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AI分野で欠かせないGPUとは? CPUとの違いや活用例まで解説改めて知りたいGPUの基本(1/2 ページ)

今回はGPUの構造と歴史、CPUとの違いに関して説明します。

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株式会社リョーサン

本連載はリョーサンが運営するマガジンサイト「リョーサンテクラボ」に掲載された記事を転載しています。本記事は2025年8月27日に公開されたものです。

 近年、ChatGPTをはじめとする生成AI技術が急速に発展し、注目を集めています。AIという言葉は以前より頻繁に耳にするようになりましたが、「実際にAIとは何をする技術なのか?」、「AIにはGPUが必要と言われているが、本当に必要なのか?」と疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

 今回はGPUについて説明します。

1. GPUとは?

 GPUはGraphics Processing Unit(グラフィック処理装置)の略で、リアルタイムに画像処理をするためのICです。現在はGPGPU(General-Purpose computing on GPU)によりAIなどでも活用されています。

 本章では、そんなGPUの構造と歴史、CPUとの違いに関して説明します。

(1)GPUの構造と歴史

 当初のGPUは専用の描画処理HW(頂点処理、ラスタ化処理※1、フラグメント処理※2など)をパイプライン化したグラフィックスパイプラインで構成されていましたが、2Dグラフィックスから3Dグラフィックスへの移行など、GPUで処理する演算内容の変化に伴い内部構造も変化していきました。

※1:ベクターデータ(線や曲線による画像データ)からラスタデータ(画素/ピクセルの集合)に変換する処理
※2:ラスタ化されたピクセル(フラグメント)の色を計算する処理

 現在では、各描画処理をプログラム化し、各処理を実行するための演算ユニットを多数設けることで、各描画処理を同時に大量実行できるような構成になっています。描画という大量のデータを扱う関係上、高速のビデオメモリ(VRAM)と接続されており、演算ユニットとVRAM間で大量のデータを高速にやり取りできるということもGPUの特徴と言えます。

 ゲームにおける描画性能などは、これらの演算ユニット数、VRAM容量/バス帯域、処理速度(クロック周波数)と演算ユニット自体の処理性能などに支えられており、今も飛躍的に進化しています。

 GPUの構造変化に伴い、GPU内の演算ユニットにCPUで行っていた汎用的な演算処理を行わせるGPGPUも注目されてきました。多量の演算ユニットによる高速並列処理とVRAMによる大量データの取り扱いがGPGPUの強みと言えます。

 GPUベンダーのNVIDIAはGPGPUをより使いやすくするためにC言語ライクにGPGPU処理を記述可能なCUDAを開発し、ディープラーニングや仮想通貨マイニングなどに活用されました。現在ではAIの発展を支える技術となっています(GPGPUの詳細は「4.並列処理による高速化とは?」で説明します)。

(2)CPUとGPUの違い

 コンピュータの処理を担う主要な部品として、真っ先に思いつくのはCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)です。CPUは一般的な計算処理を担い、パソコンやスマートフォンなどあらゆるデバイスに搭載されています。ではCPUとGPUではどのように違うのでしょうか?それぞれの特徴を比較してみましょう。


図1. CPUとGPUの比較図

 このように、CPUとGPUは異なる役割を持ち、得意な処理も異なります。これらの違いにより、GPUはAIの推論処理に適していると言われています。次章では、その理由を詳しく見ていきましょう。

 ※全てのAI推論がGPUを必要とするわけではありません。タスクの規模や処理負荷により、CPUでも十分に対応できるケースがあります。この点については「5.まとめ」で触れます。

2. GPUのユースケース

 GPUはゲームなどで良く見られる2D/3D描画処理、物理演算、レイトレーシングなどで使用されますが、ここではAI推論でGPUが有効に機能する代表的なユースケースを紹介します。

(1)画像認識

 画像認識は、大量のピクセルデータを処理し、そこから特徴を抽出して分類や検出を行うタスクです。GPUの並列処理能力を活かすことで、リアルタイムでの高精度な推論が可能になります。

  ユースケース
  ・自動運転における物体認識(例:車両や歩行者の検出)
  ・工場の製品検査
  ・医療画像診断(例:CTスキャンやMRIの解析)

(2)音声認識

 音声認識は、音声データをテキスト化する技術であり、これも大量のデータを並列に処理する必要があります。GPUを用いることで、高速かつ高精度な音声認識が実現できます。

  ユースケース
  ・音声アシスタント(例:スマートスピーカーのリアルタイム音声認識)
  ・工場の製品検査
  ・会話のリアルタイム文字起こし

(3)自然言語処理

 自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)は、人間の言葉を理解・生成するAI技術です。GPUは、このようなモデルの推論を高速に実行するための重要な役割を担っています。

  ユースケース
  ・チャットボット(例:カスタマーサポートの自動応答)
  ・翻訳システム(例:リアルタイム翻訳アプリ)

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