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ブリッジレス方式トーテムポール力率補正コントローラーで、高いAC-DC電力変換効率を達成する手法SiCやGaNにも応用可能(1/2 ページ)

AC-DC変換を行う変換器は、エネルギー送電網に設置されている最も一般的な負荷の一つになっています。本稿では、ブリッジレス方式トーテムポール力率補正コントローラーで、高いAC-DC電力変換効率を達成する手法について解説します。

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 送電網から供給される電気エネルギーはACですが、われわれが使用するほとんどのデバイスはDCを必要としています。つまり、AC-DC変換を行う変換器が、エネルギー送電網に設置されている最も一般的な負荷の一つになっているのです。環境保護と運用経費抑制のためにエネルギー効率が重視されるようになっている今、これらの電源回路の効率的な運用がますます重要になっています。

 「効率」は、入力電力と負荷に供給される電力の比率を示す指標として、よく知られている通りです。ただし、入力力率も大きな影響を及ぼします。力率(PF)は、有効な(真の)電力と、電源回路を含むAC電源デバイスによって消費される合計(見かけの)電力(kVA)との比率を表します。PFは、消費された電力がどれだけ効率よく有効な作業出力に変換されるかを評価します。

 負荷が純粋に抵抗性である場合、PFは1になりますが、負荷内の無効要素によってPFが減少し、見かけの電力が有効電力よりも大きくなり、結果として効率が低下します。

 PFが1未満になるのは電圧と電流の位相がズレているためであり、誘導性負荷では一般的です。また、スイッチングモード電源(SMPS)やその他の種類の不連続電子負荷でよく見られるように、高調波成分や歪み電流波形が原因である場合もあります。

PFの補正

 PF補正を行わないSMPSの多くは、補正後のSMPSよりも大電流を消費するため、70W以上の電力レベルでは、PFを1に近い値に補正する回路を組み込むことが法律上、義務付けられています。アクティブPF補正(PFC)の最も一般的なアプローチは、ブーストコンバーターを使用して、整流された主電源を高いDCレベルに変換し、次にパルス幅変調(PWM)を使用してDCレベルを調整する方法です。

 この技法はうまく機能し、実装も容易ですが、いくつかの課題があります。厳格な「80PLUS TITANIUM」などの最新の効率規格では、広い電力範囲にわたる高効率と、50%の負荷率で最大96%のピーク電気変換効率が要求されます。PFCステージの後のDC-DCコンバーターは通常2%の損失を生じるので、ライン整流とPFCステージ自体では2%の損失しかありませんが、これをブリッジ整流器のダイオードで実現するのは困難です。


図1:従来式回路(左)とブリッジレストーテムポールPFC回路(右)[クリックで拡大] 出所:onsemi

 ただし、ブーストダイオード(D5)を同期整流器に置き換えると、効率が向上します。さらに、必要なライン整流ダイオードは2個だけであり、これらを同期整流器(Q3、Q4)にすることで、さらなる効率の向上を実現できます。この技法はトーテムポールPFC(TPPFC)として知られており、理想インダクターと完璧なスイッチを使用すると、効率を100%に近づけることが可能になります。最新のMOSFETは優れた性能を備えていますが、並列に配置した場合でも、理想スイッチのレベルには達しません。従って、ワイドバンドギャップ半導体スイッチは、トーテムポールPFCトポロジーと相性が良いでしょう。

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