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スマホが変えた組み込みのエコシステム 波にのまれて消えた「MIPS」マイクロプロセッサ懐古録(13)(2/3 ページ)

2000年代前半、組み込みプロセッサコア市場で大きなシェアを獲得していたMIPS。だがスマートフォンの台頭とともに変化し始めたエコシステムにうまく対応できず、その勢いは下火になっていった。

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独立以降、組み込みに舵を切ったMIPS

 MIPSアーキテクチャの誕生は以前ITmedia Newsで説明しているので繰り返さない。1985年にR2000、1988年にR3000、1991年にはR4000をそれぞれ開発して広範に利用されるが、この当時は主にワークステーション(一部サーバ)向けがメインで、Embedded向けとは言いにくかった。例外はあって、例えば旧MIPSの従業員が1991年に立ち上げたQuantum Effect Designという会社はMIPSからR4000のIPのライセンスを受け、これをベースにR4650というSTB(Set-Top Box)向けのSoCを1994年に発表しているし、その基になった1993年のR4600はネットワークルーターやアーケードゲーム向けなどにも採用されていた。

 ただこうしたケースはむしろ例外に近かった。そしてMIPS自身は1992年にSGIに買収され、より高性能なプロセッサ開発の方向に舵を切る。ところがSGI自身の方針転換(将来製品をMIPSベースのプロセッサから、IntelのItaniumベースに切り替える)を受けて1999年にSGIからスピンアウト。2000年にはMIPS Technologiesとして独立企業になった(IPO自体は1999年に行われたが、2000年にSGIがMIPSの株を全て手放した事で名実ともに独立した)。

 同社がEmbeddedに舵を切るのはここからである。以前「Appleの通告は「MIPSの終わり」の始まりか」でも説明したが、R3000は当時のワークステーションなどに広く使われるほどの性能を誇っていた。1999年のスピンアウト時に同社はそれまでのCPU提供企業(IPライセンス/セカンドソースもあり)からIPライセンス企業に完全に鞍替えしたが、これにあたり同社からは32bitの「MIPS32 4Kシリーズ」と64bitの「MIPS64 5Kシリーズ」が提供開始された。このMIPS32 4Kの方は構成次第でR3000と同等の性能を発揮するとされ、さまざまな企業がこのMIPS32 4Kコアを利用したSoCのラインアップを増やしし始める。筆者が把握している範囲でも

ATI/Atheros Comunications/Brecis Communication/IDT/Infineon Technologies/Ingenic Semiconductor/Lexra/Microchip/Oak Technologies/QED/QuickLogic

といったメーカーがMIPS32のIPライセンスを取得している。またこれとは別にArchitecture License(MIPS命令セットに基づく独自CPUコアを開発する権利)を取得したメーカーには

Alchemy Semiconductor/Broadcom/Cavium/NEC/NetLogic/PMC-Sierra/SiByte/RMI Corporation/ソニーや東芝/STMicroelectronics

などがある。例えばソニーの「PSP(PlayStation Portable)」はR4000ベースの32bit CPUコアだし、その前のPS2に搭載されていたEmotion EngineはMIPS R5900をベースとした独自設計だった。NECはR4000シリーズをベースに(つまりMIPS64 5Kシリーズ以前の設計をベースに)VR4000シリーズを展開していた(図3)。多分最初のEmbedded向けの64bitプロセッサは、このMIPS R4000を起源とするものだったと思われる。


図3:LinksysのWRT54GというIEEE 802.11n対応ルータの中身。左上のBCM4704KPBは300MHz駆動のMIPS32コアを内蔵したNetwork向けSoCである

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