検索
連載

ARM台頭にルネサス誕生……時代に翻弄され続けた日立「SuperH」マイクロプロセッサ懐古録(16)(2/4 ページ)

今回は日立製作所の「SuperH」を取り上げる。Motorolaとの訴訟で苦渋をなめた経験から生まれた、32ビットの独自CPUコアだ。前回紹介した「H8」とともにルネサス エレクトロニクスに引き継がれ、現在も一部のシリーズでは供給が続いている。

Share
Tweet
LINE
Hatena

セガと共同開発したSH-2

 これに続き1994年には「SH-2」が発表される。SH-1とSH-2のパイプライン構造はほぼ同じだが、動作周波数は最終的に40MHzまで引き上げており、また内部バスのAddress 32bit化や新たに32bit乗算命令を搭載するなどいろいろ拡充されている。開発は1992年からスタートしたそうで、なのでSH-1の量産向けとSH-2の開発がオーバーラップしていたことになる。

 実はこのSH-2は当初からからセガ・エンタープライゼズ(以下、セガ)との共同開発であり、32bitの乗算命令の追加などはセガからの要望だったようだ。セガ向けのSH-2は動作周波数こそ28.64MHzながらマルチプロセッサ用の対応に加え、SDRAMのI/Fも増設されたちょっと特異なものとなっている。ゲーム機(「セガサターン」)用のメインプロセッサであり、分類としてはMPUということになる。ただこれ以外にも幅広い組み込み向けに採用された。とはいえ、このセガサターンは全世界で最終的に950万台ほど販売され、という事はセガサターン向けだけで1900万個ほどのSH-2を日立は販売した事になる。こうした事もあり、SuperHは1996年におけるRISCプロセッサ出荷量で世界第2位となった(ちなみに1位のMIPSが1920万個、2位のSHが1850万個、3位のPowerPCが550万個、4位がARMで350万個。あとはSPARCが100万個、DECのAlphaとHPのPA-RISCがどちらも30万個程度とされている)。余談だがトップのMIPSは「Nintendo 64」と「PlayStation」に採用されたことでやはり数を伸ばしており、この時期にゲーム機で採用される事のインパクトが伺える。

カシオと共同開発したSH-3


SH-3の外観 出所:日本語版ウィキペディアのBaz1521さん - 原版の投稿者自身による著作物 (Original text: Baz1521 撮影), CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=115095912による

 これに続いて1993年からは「SH-3」の開発がスタートした。今度はカシオとの共同開発であり、Windows CEを搭載する携帯情報端末(PDA)向けのプロセッサを開発するという方向であった。当然これはMMUを搭載するMPUであって、ただしPDAであるから絶対性能よりも性能/消費電力比を高くすることが求められる。最終的に1996年、SH-3ベースの「SH7700」シリーズが登場し、まずカシオの「CASSIOPEA A-10/11」に搭載されることになる。製造プロセスは0.5μmで、当初は44MHzだった動作周波数も、後には80MHzまで引きあげられた。このSH-3はMMU制御命令に加え、バレルシフトやプリフェッチなどの命令が追加され、命令種類は68まで増えている。

再びセガと組んだSH-4

 その次が、またしてもセガと共同開発になる「SH-4」である。セガは「Dreamcast」を企画するにあたり、再び日立とタッグを組むことを決めた。そのセガのニーズを受けて、2命令のSuperScalarを搭載した。製造プロセスは0.25μmに微細化され、当初は167MHz駆動で300 DMIPSを発揮している。このSH-4はFPUも搭載されたが、このFPUはIEEE-754互換の単精度/倍精度演算に加え、同時に単精度浮動小数点4つの内積を計算できるベクトル演算器(というかSIMDエンジン)も搭載。浮動小数点で27.8MFlops、ベクトル演算では最大1.17GFlopsを発揮するという高い性能を発揮した。1998年にDreamcastに搭載される形で出荷開始され、さらにその後PDAとか業務用ゲーム機などにも採用されたが、Dreamcast自身が全世界で1045万台の出荷にとどまった事もあって、少なくとも日立が想定した程には売れなかったというべきか。

 さて、この辺まではそれでも順調だったが、この先が続かなかった。まずこのSH-1/2/3/4に加え、SH-2にDSPを搭載したSH2-DSP、同じくSH-3にDSPを搭載したSH3-DSPというラインアップを拡充した。このSH3-DSPをベースとした「SH-Mobile」は国内のフィーチャーフォン(いわゆるガラゲー)向けに結構広く利用された。加えて、SH-4をベースにカーナビゲーション向けとしたSH-Naviも国内の自動車メーカーに採用された(図4)。ただSH-MobileもSH-Naviも主な顧客は国内であり、海外での売れ行きは残念ながらいまひとつであった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る