スペクトラムアナライザーの概要と種類:スペクトラムアナライザーの基礎知識(1)(2/5 ページ)
今回は、無線通信機などの高周波を取り扱う機器の開発、生産、保守の現場では必須の測定器、スペクトラムアナライザーについて解説を行う。
スペクトラムアナライザーの種類
選択レベル計
選択レベル計(Selective Level Meter)は、図5に示すようにラジオと同じヘテロダイン回路によって構成されている。検波された信号の大きさはメーターなどによって表示される。
選択レベル計は主にAM/FM放送、AM/FM無線、アナログ電話回線、CATV回線の試験に使われたため、以前は多くの通信用測定器メーカーから製品が販売されていた。図6にはアンリツから販売されていた選択レベル計(通称:セレモ)を示す。
現在普及している広い変調帯域幅を必要とするデジタル通信では、選択レベル計は使えない。現在は限られた通信の保守点検用途にしか使われていないため、販売する測定器メーカーは限られている。
アナログ方式の掃引型スペクトラムアナライザー
最初に登場したスペクトラムアナライザーであり、全てアナログ回路によって構成されている。現在販売されているデジタル方式のスペクトラムアナライザーはアナログ回路の一部をA/D変換器とデジタル信号処理回路によって置き換えたものであるため、スペクトラムアナライザーの原理を学ぶ際はアナログ方式で説明されることが多い。回路構成は選択レベル計とよく似ているが、周波数を掃引できる局部発振回路が搭載されている。
アナログ方式のスペクトラムアナライザーの性能は使われる部品に依存するためデジタル方式より価格が高くなること、また検波回路はシンプルなものであり最近のデジタル通信方式への対応が難しいことから、現在はほとんど見られなくなった。図8にはアンリツが最初に作ったアナログ方式の掃引型スペクトラムアナライザーを示す。この製品は歴史的な価値があるため、国立科学博物館では産業技術資料として登録されている。
デジタル方式の掃引型スペクトラムアナライザー
現在は幅広い解析周波数帯域を必要とするデジタル通信が増えてきているため、従来のアナログ方式の掃引型スペクトラムアナライザーでは変調信号の解析が行えなくなった。そのため解析帯域幅を広げて、アナログ回路で行っていた信号処理をA/D変換器とデジタル信号処理回路に置き換えたデジタル方式の掃引型スペクトラムアナライザーが登場した。さまざまなデジタル変調信号解析などが行えるようになったため、従来のスペクトラムアナライザーと区別するためにシグナルアナライザーと呼ぶようになった。
図10にはアンリツの代表的なデジタル方式の掃引型スペクトラムアナライザーの製品を示す。デジタル方式にすることにより多くの機能を持つことができるようになったため、操作画面には多くの設定メニューが表示され、解析結果はさまざまな表現で確認できるようになった。
高性能なデジタル信号処理回路を搭載したデジタル方式の掃引型スペクトラムアナライザーは、アナログ方式に比べて高速に信号処理ができる特長を持っている。
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