メモリレコーダーやオシロスコープなどの波形測定器をベースに作られた電力計が、1990年代の後半に登場した。この電力計の登場によって瞬時的な電力が測定できるようになり、放電現象や急負荷時の短い時間の電力消費を観測できるようになった。
波形測定器ベースの電力計の構造を下図に示す。
波形測定器ベースの電力計は、測定対象の電力値とセンサー信号や制御信号を同時に観測できるため、パワーエレクトロニクス装置の制御特性の評価に使うことができる。
ただし、波形測定器ベースの電力計は取り込んだ波形を演算して電力を求めるため、観測時間は波形メモリ長とサンプルレートの制約を受ける。
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