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DC-DCコンバータのグラウンドバウンスを抑えるその発生メカニズムから、基板設計ノウハウまで(1/3 ページ)

「グラウンド」は回路図上では単純なものだが、プリント回路基板のレイアウトによっては、複雑なものともなり得る。グラウンドに生じた電圧変動を解析するのは難しい。しかし、その発生原理を理解することで問題に対処できる。本稿では、DC-DCコンバータを例にとり、電圧変動の発生メカニズムとその対策方法を解説する。

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 本稿のテーマは、「グラウンドバウンス」である。グラウンドバウンスとは、システムの0V基準電位に対してグラウンドリターン(0V基準電位への戻り線)の電位が上昇/降下することだ。スイッチング方式のDC-DCコンバータでは、このグラウンドバウンスの値が大きくなることがある。多くの場合、その原因は磁束の変化だ。次節では、まずグラウンドバウンスの発生原理について説明する。

グラウンドバウンスの発生原理

図1 磁束と磁場の関係
図1 磁束と磁場の関係 

 磁束は、ループ領域内の磁場に比例して発生する。図1は単純な回路ループ内で磁束が発生する様子を表している。この回路の場合、電圧源から抵抗と配線ループに向けて電流が流れる。この配線を自分の右手でつかんだとしよう。電流が流れる方向に親指を向けたとき、残りの指は磁場線の方向を向いている。これらの磁場線がループ全体に行き渡ることで磁束ができる。磁場の強度、あるいはループ領域(ループの面積)のうちのどちらかが変化すると、磁束が変化し、電圧にも変化が生じる。図2は、図1の回路にスイッチを追加したものである。スイッチが開くと電流の流れが止まるため、磁束が崩れて配線のすべての位置で電圧が変化する。

図2 スイッチを追加した回路
図2 スイッチを追加した回路 それまで閉じていたスイッチが開くと磁束がゼロになり、回路に電圧が発生する。

 一般に、プリント回路基板からグラウンドプレーンへの抵抗は、磁束の変化に比べるとグラウンドバウンスに与える影響が少ない。例えば、厚み35μmの銅板の抵抗は、約500μΩ/□である。1Aの電流変化が発生した場合の電圧の変化は、500μV/□程度だ。つまり、グラウンドプレーンが薄かったり、長かったり、デイジーチェインが構成されていたりするとき、あるいは精密機器の場合には、抵抗が問題となる可能性がある。

 一方、寄生リアクタンスは、グラウンドリターンに大きな過渡電流が流れる原因となる。グラウンドバウンスは、そうしたスパイク電流が原因で磁束が変化することによって発生する。グラウンドバウンスを低減するには、磁束の変化を制御するのが一番である。

 ここで、出力電流は一定だが、ループ領域が変化するケースについて考えてみる。図3に示したように、スイッチを切り替えることで、このような状況が発生し得る。図3(a)では、理想的な配線が理想的な電圧源を通って理想的な電流源に接続している。このとき、電流はグラウンドリターンを含むループ全体を流れる。ここで、図3(b)のようにスイッチの位置を「1」から「2」に切り替えたとしよう。この場合、電流源は直流のままだが、ループ領域が変わったことで磁束が変化し、グラウンドバウンス電圧が発生する。

図3 ループ領域の変化に伴う磁束の変化
図3 ループ領域の変化に伴う磁束の変化 ループ領域は、スイッチの位置によって変化する。スイッチの位置が「1」の場合、回路全体がループ領域となる(a)。一方、スイッチの位置が「2」になるとループ領域は、図の右側の部分のみとなる(b)。そのとき、I1はゼロになり、磁場が崩れて電圧が発生する。

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