インターリーブのススメ、昇圧型スイッチング・レギュレータを高効率に(2/3 ページ)
マルチフェーズのインターリーブは単相よりも設計は複雑だが、発熱や基板面積、さらにはコストをも抑えられる。
インターリーブと単相を比較
2相をインターリーブする機能が付いたスイッチング・レギュレータが、どのように入力コンデンサのリップル電流を打ち消し合っているかを図3に示す。2つの昇圧型スイッチング・レギュレータが180°位相をずらして動作することでリップル電流を打ち消し合い、リップル電流のピーク間の振幅が1/2に減衰する。インターリーブ機能があるスイッチング・レギュレータと単相のスイッチング・レギュレータのリップル電流が等しいとすると、インターリーブしているそれぞれの昇圧型スイッチング・レギュレータのリップル電流は、単相の2倍になる。インターリーブするそれぞれの昇圧型スイッチング・レギュレータは単相と同じ周波数(100kHz)で動作するが、入出力のリップル周波数は200kHzである。以上より、周波数100kHz、リップル電流を単相の2倍としてインターリーブする2つのスイッチング・レギュレータを設計すると、インダクタンスは単相の1/2となる。入力コンデンサの実効リップル電流は、2相のインターリーブ機能付きと単相とで等価なため、どちらのスイッチング・レギュレータにも同じ入力コンデンサを使った。
インターリーブする2相の昇圧型スイッチング・レギュレータに、単相と同じインダクタを使えば、リップル電流を低減し、入力コンデンサを1/2にできる。一般的に昇圧型スイッチング・レギュレータの設計では、インダクタによって得られる特性の方が入力コンデンサによるものより重要である。
インターリーブ機能付きスイッチング・レギュレータは、入力コンデンサと同じように出力コンデンサの数量も減らせる。図4は、単相のスイッチング・レギュレータにおける出力コンデンサのリップル電流波形である。この波形から、およその実効電流(rms値)をIPP×(d×(1−d))で求められ、約10Armsであることがわかる。波形の最上部に現れるインダクタ・スロープが総実効電流を大幅に増やすことはない。FETがオンの間は、すべての出力電流を出力コンデンサが供給し、オフの間は、IOUT×d/(1−d)の電流、すなわち14Aがコンデンサに流れ込み再充電する。アルミニウム電解コンデンサを使用する設計では、コンデンサの定格リップル電流がコンデンサの必要数を決定する。
図5は、インターリーブ機能付きスイッチング・レギュレータの、出力コンデンサの電流を示している。インダクタ・スロープを考慮しない場合、インターリーブする各昇圧型スイッチング・レギュレータA、Bにおける電流の最大値と最小値の間の振幅は、単相のスイッチング・レギュレータの1/2である。これは、出力コンデンサに流れ込む電流の周期が単相の2倍になるからだ。図5では、波形の総実効値が5Aであり、出力コンデンサの数を半分にしても単相設計より低いリップル電圧にできる。
図6は、高い動作周期でリップル電流を低減できることを示している。インターリーブ機能付きでは単相に比べて実効電流を1/2に低減する。デューティ比50%においてはリップル電流を完全に打ち消し合っている。
図7と図8の回路図は、単相と、2相のインターリーブ機能付きの昇圧型スイッチング・レギュレータである。図7の単相のスイッチング・レギュレータでは、電圧モードで動作するPWMコントローラ「UCC38C43D」が一対のMOS FETを駆動する。短絡時の出力電流を制限する方法がないため、評価時は過電流保護機能付きのホットスワップ回路「TPS2490DGS」を追加して過電流発生時の電流抑止に備えた。図8はデュアルインターリーブPWMコントローラ「UCC28220D」を使用したインターリーブ機能付きスイッチング・レギュレータである。Q5とQ7のドレイン端子に接続した低コストのトランスによってFETの電流を検知し、2相の電流をコントローラで等化する。電流は整流器内で低減するためヒートシンクが不要となり、組み立てコストを抑えられる。
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