デジタルマルチメーターが届いたら最初にすること:初めて使うデジタルマルチメーター(1)(5/5 ページ)
長い測定器の歴史の中で、デジタル化が最初にされたのは周波数カウンターとデジタル電圧計である。デジタル電圧計は、電圧以外の測定もできるデジタルマルチメーターと進化して広く使われている。今回はキーサイト・テクノロジーの協力を得て、最新のベンチトップ型の6.5桁デジタルマルチメーターの基礎的な使い方について解説する。
デジタルマルチメーターの選定
デジタルマルチメーターはさまざまな分野の研究者、技術者、技能者が利用する基本的な測定器であるため、多くの測定器メーカーから販売されている。
デジタルマルチメーターは下図に示すように用途に応じて製品が作られているため、さまざまな種類がある。まずはどの種類の製品を使うかを決める。
利用者にとって最適なデジタルマルチメーターを選択するには、選んだ種類のデジタルマルチメーターの基本仕様の比較を行う必要がある。今回の解説記事で使うデジタルマルチメーター34461Aの基本仕様は下表の通りとなっている。
表示桁数 | 6.5桁 |
---|---|
基本直流測定確度 | 0.0035%(読み値誤差) |
最高測定速度 | 1000回/秒(4.5桁時) |
メモリ | 1万個の読み値 |
測定機能 | DC電圧、AC電圧、DC電流、AC電流 2線および4線式抵抗測定、周波数、周期 導通、ダイオード 、温度、キャパシタンス |
リア入力端子 | あり |
インタフェース | USB、LAN/LXI Core、GPIB(オプション) |
多くの場合はこれだけの仕様項目を比較するだけなので、デジタルマルチメーターの機種選定作業は効率的に行え、目的にあった最適なデジタルマルチメーター本体を選ぶことができる。
本体以外に注目しなければならないのは、アクセサリーである。マルチメーターには用途に応じたさまざまなアクセサリーがあり、本体とともに選ぶ必要がある。
【ミニ解説】測定カテゴリーとは
デジタルマルチメーターを使って商用交流電源の電圧を測定する場合があるので、安全確保のため規格(EN61010 シリーズ、JIS C 1010 シリーズ)によって使える範囲が規定されている。利用者はデジタルマルチメーター本体に表示されているカテゴリー番号の範囲で使用することが求められている。
一般に電池で駆動するハンドヘルド型のデジタルマルチメーターは、電気工事に使われるため、メーカーテゴリー番号は大きくなっている。
ハンドヘルド型の安価なマルチメーターにはカテゴリー番号が小さなものがある。そのため、安全に利用できる範囲は狭くなっているものがあるので、注意が必要である。
転載元「TechEyesOnline」紹介
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