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サレンキー型フィルタの“落とし穴”Baker's Best

サレンキー(Sallen-Key)型のローパスフィルタは、遮断周波数以上の領域では、フィルタのゲインが単調に減衰しないという落とし穴がある。一定の周波数を超えると、周波数の増加とともにゲインも増加してしまうのだ。

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 A-Dコンバータの入力部に用いるアンチエイリアスフィルタは、通常、オペアンプを用いたアナログローパスフィルタとして設計する。その際、遮断周波数以上の領域では、フィルタのゲインが単調に減衰することを前提とするケースがほとんどだろう。多くの場合、それで問題ないのだが、サレンキー(Sallen-Key)型のローパスフィルタに関してはこの前提は必ずしも成立しない。サレンキー型のフィルタでも、遮断領域内のある周波数まではゲインは減衰する。しかし、その周波数を超えると、周波数の増加とともにゲインも増加してしまうのだ。

 図1は、3種類のオペアンプA、B、Cと、それぞれを使用して構成した3種類のサレンキー型フィルタの周波数特性を表している。上側3つのプロットは、各オペアンプのオープンループでの周波数特性であり、ゲインが0dBになる周波数が示してある。すなわち、それぞれのGB積(利得帯域幅積)は38MHz、2MHz、0.3MHzである。また、DCゲインはいずれも10000V/V、つまりは80dBだ。

図1 オペアンプとフィルタの周波数特性
図1 オペアンプとフィルタの周波数特性 サレンキー型で構成した3種類の2次バタワースローパスフィルタの周波数特性と、それぞれに使われているオペアンプのオープンループでの周波数特性を表している。ゲインの最大値はオペアンプが80dB、フィルタが0dBである。

 一方、下側の3つのプロットは、各オペアンプを使用して構成したサレンキー型の2次ローパスフィルタの周波数特性を表している。この図から、遮断周波数の1kHzから1ディケード(decade)分を少し超える周波数までは、先ほど述べた前提の通りの特性であることが分かる。すなわち、3種類のフィルタは、いずれもこの領域では40dB/decadeの減衰特性を持つ。これは、2次のローパスフィルタの特性として正しい。しかし、各フィルタのゲインは、それぞれある周波数以上になると、いずれも20dB/decadeで増加し始める。

 各フィルタのゲインが増加し始める周波数は、フィルタを構成するオペアンプの出力インピーダンスに依存する。オペアンプのオープンループゲインが低いほど閉ループでの出力抵抗は増加するが、これに依存して、ゲインが増加し始める周波数が異なるわけだ。もう一度、図を見ると、ある周波数からゲインが増加し、オペアンプのオープンループゲインが0dBになる周波数において、フィルタの周波数応答がフラットになっている。サレンキー型のフィルタは、このような特性を持つことに留意すべきである。

 このゲインの増加の影響を低減するために、フィルタの後段に抵抗とコンデンサで構成したローパスフィルタ(RCフィルタ)を挿入するという手がある。ただし、この方法を用いると、RCフィルタによって位相特性が乱れ、時間軸上で見るとリンギングが増加することもあるので注意を要する。さらに、この手法は出力インピーダンスを増大させることにもなる。

 ローパスフィルタがサレンキー型でなければ、RCフィルタを付加しなくて済む。例えば、出力が反転しても問題ないのなら、多重帰還型のフィルタを使用すればよい。多重帰還型のフィルタであれば、遮断領域でゲインが増加することはない。

<筆者紹介>

Bonnie Baker

Bonnie Baker氏は「A Baker's Dozen: Real Analog Solutions for Digital Designers」の著書などがある。Baker氏へのご意見は、次のメールアドレスまで。bonnie@ti.com


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