データセンターからフィジカルAIへ Microchipが見据える技術進化と製品戦略エッジとクラウド両軸を攻める

AI市場では現在、データセンター投資の拡大に加え、エッジAI/フィジカルAIへの関心も急速に高まっている。こうした変化をMicrochip Technologyはどう見ているのか。同社でEdge AI Business UnitのSenior Staff Marketing Managerを務めるDean Leo氏にAI時代における半導体アーキテクチャの変化や、市場の見通しおよび同社の製品戦略について聞いた。

PR/EDN Japan
» 2026年06月04日 10時00分 公開
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エッジAIとクラウドAIのハイブリッドアーキテクチャ確立を支援

――Microchip社のAIアプリケーションは、エッジとクラウドの両側で展開されています。これら2つの領域の開発におけるシナジーについて、どのようにお考えですか。

Dean Leo氏 クラウドAIとエッジAIは、演算性能、メモリの制約、接続の信頼性、電力効率、データプライバシー、ソリューションのサイズ、コストといった観点で、それぞれ異なる利点があります。クラウドは今後も、演算負荷の高いモデルのトレーニングや更新に適した選択肢であり続けます。特に、データセンター建設やAIテクノロジーが驚異的なスピードで加速する中、クラウドAIは大きな存在感を示しています。

 一方、エッジAIは、AI推論をローカルで即座に実行するものです。エッジソリューションは、アプリケーションごとに求められる性能、メモリ、コネクティビティ、電力効率、セキュリティ、サイズ、コストに合わせて最適化できます。AI推論の処理能力は、時間の経過と共にネットワークの中核からノードデバイスへと広がっていくでしょう。

 各アプリケーションは、目標タスクを遂行するために必要なエッジAIとクラウドAIの組み合わせを採用していくでしょう。Microchip社はエッジAIとクラウドAIの両側で強固なポジションを築いています。顧客がそれぞれのアプリケーションに適したエッジAIとクラウドAIのハイブリッドアーキテクチャを確立できるよう支援していきます。

進化するAIデータセンター需要に向けたMicrochipの体制

――2026年のAIデータセンターを取り巻く状況をどのように見ていますか。また、進化する需要に応えるため、Microchip社はどのような体制を整えていますか。

Leo氏 2026年のAIデータセンターは、処理性能要求と電力制約によって形づくられていると考えています。ハイパースケーラによる大規模投資が新サイト構築の需要をけん引しており、各サイトでは数ギガワット規模の電力消費に伴う廃熱への大量液冷システムが必要とされています。

 こうした状況は、Microchip社にとってアナログ製品分野でのビジネス機会につながります。例えば、効率的な発電と電力管理を実現する高効率電力ソリューション、正確な流量測定、安全アプリケーション(冷却液漏れ検出、熱暴走検出機能を備えたバッテリー管理等)です。

 デジタル分野でも、ネットワーキングやコネクティビティーを中心に多くの機会があります。当社は、産業用Ethernetスイッチ、物理層や組み込み向けSPEデバイスの幅広いポートフォリオに加え、業界初の3nm PCIe Gen 6スイッチを提供しています。また、NVMe、RAID、ストレージコントローラーなど、各種ドライブ向けの包括的なストレージソリューションも備えています。

 さらに、リタイミング機能を備えた「META-DX2」800 GbE物理層、仮想プライマリーリファレンスタイムクロック(vPRTC)、NTPサーバ、PTPグランドマスター、原子時計等のネットワークタイミングソリューションも提供しています。これら全てのソリューションは、当社Webサイトでご覧頂けます。

――多様なプロセッサやコアのポートフォリオを持つ中で、Microchip社は製品ロードマップと長期的な開発をどのように連携させているのでしょうか。

Leo氏 当社は、主力分野であるマイクロコントローラー、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルコントローラー、ワイヤレスマイクロコントローラー、組み込みコントローラー、FPGA、FPGA SoC(System on Chip)において、技術革新を進めています。各コンピューティング製品ファミリーには、それぞれ適したアプリケーションと市場セグメントがあります。

 当社は、綿密な市場分析、顧客との対話、競合分析を通じて、効率性と収益性を維持しながら、できるだけ多くの顧客の要件に応えるため、各分野で必要となるデバイスの適切なロードマップを策定しています。

 結局のところ、大切なのはバランスです。成功している企業はどこも、市場機会を自社の現在の能力と照らし合わせ、能力、売り上げ、収益性を最も大きく伸ばす取り組みに重点を置いています。当社はこの点で業界最高の企業であり続ける事を目指し、常に自らに挑戦しています。そのためには、自社と市場の両方を深く理解している必要があります。

AI開発はハードだけじゃない 強化するソフトウェア基盤

――AIの導入はハードウェアだけで決まるものではありません。チップの強み以外に、AI開発者を支援するため、どのようなソフトウェアや機械学習フレームワークを用意していますか。

Leo氏 当社のMPLAB X IDE向け機械学習開発スイートプラグインは、開発者がAIデータの収集、ラベリング、MLモデルの選択、構築、トレーニング、テスト、ターゲットデバイスへの展開まで、一連の開発フローをサポートしています。AI開発能力を広げていくための出発点になるでしょう。

 また当社は、Bring-Your-Own-Model(自社モデル持ち込み)開発フローにも対応しています。業界標準プラットフォームで開発したモデルをLiteRT(旧TensorFlow Lite)形式でMPLAB X IDEにインポートし、マイクロコントローラー、デジタルシグナルコントローラー、マイクロプロセッサで利用できます。マイクロプロセッサではベアメタル実装に対応します。さらに、FPGAまたはFPGA SoC向けにはVectorBloxツールスイートを提供しています。開発者は、業界標準プラットフォームで開発したモデルを最適化し、Libero IDEにインポートできます。

 当社は今後、AI向けに最適化された新しいハードウェアと同じくらい、ソフトウェア開発ツールについても多くの新規開発を計画しています。開発者は、VS Code向け公式MPLAB拡張機能スイートを通じて、VS Codeエディター内からMicrochip社のツールチェーン全体にアクセスできます。

 顧客が期限通りに優れた設計を完成させるには、ハードウェアとソフトウェアが一体となって機能する必要があります。今日のソフトウェア開発者は、製品のハードウェアプラットフォームを選定する際、ハードウェア設計者と同じくらい大きな発言力を持っています。この事実は、現在の業界の中でも、特にエッジAIアプリケーションで顕著です。エッジAI向けソリューションは、当社Webサイトでご覧頂けます。

生成AI/エッジAIがもたらす課題と機会

――生成AIとエッジコンピューティングはチップのアーキテクチャに変化をもたらしています。Microchip社はこのトレンドを課題と機会のどちらと捉えていますか。また、今後の製品開発計画にどのような影響を与えるのでしょうか。

Leo氏 その両方です。新しいチップ設計には常に課題が伴いますが、一方で、エッジAIの機会は非常に大きいものです。生成AIは今後、データセンターから、産業用およびコンシューマー向けIoTノード、スマートフォン、自動車などのエッジデバイスに広がっていくでしょう。

 この移行は、レイテンシの低減、AI推論エンジンへの接続信頼性の向上、データプライバシーの強化、クラウド帯域幅コストの削減といったニーズによって進みます。また、量子化や枝刈りなどのモデル最適化技術の進展によって、必要な精度を維持しながら、モデルサイズをエッジノードデバイスで扱える規模まで縮小することで実現されます。

 エッジAIアプリケーションの中には、ハードウェアにNPU(ニューラルプロセッシングユニット)アクセラレーションを備えた新製品を必要とするものがあります。一方で、長年使われてきた低コストデバイス上のソフトウェアで実装できるものもあります。将来の製品ロードマップでは、多くの顧客のニーズに応えるため、この2つのエッジAIの方向性をどちらもカバーする必要があります。当社はその両方に取り組んでいきます。

フィジカルAI実現もワンストップで

――フィジカルAIは、今日の最も重要なトレンドの1つです。この時代を迎えるにあたり、Microchip社はどのようなポジションを取っていますか。

Leo氏 フィジカルAIは、現在のエッジAIの中で最も刺激的な分野です。AIが最も具体的かつ目に見える形で現れる領域だからです。AIテクノロジーによって制御されるロボット、ドローン、自律走行車は、今後20年間で、家庭や職場、買い物、交通など生活のあらゆる場面に広がっていくでしょう。

 Microchip社は長年にわたりロボティクス分野に携わってきました。この分野の顧客に、FPGA、FPGA SoC、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラー、デジタルシグナルコントローラー、ワイヤレスモジュールをはじめ、Ethernet、EtherCAT、SPE、PCIe、USB、タイミングデバイス、セキュアエレメント、メモリ、シグナルパス、電源管理ICなど、幅広い製品群を提供しています。

 また、フィジカルAIでは、機能安全やセキュリティも極めて重要になります。当社は、多くのコンピュートエンジン製品を「機能安全対応」として提供しており、FMEDAレポート、FuSa診断コード、安全マニュアル、認定コンパイラ、フィールドエキスパートによる技術サポートを用意しています。

 セキュリティ面でも同様の能力を備えており、ハードウェアベースの信頼を中心とした「セキュアバイデザイン(設計レベルでのセキュリティ対応)」アプローチを提供しています。これは、マイクロコントローラー、マイクロプロセッサ、FPGA等の製品に統合されている場合もあれば、暗号鍵を保護して安全なデバイス認証を可能にする、耐タンパ性を備えた設定可能なコンパニオンチップ、すなわちセキュアエレメントとして提供される場合もあります。

 フィジカルAIの実装にはコンピュート、接続性、機能安全、セキュリティを含めた幅広い要件が求められます。Microchip社には、今すぐ顧客の設計を支援するために必要な実現技術と専門家が豊富にそろっています。

※本稿は、マイクロチップ・テクノロジー・ジャパン株式会社より寄稿された記事を再構成したものです。

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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2026年7月3日