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AIインフラを支えるストレージ技術目立たなくても重要な要素(1/3 ページ)

AIの進化はGPUや大規模言語モデル(LLM)などに焦点が当たりがちです。だが、目立たないながらもAIインフラの性能を大きく左右する要素の一つがストレージです。本稿では、データセンターとエッジという2つの現場に共通する基盤技術として、ストレージの供給網と技術要件を解説します。

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AIインフラの性能を左右する「目立たない課題」とは

 AIの進化をめぐる議論は、ともすればGPUの処理性能や大規模言語モデル(LLM)、そしてハイパースケーラーによる巨額投資にばかり焦点が当たりがちです。McKinseyは2030年までに世界のデータセンター拡張に総額7兆米ドル規模の投資が必要になると予測しており、まさに前例のない規模での競争が繰り広げられています。しかし、より高速なGPUやより大規模なモデルを追い求める動きの裏側には、目立たないながらも現代のAIインフラの性能を左右する、もう一つの課題が存在します。

 稼働中か計画段階かを問わず、現代のAIデータセンターはGPUラック、アクセラレーター、高性能ストレージだけで成り立っているわけではありません。冷却システム、電源、ネットワークインフラ、管理システムなど、長期にわたり安定的かつスケーラブルで効率的な運用を支える無数の“目に見えない”構成要素にも依存しています。ここに、ダイナミックなAIブームと、意のままにスケールできないインフラという現実との衝突が生じます。構成部品は計画、認証、製造、実装され、長期間にわたり確実に供給され続けなければなりません。とりわけOSブート、制御、管理、セキュリティといった機能に確立されたストレージ技術が使われている場合はなおさらです。

 この課題は、大規模なAIデータセンターだけでなく、AIが工場や現場に降りてきた「エッジAI」においても、形を変えて表れます。本稿では、データセンターとエッジという2つの現場に共通する基盤技術として、ストレージの供給網と技術要件を整理します。

1. 急成長がサプライチェーンを脅かす

 AI需要の急拡大による供給の逼迫は、フラッシュストレージにおいて特に顕著に表れます。メモリ業界全体の生産能力、とりわけ製造能力は、広帯域メモリ(HBM)や高積層NAND型フラッシュメモリといったAI分野からの膨大な需要に振り向けられる傾向が強くなっています。さらに、主要プレイヤーは、現時点で利用可能な生産量だけでなく、数年先を見越して将来の生産能力までも確保しようとしています。

 その結果、多くの産業用途にとって今なお欠かせないSLC(Single Level Cell)やMLC(Multi Level Cell) NANDフラッシュ、旧世代の3D NANDといった確立されたレガシーストレージ技術が、市場から締め出されつつあります。旧世代から新世代への橋渡しとなるはずの製品でさえ、多くの企業にとってコスト面で現実的な唯一の移行手段であるにもかかわらず、入手が困難になったり、必要な数量を確保できなくなったりするケースが増えています。

 同時に、ハイパースケーラーの開発サイクルと、確立された産業界が求める要件との間のギャップも広がっています。産業オートメーション、機械・プラントエンジニアリング、医療技術、エネルギー供給、輸送・物流インフラといった分野は、まったく異なる計画期間を必要とします。ハイパースケーラーが月単位や年単位で考えるのに対し、これらの産業は10年以上先を見据えた計画の確実性と信頼性を必要とします。言い換えれば、あまりに速く進む技術革新のサイクルそのものが、プロセスや運用の安定性、さらには規制順守にとっての課題になりつつあるのです。

2. データセンターも「地味な」技術に依存している

 GPUクラスタへの投資が巨額になる一方で、一部のデータセンターの稼働開始は“目立たない構成部品”の不足によって左右されかねません。これらの構成部品はデータセンターの効率的かつ安全な運用を支えていて、フラッシュストレージそのものに依存していることも多いのです。メーカーが、先端AI製品がもたらす目先の高い利益ばかりを追求すれば、データセンター事業者はブートメディアやコントローラー用ストレージを調達できず、サーバを1台も起動できないという事態にも陥りかねません。

 フラッシュストレージは、こうした目立たない構成部品の典型例です。あらゆるAIデータセンターは、ブートコード、OS、ファームウェア、ログ、設定ファイル、テレメトリデータのために、エンタープライズグレードあるいは産業グレードのフラッシュストレージを必要とします。ベースボード管理コントローラー(BMC)もファームウェアや監視サービスにフラッシュストレージを使用します。イーサネットやInfiniBandのスイッチもローカルのフラッシュメディアに動作ログを保存します。GPUコンピュートノードの内部でさえ、e.MMCやコンパクトNVMeがドライバスタックなど重要なプロセスを管理しています。

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