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LE Audio対応補聴器の活用例と要件LE Audio概説―補聴器の活用例【前編】(2/4 ページ)

本稿では、LE Audioの補聴器対応の活用例や同技術がそのための要件をどのように満たし、消費者向けアプリケーションへと発展していったのか説明します。

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テレビの低遅延音声

 補聴器では、Bluetoothのオーディオストリームに加えて周囲の音も拾い続けることが考えられるため、独特の派生要件が生じます。多くの補聴器は耳栓のように耳に密着して音を遮断するわけではなく、装着者は常に周囲の音と補聴器で拡大された音の両方を聴くことになります。補聴器の処理による遅延は最小限(数ミリ秒以下)に抑えられるため通常は特に問題にはなりませんが、図2のように、家族がテレビのスピーカーを通して音を聴いているそばで装着者にスピーカーの音とBluetooth通信のオーディオストリームの音の両方が聞こえる状況では問題が生じます。


図2:Bluetooth LE Audioのストリーミング+環境音[クリックで拡大]

 2つの音声信号間の遅延が30〜40ミリ秒を大きく超えると、エコーが出始め、音が分かりにくくなります。補聴器が果たすべき役割とは逆の現象です。30〜40ミリ秒は、既存のほとんどのA2DPソリューションでは対応できない厳しい遅延条件になるため、新しい低レイテンシの要件が導入されることになりました。

 補聴器の帯域幅はモノラルの会話で7kHz、ステレオの音楽で11kHzと比較的狭いものの、Bluetoothの既存のコーデックでは先述の低レイテンシの要件を達成しながらこの帯域幅に対応することは簡単ではありません。こうして、コーデックの性能要件を洗い出すための調査が別に始まり、LC3というコーデックの導入へとつながっていきました。

ユーザーの追加


図3:複数のリスナーの追加[クリックで拡大]

 難聴には遺伝的な要素があり、加齢とも関係するため、1世帯の中で複数の人が補聴器を使用していることは珍しくありません。従って、新しいトポロジーでも、複数の人が補聴器を装着している状況に対応する必要がありました。図3は補聴器装着者が2人の場合の活用例を示しています。この場合、2人ともレイテンシが同じである必要があります。

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