「環境に優しい」PCBを 業界で取り組み進む:Appleも再生スズ活用を表明(2/2 ページ)
製造に大量のエネルギーを消費するプリント基板(PCB)。製造時の環境負荷を抑えるための取り組みが、半導体/エレクトロニクス業界全体で進められている。
フレキシブルPCBにおけるポリ乳酸
従来のフレキシブルPCBは、プラスチックであるポリイミドをベースとしているが、代替材料の導入が待たれている。現在、検証段階にあるポリ乳酸は、有機産業廃棄物から製造でき、生分解性も備えた持続可能な素材として注目されている。
ポリ乳酸は140℃までの耐熱性を有していて、これはポリイミドやFR4よりも低い値ではある。だが、銀インク焼結などの製造プロセスには適合する。フィンランドVTTなど、さまざまな研究機関や企業が、フレキシブルPCBにおけるポリ乳酸の可能性を検証している。
スズのリサイクル
現在、世界中で約18万トンの一次スズが電子機器に使用されているといわれる。これは主に中国、インドネシア、ミャンマーの鉱山で産出されていて、深刻な環境汚染を引き起こしている。そこで、廃棄金属と金属酸化物を製錬して生成される“再生スズ(リサイクルされたスズ)”が注目されている。再生スズは、X線回折によって一次スズと同等の品質であることが確認されている。
だが、現在世界中でリサイクルされているスズはわずか30%にすぎないため、金属リサイクルを促進するための規制強化がますます求められている。その一例が、ドイツの国家循環経済戦略(NKWS)で、2045年までに1人当たりの原材料消費量を半減させることを目指している。
Mayerhofer Electronikは、電子機器製造工程のはんだ付けに再生スズを使用するという実証を行った。なお、Appleは、2035年までに全製品に再生スズを用いる計画を発表している。
銅の廃棄物を最小限に抑える再生システム
PCBにおいて銅が無駄に使用されていることは広く知られている。その仕組みは、まず基板に平らな銅板を貼り付け、その後穴を開ける。余分な銅をエッチングして回路パターンを形成するには、必然的に塩化鉄(III)や塩化銅(II)などの化学エッチング液を大量に使う。その結果、基板に最初に塗布された銅の約70%が除去されることがよくある。
銅を必要な箇所にのみ塗布するAdditive Manufacturing(アディティブ・マニュファクチャリング)は、製造工程の切り替えが不要なソリューションだ。エッチング液再生システムは、積層板からエッチングされた銅とエッチング液の両方を回収する。リサイクルされた銅は、電子機器メーカーにとって新たな収益源となるだろう。
【翻訳、編集:EDN Japan】
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![再生スズの利用が増えるかどうかは、強力な規制の推進にかかっている[クリックで拡大] 出所:Mayerhofer Electronik](https://image.itmedia.co.jp/edn/articles/2505/02/mm250501_pcb02.jpg)