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サブハーモニック発振(2)発生防止策たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(26)(1/3 ページ)

今回はサブハーモニック発振の発生を防止する対策について説明します。

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 前回連載第7回「ステップダウン形DC/DCコンバーターの設計(5)」で後日の説明を約束していたサブハーモニック発振の発生メカニズムについて図式的に説明しました。

 メカニズムの要点をまとめると、

  1. スイッチング電流の信号を誤差信号と比較する電流制御方式の固有現象である。
  2. ton開始時の微小電流変化+ΔI がton時間に−Δtの変動を生じさせ、この−Δtの変化はtoff時間の伸長となるのでtoff終了時に−ΔI’を生じさせる。
  3. 時比率δが0.5を超える場合、ton時の電流傾斜よりもtoff時の電流傾斜の方がきつくなり |−ΔI’| が |+ΔI| より大きくなる。
  4. −ΔI’が次サイクルの新しい変動となり、この現象の繰り返しで微小電流変化が交互に成長して1周期ごとにtonが異なる波形になる。
  5. Spiceシミュレーションのような圧倒的な低ノイズ環境(計算誤差10-3以内)でも異常波形が発生する。

 このようにいえるかと思います。ですからこの現象は電流制御方式でかつ電流連続モード時の固有現象です。特に「5.」の項から制御系のノイズがΔIの起因になっているのではないことに注意してください。このことは制御信号にフィルターを追加して低ノイズ化しても現実的な対策にならないことを示しています。

 今回はそのような1サイクルごとに異なる波形の発生を防止する対策について説明していきたいと思います。数式が多く、図が少ないですが数式自体は直線を表す1次式なので図を見ながら数式をなぞれば式の意味を理解することは容易です。

対策1

 電流不連続モードではtoff終了時に電流が0Aにリセットされるので振動が成長しません。そのため最大負荷時まで不連続モードで使用すればサブハーモニック発振は発生しません。
  不連続モードではコンバーターの(周波数)伝達関数が1次の伝達関数になるので
   周波数特性を安定化させやすくなる。
 × スイッチング電流のピーク値が大きくなる。
 × 時比率δの可変範囲が広くなる。

 このような得失がありますが降圧型や反転型のコンバーターなどでは有効な対策です。
(昇圧コンバーターでは回路による短絡保護自体が困難です)

対策2

 通電時比率δが0.5を超えるとサブハーモニック発振が発生しますのでこの原理に鑑みればδが0.5を超えないように制限することが考えられます。
  入出力の変換比に問題がなければ一番確実な方法である。
 × δ<0.5に制限すると電圧変換比に制限が生じる。

 実際に市販の制御ICに用いられた例としては既に生産中止になっていますが三菱電機からリリースされたM5197シリーズがありました。このICは過電流保護にパルスーバイーパルス方式を採用していますが最大時比率δMAXを外部定数で50%以下に制限すれば過電流時でもサブハーモニック発振を起こすことはありませんでした。
 ただし同社のM5199シリーズはPush-Pullやハーフブリッジ用でδMAXが90%を超えるので過電流保護回路には次の対策3を採用しています。

対策3

 その他の対策として、+ΔIの変動が生じてtonが短くなろうとする時には何らかの工夫でtonを伸ばし、逆にーΔIの変動が生じてtonが長くなろうとする時には何らかの工夫でtonを縮めることを考えます。
 そのような対策として図1に示すように基準となる誤差信号に負の傾斜を加え、ΔIの変動によるtonの変動を打ち消すことを考えます。この工夫を施すことで
①+ΔIの変動が生じてtonが短くなる時には判定値を大きくしてtonを伸ばす。逆に
②−ΔIの変動が生じてtonが長くなる時には判定値を小さくしてtonを短くする。
 そのようなイメージを図1に示しますがこの対策手法をスロープ補償といいます。

図1
図1:スロープ補償のイメージ

課題

 実際のコンバーターでスイッチング電流のピーク値を一定値に抑制すると電流制限となるので短絡の進行に伴って負荷電圧が低下します。この結果、出力電力が減少しtonが短くなります。言い換えると負荷電圧によってtonが変動します。
 そのため、このスロープ補償を用いると負荷電圧が低い場合(ton小)は反転レベルの高いスロープ前縁と比較されるので短絡電流は負荷電圧が高い時(ton大=反転レベル低)に比べて大きくなります。
 この結果、電圧垂下特性が電圧の低下とともに外側へ膨らむ現象が生じるので留意してください。
 このような注意点はありますが電圧変換の自由度から市販ICの多くにスロープ補償が多く用いられています。

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