DC-DCコンバーターの信頼性(5)半導体の信頼性とESD:DC-DCコンバーター活用講座(34)(1/3 ページ)
前回に引き続き、DC-DCコンバーターの信頼性に関して説明していきます。今回は、パワー半導体やインダクターの信頼性、静電気放電(ESD)について解説します。
半導体の信頼性
パワー半導体素子は、高電流や高電圧をスイッチして制御するためにDC-DCコンバーター内で使われます。そのため、大きな電気的ストレスおよび熱ストレスにさらされ、結果的に寿命を縮めます。
しかし、半導体の信頼性に最も大きな影響を与えるのは製造品質です。半導体接合の性能は、使用材料内のあるあらゆる不純物、あるいは、薄膜金属層内のあらゆる異物に影響を受けます。半導体で問題となるのは、「ワイヤ・ボンディングがよくない」「チップ上になんらかの塵埃(じんあい)が含まれている」「ケースのピンの気密封止が不完全である」などの標準に達しない組み立てに起因したもので、それらは全て肉眼では見えず、性能にすぐに影響を及ぼしません。そのような欠陥は、後になって初めて初期故障となって現れます。多くの部品にいえることですが、最終製品の総合的な質を上げるためには、質の高いサプライヤーを探して確保することが必要不可欠です。
半導体にかかる電気的ストレスおよび熱ストレスは、設計によって減らすことができます。例えばどんな半導体も過電圧過渡によって損傷を受けやすいものです。シングルエンドスイッチングのトポロジーは、スイッチングFETの入力電圧の2倍の電圧を発生させますが、プッシュプルトポロジーでは、FETは入力電圧を切り替えるだけです。もし電圧サージが入力側に発生した場合、シングルエンドトポロジーは同等のプッシュプルトポロジーと比べて、電圧定格を超えて故障する可能性がはるかに高くなります。
どのようなパワーコンバーターであっても、内部で最も発熱する半導体部品は、通常はスイッチングFETと整流ダイオードです。この2つは、どちらも入出力間の主要な高電流パス内にあるためです。受動部品の過熱は比較的均等な傾向がありますが、半導体の過熱の仕方は一様ではありません。
熱ストレスは、まず局部的に弱いところ、またはデバイス の境界に集中し、すぐにさらなる損傷を引き起こし、最終的には熱暴走に至ります。一般に、大型の半導体パッケージでさえ、内部には非常に小さいチップしか搭載していません。そのため、熱慣性がわずかしかなく、どのような過渡過熱現象の吸収にもあまり役立ちません。
FETあるいはダイオード用のヒートシンクは、半導体デバイス内部で発生した平均的な熱を発散させるのに役立つでしょう。しかし、ジャンクション-ケース間の熱抵抗によって突発的に発生するホットスポットや、その他の不規則な熱現象に対しては役に立ちません。信頼性設計において一番安全な方法は、どんな過渡過熱現象が起きても大丈夫なように、半導体の電流定格の余裕を多めに取ることです。
下表にいくつかの推奨ディレーティング率を示します。
部品 | パラメーター | ディレーティング率 |
---|---|---|
単体半導体(ダイオード、FETなど) | 定格ピーク電力 | 70% max. |
定格ピーク電流 | 50% max. | |
定格平均電流 | 50% max. | |
リニアレギュレーター | 定格電流 | 50% max. |
スイッチングレギュレーター | 定格電流 | 80% max. |
信号ダイオード | 定格電流 | 85% max. |
出典:RECOM |
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