ビデオインターフェース最前線:DVI、HDMI、DisplayPort、UDI――各仕様の特徴と問題点を解き明かす(3/5 ページ)
地上放送などに代表されるコンテンツのデジタル化に伴い、ビデオインターフェースのデジタル化が進んでいる。このデジタルビデオインターフェースのデファクトスタンダードを狙い、HDMI、DisplayPortなどの規格が争っている。これらの規格の特徴とそれぞれが抱える課題をまとめることで、次期ビデオインターフェースでいずれの規格が主導権を握るのか占ってみたい。
HDMI――ビデオインターフェース標準の本命か
続いて、HDMIを取り上げる(図2)。このHDMIとDVIの大きな違いは、音声の転送経路と後述するCEC(consumer electronics control)ラインの有無である。
■HDMIの概要
DVIのコネクタの形状は、パソコン向けとしては十分であった。しかし、民生機器メーカーはもう少し小型で、例えばコネクタを止めるネジをなくした見た目の良い形状を求めた。HDMIはこの要求に応えるが、DVIポートを単に縮小したものではない(図3)。
Silicon Image社を中心とするHDMIの開発者らは、DVIとの下位互換性を維持しつつ、映像データと8チャンネルの音声データ(圧縮/非圧縮の両方に対応し、サンプリング周波数192kHzで24ビットのデータ)の両方を、単一のケーブルによって転送可能な機能を持たせた。
HDMIの最初のドラフトバージョンでは、音声データをクロック信号に重畳していた。現在では、音声データは映像信号線を利用して水平/垂直のブランキング期間に転送される。
また、HDMIはパソコン以外の用途も視野に入れたものなので、RGBだけではなく、4:4:4と4:2:2のYCbCrもサポートする。
そのほかに、HDMIはある程度のビット損失は許容できるよう、映像用に8B/10B、音声用に4B/10B、最も重要な制御情報用に2B/10Bと、3つの符号化プロトコルをサポートしている。
2002年12月に最初の仕様であるバージョン1.0がリリースされてから、HDMIは下位互換性を維持しながら拡張/変更されていった(表1)。例えば、HDMIのバージョン1.2aでは、AV機器の接続性を向上させる遠隔制御規格であるCECのサポート方法を正式に定義している。このCECを実装するか否かは選択可能だが、ケーブルにおける配線サポートは義務付けられた。
■表現能力が大きく向上したバージョン1.3
最新のHDMI仕様であるバージョン1.3では、シングルリンクの最大クロック周波数を340MHzに高めている。このクロックを使用するには、HDMI接続の両端にバージョン1.3準拠の機器が必須となる。それだけでなく、カテゴリ2の特性を持つケーブルも必要である。
このクロックの拡張により、10.2Gビット/秒の帯域幅が得られる。帯域幅が拡大したことで、リンク当たりの映像解像度とフレーム周波数の向上や、色深度の24ビット/ピクセル以上への拡大などが実現できる。色深度の拡大により、1ピクセル当たりの情報量を30ビット、36ビット、48ビットとすることが可能になった。それによって、色や輝度のダイナミックレンジが広がることとなる。
また、バージョン1.3では、拡張色空間「xvYCC」がサポートされた。これによって表現可能な色領域が拡大し、自然界の色をより忠実に表示可能になるという。さらに、バージョン1.3では、米Dolby Laboratories社や米DTS社の最新の圧縮フォーマットをサポートした。
ほかには、例えばホームシアター機器で利用するリップシンク機能が追加された。これは、映像と音声を処理する際に生じるタイミングのずれを補正する機能である。加えて、コンパクトなデジタルカメラ/ビデオカメラからのマルチメディア転送を想定し、小型のタイプCコネクタが設計されている。
HDMIのバージョン1.3以前の仕様でも、光ディスク、あるいはケーブル、IPTV(Internet Protocol TV)、地上放送、衛星放送などを介した標準(SD)解像度や高品位(HD)解像度に対応していた。そのため、中にはHDMIのバージョンが上がったことに意味があるのだろうかと思う人もいるかもしれない。そのような人には、次の3つのキーワードで回答しよう。それはデジタルカメラ、パソコン、ゲーム機である。
ゲーム機やパソコンでゲームに熱中する人々にとっては、その最中に迅速な応答を可能にする高いフレーム周波数が何よりも重要である*10)。また、最新のデジタルカメラでは、高い解像度とHDR(high dynamic range)で簡単に写真を撮影することができるが、最新のパソコンであればそれらをレンダリングし、表示することが可能だ。
現在、ディープブラックやLEDバックライト、マルチカラーバックライトなどのディスプレイ技術が開発されている。また、カナダのBrightSide Technologies社は、白色LEDとマルチカラーLEDに対するフレームごとの制御技術を開発したという。これらの革新的なディスプレイ技術の進歩によって、視聴者に高品質な映像を提供することが可能になった。
このように、ディスプレイは従来の映像だけを対象とするものではない。また、HDMIバージョン1.3により、システムとディスプレイとの間の接続は、もはや品質上のボトルネックとはならないのである。
■HDMIのDRMが抱える問題
HDMIについて忘れてはならないのはDRMに関する説明だ。HDMIに準拠する機器はすべてDRMも実装しているというのは、よくある誤解である。実際には、HDMIにおいて著作権保護機能のHDCP(high bandwidth digital content protection)のサポートはオプションであった。DVIにおいてもこれはオプションで、DVI-HDCPという形式で提供されていた。
このHDCPを機器に実装するには、その分のロイヤルティをHDCPの知的財産所有者に対して支払わなくてはならない。
HDMIの規格立案者(日立製作所、松下電器産業、東芝、ソニー、米Thomson社、Silicon Image社、オランダのRoyal Philips Electronics社)は、DVIの欠点を認識し、厳格な検証プロセス(HDMIのコンプライアンステスト)を確立したが、オプションであるHDCPはこの検証には含まれてこなかった。そのため、消費者が抱えるHDMI関連の問題の多くがHDCPに起因するものであるという事実は、当然の結果かもしれない。
民生機器のアクセサリメーカーである米Monster Cable Products社は、HDMIの問題点とHDCPとの関係についてあからさまに酷評している。例えば、消費者の多くが抱く不満は、HDMI対応のDVDプレーヤとディスプレイを直接接続すると正しく動作するのに、間にオーディオ機器やビデオ中継器/セレクタが存在する場合には、DVDプレーヤとディスプレイとの間で通信が行えないというものである。
また、定められた順序で電源を入れなければ複数の機器を正しく動作させられないという問題もある。さらに、ディスプレイをあるビデオ送信機器からいったん切り離して再度接続した場合に、前の安定した動作状態に戻すことができないといった点に、消費者は不満を抱いている。
これらの問題はすべて、HDCPの「ハンドシェイク」が中断することによって発生する。これは本来、HDMIの送信機器とディスプレイの間で連続的であるはずのものだ。ビデオ送信機器がその中断をDRM違反と見誤って、出力を無効にするのである。
そのほかに、DRMが正常に機能する場合でも、DVIやHDMI対応のビデオ送信機器が工場でデジタル出力を無効にした状態で出荷されることに起因する問題がある。製品の購入者は、まずアナログ接続を介してこれらをディスプレイに接続し、設定メニューでデジタル出力を有効にし、それからデジタルビデオインターフェースで再接続する必要があるのだ。
Monster社によれば、「このような煩雑さに対して消費者は落胆し、接続をあきらめてしまうだろう。その結果、ケーブルや機器を購入した店に返品して返金を求めることになる」という。これはメーカー、小売業者、消費者のいずれにとっても何の得にもならない状況である。
脚注
※10…Dipert, Brian, "Got game? Living-room consoles grapple for consumers' eyes, wallets," EDN, Dec 16, 2005, p.51., http://www.edn.com/article/CA6290451
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