ファミコンにも採用された「MOS 6502」、その末路をたどる:マイクロプロセッサ懐古録(6)(4/4 ページ)
今回は、メーカーそのものが無くなり「一発屋」となってしまった「MOS 6502」を紹介したい。任天堂の「ファミコン」にも採用された製品だが、その末路は「会社がなくなったことによる断絶」だった。
リコーがセカンドソースに
Rockwellはそれ以上の開発は行わなかったが、WDCの方はW65C02に続き、6502を16bit化した「W65C186」を開発した。こちらは命令セットも拡張され、レジスタサイズも大型化。さらに24bitアドレスのサポートなどが行われている。ちなみにW65C816はemulation modeとnative modeの2つのモードが搭載され、ブート時には6502互換のemulation modeで起動。この状態だと6502のソフトウェアがそのまま動作する。ここでモードをnative modeとすると、16bit拡張のモードで動作するという、Intelの286とか386のような仕組みであった。
このW65C186はApple IIGSやAtari 600XL/800XLに採用されたほか、VLSI TechnologiesやGTEなど複数のメーカーとセカンドソース契約を結んでいる。実はリコーもそうで、リコーがスーパーファミコン向けに提供したリコー 5A22はこのW65C186のライセンスを受けて製造したものとなっている。WDCはリコー向け(というかスーパーファミコン向け)に加え、台湾のメーカーにもライセンスを供与しており、ゲーム機向けとして恐らく10億個近く出荷されているだろうとMensch氏が語っている。6502はファミコンとして正式に出荷された台数だけで6200万台近くであり、それ以外のもの(や、ファミコンの非合法のパチモノなど)を入れるとこちらも1億個では効かないと思うが、これだけ出荷したにもかかわらず、その次が続かなかった。WDCはまだ存在するが、もう新しいアーキテクチャは生み出していない。1980年初頭、英AcornがAcorn System/Acorn Atomの後継機種を企画するにあたり、WDCを訪れて新しいCPUの開発を依頼しようとしたのだが、実質的にWDCはMensch氏の個人会社であり、新世代のCPUを開発する能力がないと判断。結局Acornは自社でのRISC CPUの開発を決断する。これがARM-1/2であり、現在のArm CPUにつながる訳だ。一方6502はこのW65C186を最後に、そのアーキテクチャは断絶してしまった。
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