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電流モード制御DC-DCコンバータの特性改善電流検出はどこで行うべきなのか(1/3 ページ)

電流モード制御のDC-DCコンバータは、どの位置で電流検出を行うかによって特性が大きく左右される。本稿では、従来の設計の問題点を指摘するとともに、DC-DCコンバータの種類ごとに電流検出の最適な位置について解説する。

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DC-DCコンバータの制御方式

 スイッチング方式のDC-DCコンバータ(以下、コンバータ)の制御方法は、電圧モード制御(VMC:voltage mode control)と電流モード制御(CMC:current mode control)に大別できる。VMCでは、出力電圧の一部を制御信号に帰還し、それによってパワースイッチのデューティを制御して出力電圧を安定化させる。CMCでは、それに加えてインダクタに流れる電流の変化も制御に利用する。

 CMCは電流の検出(モニター)方法により、ピーク電流モード制御(PCMC:peak current mode control)や平均電流モード制御(ACMC:average current mode control)などに分類される。CMCにはVMCでは得られない利点があるが、考慮すべき特有の制約/問題点もある。本稿では、まずCMCの利点をまとめた上で、制約/問題点、一般的な対処法について検討する。その上で、その問題点を本質的に解決する方法について述べる。

CMC、主としてPCMCの利点

 CMC、特にPCMCは以下に列挙するような利点を持つ。

■負荷レギュレーションが良好

 CMCは、VMCと比較して負荷の変動に対する応答が高速であり、負荷レギュレーションに優れる。

■補償回路が簡単

 VMCの場合、連続通電モード(CCM:continuous conduction mode)では誤差増幅器(エラーアンプ)に3個の極点と2個の零点を有するタイプ3の補償回路が必要となる。補償回路を構成するには、誤差増幅器の周辺に1個の抵抗と2個のコンデンサを使い、誤差増幅器の入力部と出力段のLC(インダクタンス/コンデンサ)との間にRC(抵抗/コンデンサ)を並列に配置する。

 一方、PCMC方式のコンバータでは、2個の極点と1個の零点を持つ回路によって補償回路を構成でき、一般にVMCよりも簡単である。

■入力レギュレーションが良好

 PCMCは、フォワード型以外のVMCと比較して入力電圧の変動や乱れに対して高速に応答し、入力レギュレーションに優れる。また、対称型トランス結合コンバータ(フルブリッジ、ハーフブリッジ、プッシュプル中心タップ型など)の場合、PCMCであればPWM(pulse width modulation:パルス幅変調)駆動における電圧×時間の非対称性を修正できる。そのため、ステアケーシング(stair casing)またはフラックス揺動(flux walking)と呼ばれるインダクタンスコアの磁気飽和を防ぐことが可能である。

■パルスごとの電流制限が可能

 PCMCでは誤差増幅器の出力をクランプすることにより、パルスごとに電流制限が行える。

■出力段の並列接続が可能

 PCMCまたはACMCを適用すると、いくつかの出力段を並列接続することができる。それにより、出力電流を増やすことが可能になる。

CMC、主としてPCMCの制限事項

 CMC、特にPCMCには上述したような利点がある。しかし、適用に際しては以下のような無視できない制限事項も存在する。

■制御対象は平均電流

 制御すべき状態変数は、インダクタに流れるピーク電流ではなく平均電流である。適切な設計手法を適用すれば、CCMを維持している限り、ピーク電流の制御によって平均電流を効果的に制御できる。しかし、負荷電流が非連続通電モード(DCM:discontinuous conduction mode)の条件まで減少する場合には、平均電流とピーク電流との間に生じる差を電流制御ループよりも応答の遅い電圧制御ループによって修正する必要がある。その結果、PCMCの高速応答という利点が一部損なわれる。

■スロープ補償が必要

 負荷電流および入力電圧のダイナミックレンジを最適化し、また電流制御ループの安定性を確保するために、インダクタ電流に対してスロープ補償する必要がある。負荷電流/入力電圧に対する特性を最適化するためには、補償後のランプスロープはインダクタ電流の下降時スロープの50%とすべきだ。しかし、50%のランプスロープでは、約36%以下のデューティ比の場合にしか電流制御ループの安定性と十分なダンピングが得られない。デューティ比が36%以上の場合、ランプスロープは50%以上必要となり、その結果、負荷電流/入力電圧に対する特性が犠牲になる。

■入力電圧の範囲が広い場合の対処が困難

 高い入力電圧に対してCCM動作を確保しようとすると、低い入力電圧に対してCCM動作が深くなる。そして、検出の対象となる電流(以下、検出電流)信号のランプが浅くなり、S/N比(信号対雑音比)が劣化する。電流検出用の抵抗の値を高くすればS/N比は改善されるが、消費電流が増加し、効率が低下する。ハーフブリッジコンバータでは、中心点をフローティングにするか、あるいは容量結合にするが、PCMCの場合には中心電圧が上下に揺れるという問題点がある。

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