資産追跡に適したワイヤレス技術とは?:無線技術を活用したリアルタイム位置情報システム(後編)(1/2 ページ)
今回の記事では、資産追跡に最適なワイヤレス技術を、複数の技術を比較しながら探っていきます。
前編の記事で紹介した通り、資産追跡はさまざまなメリットをもたらすソリューションです。今回の記事では、資産追跡に最適なワイヤレス技術を、複数の技術を比較しながら探っていきます。その前に、まずは資産追跡において重要とされる特性を挙げておきます。
資産追跡におけるワイヤレス技術の最も重要な特性
資産追跡でワイヤレス技術を使う際は、以下の特性を考慮する必要があります。
- 拡張性
- 位置情報の分解能(精度およびレイテンシ)
- 消費電力(追跡対象が資産タグの場合)
- コスト(デバイス・導入・保守などのコスト)
各特性の許容レベルは、ユースケースによって大きく変わります。例えば、ある部屋に資産が存在しているか分かるだけで十分な場合もあれば、メートル単位、ときにセンチメートル単位の精度が求められる場合もあります。
また、求められる精度によって、資産追跡システムの導入と実装にかかるコストは変わってきます。一般的に、システムに求められる精度が高いほどコストも高くなります。
ワイヤレス技術を比較する
では、これらの特性を考慮して、無線技術を比較してみます。今回比較する無線技術は次の4つです。
- Bluetooth LE
- UWB(超広帯域無線)
- LPWAN(LoRa、LTE-M、NB-IoT)
- RFID(アクティブ)
なお、言及すべき重要なソリューションに、コンピュータビジョン(Computer Vision)が挙げられます。これも物体や人の追跡に使われるソリューションで、代替技術として支持を集めています。コンピュータビジョンは、コンピュータがデジタル画像内の人や物を認識できるようにするアルゴリズムや技術を指します。コンピュータビジョンの進歩により、最近ではカメラで資産をリアルタイムに認識して追跡できるようになりました。一方、コンピュータビジョンの欠点は、特にリアルタイムで実行する場合に、動画や画像およびコンテンツ分析のために非常に大きな帯域幅を使うことです。
それでは、これまで挙げてきた特性の観点から、これら一般的な技術を比較してみましょう。
Bluetooth LE(Low Energy)
Bluetooth LEは、資産追跡の場面で最も一般的に使われているワイヤレス技術の一つです。資産追跡におけるBluetooth LEの最も大きなメリットとして、低消費電力、低コスト、大規模な展開が可能という3つが挙げられます。
一方、Bluetooth LEのデメリットとして、同じ周波数スペクトルの信号と干渉するおそれがあることが挙げられます。また、RSSI(受信信号強度)に依存するシステムの場合、非常に高い精度にはならないことがあります。
Bluetoothビーコンは、資産追跡システムで一般的に使用されています。施設内の特定箇所に設置されたロケータデバイスが、資産に取り付けられたタグから送信される信号を受信します。このタグが、Bluetoothビーコンです。パケットのRSSIがビーコンから範囲内のロケータに送られ、バックエンドサーバに伝えられます。バックエンドサーバは全ロケータデバイスを認識しており、RSSI情報を使って施設内のBluetoothビーコン(資産に取り付けられたタグ)のおおよその位置を特定します。
2019年に、Bluetooth仕様 5.1で方向検知という画期的な新機能が導入されました。この新機能により、Bluetooth LEデバイスは放射角度(AoD)や受信角度(AoA)の情報を利用して、Bluetoothデバイスの位置情報を大幅に高い精度で特定できるようになりました。
資産追跡の場合は、AoAがより適切な手法となります。この場合、施設に複数のロケータデバイス(受信デバイス)を設置する必要があります。各ロケータ内には複数のアンテナが存在します。このアンテナ群をもとに、単一のアンテナを有するBluetoothビーコン(資産タグ)から送信された信号の受信角度を算出します。その後、RSSIとAoAの情報をもとに、ビーコンのより正確な位置を特定します。そして、資産の位置は通常、ウェブインタフェース(バックエンドサーバ)を介して資産追跡システムのユーザーに報告されます。
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