3種のDC/DCコンバーターのまとめ(3)電流不連続モードにおける各波形の振る舞い:たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(24)(2/3 ページ)
前回、チョーク電流が連続でも平滑キャパシターへのエネルギー供給期間が短くなる軽負荷時のMode IIについて説明し、波形が表す意味を考えれば昇圧型と反転型は同じ考え方の式で表せることについて触れました。今回はその続きとして波形の意味を考えながら電流不連続モードにおける各波形の振る舞いについて説明していきます。
不連続モードの主要特性比較
表1に不連続モード時の主要コンバーター3種の主要特性の式を記します。例題として反転型の出力電圧の式を説明しますがその他のコンバーターについては次の説明と式を参考に各自で項目を型式に応じて置き換えて計算しててみてください。
1)反転型コンバーターの不連続モード時の出力特性
図1の動作図のoff期間に着目して不連続モードでの出力電圧Voを次のように計算します。
ここではチョークの磁気エネルギー放出期間をtoff’とします。このtoff’は前記説明のΔtであり、従来のコンバーターの遮断期間toffより短くなっています(toff’<toff)。
計算の流れ
toff'期間中にチョークLから負荷に供給される電流の面積、すなわち電荷Qは図1の水色領域の面積であり、この電荷Qを1周期にわたって平均した値が出力電流Ioです。またこのIoにVoを掛けたものが出力電力Poに等しいとして最終的に1式〜3式を求めます。
①最初に水色の面積として電荷Qを求めます。
②出力電流Ioを求めます。
この電荷QはQ=i×tからIoを使って表せます。供給される電荷Q(=三角形の水色の面積)が出力電流による電荷(=Io×ts)と等しくなるのでIoを次のように計算します。
③出力電流Ioを基に以下のようにVoを求める式を作ります。
この式をVoについて書き換えます。
④1式のtoff’を求めます。
磁束に関する電圧時間積の関係(Vcc・ton=Vo・toff’)からtoff’は
です。
⑤1式にLの基本式と、このtoff’の値を代入すると2式になります。
ここで、
とまとめて2式を整理すると3式になります。
【表1各項の式の補足説明】
①項 臨界電流Io2は各型式のコンバーターを個別に説明した時には実用的な電圧記号(Vcc、Vo)を用いて説明しましたが時比率δで表記すると、このように統一した表記ができます。
③項 降圧型DC/DCコンバーターの本連載の該当項では式の簡素化のためβをここで取り上げた形式の逆数としていましたが他の型式のコンバーターと共通化するために上記の形式に修正しました。
⑤項 次項で説明するように、降圧型DC/DCコンバーターではδ+δ2=δ3とまとめることで他のコンバーターの式の形に似せることができます。δ3=δ+δ2=δ×(Vcc/Vo)です。
⑦項の各式から定電圧制御に必要なtonは√(Io)に比例することが分かります。周辺定数と必要なIo(MIN)から制御ICに必要なton(MIN)を判断できます。このton(MIN)は制御ICが安定して動作できる最小オン時間です。
注)定電圧制御時のリップル含有率ηは表中の⑦項の式で必要なton(=δ)を求めた後、④項のtoff’(=δ2)を求めて⑤のηの式に代入して求めます。
③項の各式からβVが一定なら出力電圧は一定であることが分かります。
⑥項の式は3項の式をβについて解くことで得られます。
⑥項のβVの式から定電圧制御時のVcc、Voの関係が分かります。
⑦項の式は⑥項のβVを②項と連立して解くことで得られます。各自でご確認ください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

