「エッジAIを技術検討で終わらせない」 一気通貫のサポートで製品化につなげるST採用事例も続々!

組み込み機器上でAI処理を行う「エッジAI」のトレンドが加速している。消費電力やコストを抑えられ、リアルタイム性とセキュリティが向上するという利点があるが、AIモデルの開発やそのためのデータ収集など組み込みエンジニアにとってハードルが高い部分もある。STマイクロエレクトロニクスは、AIモデル開発を自動化するツールやマイコン、センサーなど幅広い製品群を有し、AIの専門知識を有するチームがエッジAIの開発をサポートしている。

PR/EDN Japan
» 2025年09月29日 10時00分 公開
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 昨今、生成AIをはじめとしたAI関連技術の普及が進んでいる。AIというと高性能なGPUなどを搭載したサーバ上で複雑なAI処理を行うクラウドAIのイメージが強いが、クラウドAIは非常に処理能力が高い一方で消費電力やコストの大きさ、セキュリティリスクなどの課題も指摘されている。

 そうした中で、組み込み機器にAIを搭載する「エッジAI」のトレンドが加速している。処理能力は限定的になるが、消費電力やコストを抑えられるほか、サーバとのデータのやりとりが発生しないのでセキュリティリスクも低く、リアルタイム処理が可能になる。

STマイクロエレクトロニクス アジア・パシフィック地区AIコンピテンス・センター マネージャー 米丸朋宏氏 STマイクロエレクトロニクス アジア・パシフィック地区AIコンピテンス・センター マネージャー 米丸朋宏氏

 「エッジAIは数年前から注目されていたが、特にこの1〜2年は量産に近づく事例が増えてきている」と語るのは、STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)で製品領域を横断してAIソリューションの提案を行っている米丸朋宏氏だ。STは、巨大なエコシステムを持つ汎用マイコン製品群「STM32」をベースとしたエッジAIソリューションの展開に注力している。

 「STの顧客にあたる民生機器や産業機器のメーカーは、製品の付加価値を高める手段としてエッジAIの導入を進めている。この1〜2年で各社は単にマイコンやセンサーといった製品単体でデータシートを比較するだけでなく、それらを組み合わせたPoC(Proof of Concept)に進んでいて、その検討の成果が出始めている」(米丸氏)

「AIが分からない」に応える開発ツールとサポート

 AIのトレンドが加速する中、これから設計/開発する製品に初めてエッジAIを取り入れたいという組み込みエンジニアも多いはずだ。そうしたエンジニアにとって大きな壁となるのは、AIモデルを開発することと、そのためのデータを準備することだろう。「組み込み機器のプログラムとAIモデルの開発は異なる専門性が求められるので、ハードルが高いと感じる技術者も多いのではないか」(米丸氏)。

 STはこうした導入の障壁を取り除くために、エッジAI向けの開発ツールを用意している。「NanoEdge AI Studio」は、AIやデータサイエンスの専門知識不要でAIモデルを開発できるツールだ。データ取得/処理からモデルの学習/テスト、そしてSTM32への最適化までが行える。AIモデルは、STM32マイコンにすぐに実装できるC言語で出力される。

「NanoEdge AI Studio」を用いたエッジAIの開発フロー。組み込みエンジニアにとって、「2.モデル開発」と「3.モデル実装」の間には大きな障壁があると米丸氏は語る 「NanoEdge AI Studio」を用いたエッジAIの開発フロー。組み込みエンジニアにとって、「2.モデル開発」と「3.モデル実装」の間には大きな障壁があると米丸氏は語る 提供:STマイクロエレクトロニクス

 「AIモデル開発、マイコン実装への最適化などの各フェーズに対応したツールを複数用意しているメーカーは他にもあるが、STは一気通貫でサポートしているのが特徴だ」(米丸氏)

 さらにSTは、カメラ入力による物体検知や振動データからの異常検出など、ユースケースに合わせたAIモデルを用意し、「STM32 Model zoo」としてGitHubで公開している。また、既にAIモデルを用意してカスタムしている場合は、それをC言語に変換してマイコン実装用に最適化する開発ツール「STM32Cube.AI」も利用できる。STM32Cube.AIでは、STM32マイコンの中から最適なハードウェアが選定できる。

 STは開発ツールの提供にとどまらず、AIの専門知識を持ったチームによるサポート体制も整えている。米丸氏は「ST製品を使った技術的な内容はもちろん、それ以前の『AIで何を実現したいか』という段階からサポートする。顧客にとってAIは“目的”ではなく“手段”だ。AIという手段を使ってどのような目的を果たしたいか、計算リソースが限られる組み込み機器上で何が実現できそうかを一緒にディスカッションしていく」と語る。

 実際に製品化したときに価値を発揮できるような、高性能なAIモデル開発の肝となるのは、どんなデータセットを用いるかだという。STは「こうしたモデルを開発するには、どのようなデータが必要か」といった相談にも応じている。

NPU搭載マイコンやインテリジェントセンサーなど幅広い製品群

 STはマイコンやセンサーなどの幅広い製品群を有していることも強みだ。米丸氏は「多種多様なデバイスを顧客の要望に合わせて選定し、最適なシステム構成を提案できる」と説明する。

 エッジAIでは主にマイコンがAI処理を担うことになるが、STM32は汎用マイコンでありながら全てのシリーズがAI処理に対応している。中でも、2024年12月に発表した「STM32N6」は特にエッジAI用途での使いやすさを追求したものだ。独自設計のNPU「Neural-ARTアクセラレーター」を搭載し、AI処理性能は600GOPSと、既存のハイエンドマイコン「STM32H7」と比べて600倍にも向上した。STM32N6では複雑なAIモデルの実行も可能で、複数の人物のリアルタイムモニタリングやAI処理とモーター制御の同時実行などが実現する。

「STM32マイコン」のポートフォリオ 「STM32マイコン」のポートフォリオ 提供:STマイクロエレクトロニクス

 データ取得を担うセンサーも、ToF(Time of Flight)センサーやMEMSセンサーなどを豊富に取りそろえている。ToFセンサーを用いる例としては、照射する赤外線の反射データから対象物の材質を推定し、床面タイプに合わせて運転モードを自動で切り替える掃除機などが考えられる。

ToF(Time of Flight)センサーを用いた床面タイプ判別の例 ToF(Time of Flight)センサーを用いた床面タイプ判別の例 提供:STマイクロエレクトロニクス

 インテリジェントセンサー処理ユニット(ISPU)を内蔵した6軸MEMSセンサー製品群「ISPU」も用意している。従来マイコンで行っていた信号処理やAI処理をセンサー内で行うことで、消費電力を大きく削減できるというものだ。

インテリジェントセンサー処理ユニット(ISPU)の構造 インテリジェントセンサー処理ユニット(ISPU)の構造 提供:STマイクロエレクトロニクス

 このように、STでは豊富な製品群、充実した開発ツールを用意し、アイデアから製品化までをサポートしている。これは、エッジAIのような新しい技術トレンドを製品に取り入れる際に多くのエンジニアが直面するであろう「良いものができそうだが、社内で提案を通すのに時間がかかる」という悩みへの解決策にもなりそうだ。

 米丸氏は「STはエッジAIの課題設定からデータ収集、AIモデル開発、そしてハードウェアに実装して動作させるまで伴走する。実際にモノができると『最終製品に組み込める/取り入れられる』というイメージが湧くので、社内での提案に使うと説得力が増す」と説明する。

 「課題設定があいまいだと、エッジAIを導入したくても技術検討で終わってしまう。優れた専門知識や良いハードウェアがあっても具体的な目標がなく、足場がぐらついてしまうからだ」と米丸氏は語る。ゼロからコンサルティングに近いサポートを行うことで、“技術検討の先”へ進むための支援ができるのはSTならではだと強調した。

製品採用事例も続々 追加部品なし、内蔵メモリで実現

 STのエッジAIソリューションは、製品採用事例も豊富だ。2024年4月には、パナソニック サイクルテックの通学用電動アシスト自転車「ティモ・A」にSTのマイコン「STM32F3」とSTM32Cube.AIが採用されたことを発表している。モーターの回転数やスピードセンサーからの情報をもとにタイヤの空気圧を推定し、空気圧センサーを使うことなく空気入れのタイミングを液晶スイッチに表示する。AIモデルはSTM32Cube.AIでSTM32F3に最適化しているので、内蔵メモリのみで対応できているという。これによってティモ・Aは、新たにセンサーなどを追加することなくユーザーの安全性や利便性を高め、部品の長寿命化にも貢献している。

 ニデックが開発したドローンモーターのESC(Electric Speed Controller)も実例の1つだ。NanoEdge AI Studioで開発したAIモデルをSTのマイコン「STM32H5」に搭載している。ドローンは、フライトコントローラー(FC)が機体全体を、ESCが各モーターを制御する仕組みだ。STM32H5を採用したニデックのESCは、モーターの電流値を常時モニタリングし、AI処理によってプロペラの異常やベアリングの故障を検知できる。その情報はFCを介さずにESC間で共有するので、いずれかのモーターに異常が発生した際、FCへの負荷を増やすことなく他のモーターが異常をカバーできるのだ。これも追加の部品やセンサーなしで、マイコンの内蔵メモリのみで実現している。

技術検討で終わらせない 製品化につなげるサポート

 「技術検討で終わらせない、エッジAIを製品化につなげる製品やサポートを提供できる」とするST。マイコンやセンサーなどの豊富な製品群、充実した開発ツールやAI専門チームによるサポートといった後押しで、エッジAIの導入がさらに加速していきそうだ。

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提供:STマイクロエレクトロニクス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2025年10月28日