Microchip Technologyは、SDV(ソフトウェア定義型自動車)ではEthernetなどのオープンな車載ネットワークが重要になると分析している。その理由はなぜか。オープン規格ベースの車載ネットワークがSDVにもたらす利点を、設計者と消費者の両方の視点で解説する。
Microchip Technologyは、自動車業界がSDV(ソフトウェア定義型自動車)に向けて大きく舵を切り、オープン規格ベースの車載ネットワークの採用を拡大していることに注目している。この変革期において、自動車メーカーがEthernet、ASA(Automotive SerDes Alliance)、PCIeといった技術を採用することは、業界が技術的に飛躍するために不可欠な要素になっている。本記事では、同社でCorporate Vice President of Automotive, Data Centre and Networking Business Unitsを務めるMatthias Kaestner氏がこれらの技術について考察した内容をまとめる。
ゾーン型アーキテクチャでは、車両機能をゾーンごとにグループ化することで、集中制御とシンプルな配線構成を実現する。データ転送速度が向上すると共に、従来型のワイヤハーネスと比較して軽量化とコスト削減が可能になる。
ゾーン型アーキテクチャへの採用が期待されるオープン規格の車載ネットワークの候補を幾つか挙げてみたい。まず、Ethernetは、最新の自動車で求められる大容量データの通信に理想的な高速データ通信規格だ。Ethernetはゾーン型アーキテクチャのネットワークバックボーンとして機能し、ADAS(先進運転支援システム)やインフォテインメントのアプリケーションを支える。
ASAは、車載向けの高速シリアル通信に特化した規格で、カメラ等のセンサーと中央演算処理モジュール間を可能な限り短いレイテンシで接続するために重要な役割を果たす。
PCIe(Peripheral Component Interconnect Express)は、中央演算処理モジュール内の高速インタフェースとして、各種処理コンポーネントと高速メモリを接続し、大量データのリアルタイム処理を可能にする。
上記のようなオープン規格の車載ネットワークを活用した共通データフレームワークを採用すると、安全性と効率性、統合の容易化、一貫した運転体験等、多数の利点が得られる。標準化されたプロトコルを利用する事で、独自システムに付随する脆弱性が軽減され、自動車へのサイバー攻撃に対する耐性も強化される。さらに、データの処理が効率化されるのでレイテンシが短縮され、コンポーネント間のタイムリーな通信も実現できるようになる。
通信プロトコルを統一することで、新技術や新機能を導入しやすくなり、ソフトウェアもシンプルになるため、メーカーは市場の需要に迅速に対応できるようになる。こうした適応力によりイノベーションが進み、自動車メーカーは車両アーキテクチャを全面的に刷新しなくても最新技術を採用できるようになる。各種機能がシームレスに統合された共通のデータフレームワークによってユーザーエクスペリエンスが向上し、運転者は信頼性の高い直感的なインタフェースと機能を利用できる。こうした統合は、自動運転技術やスマート自動車技術の将来的な進展にも貢献するだろう。
Microchip Technologyは、オープン規格の車載ネットワーク採用が自動車業界に革新をもたらす可能性に注目している。自動車のソフトウェア定義がますます進むにつれ、Ethernet、ASA、PCIeの活用が今後の自動車設計、セキュリティ、機能の進化において決定的な役割を果たすことになるだろう。標準化に向けたこの動きは、技術進歩を加速させるだけでなく、消費者にも運転体験の向上をもたらすと期待される。
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