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ビデオインターフェース最前線DVI、HDMI、DisplayPort、UDI――各仕様の特徴と問題点を解き明かす(4/5 ページ)

地上放送などに代表されるコンテンツのデジタル化に伴い、ビデオインターフェースのデジタル化が進んでいる。このデジタルビデオインターフェースのデファクトスタンダードを狙い、HDMI、DisplayPortなどの規格が争っている。これらの規格の特徴とそれぞれが抱える課題をまとめることで、次期ビデオインターフェースでいずれの規格が主導権を握るのか占ってみたい。

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DisplayPort――パケット化により高い柔軟性を備えたHDMIの対抗馬

 エレクトロニクス業界では長い間、標準化団体が定めた規格と、個々の企業、あるいはいくつかの企業が集まって結成された小規模な団体による事実上の標準のうち、どちらを選択すべきかということに悩まされてきた。最近の例としては、HDMIとここで取り上げるDisplayPortとの間のシェア獲得に向けた競争が挙げられる。

■DisplayPortの概要

 VESAがDisplayPort規格のバージョン1.0を承認したのは2006年5月のことだが、筆者はもう何年も前にIntel Developer Forumで、その前身である米IBM社の「Digital Packet Video Link」のデモを見ている。

 Digital Packet Video Linkの名前が示すように、DisplayPortは、DVIやHDMIなどのRaw形式のビデオストリーミング技術は採用せず、インターネットによく見られるような映像、音声、および制御情報をパケットにまとめる方法をとっている。

 DisplayPortのメインリンクは、1つ、2つ、または4つの二重終端差動信号ペア(ペアレーン)から構成される。専用のクロック信号は持たず、代わりに8B/10B符号化データストリームにクロックが埋め込まれている(図4)。ACカップリングにより、DisplayPortのトランスミッタとレシーバは異なるコモンモード電圧で動作することが可能である。従って、送信機器と受信機器のデバイスを、異なる半導体プロセスで製造することが可能になる。

 DisplayPortのバージョン1.0は、2つの伝送速度を定めている。1つはペアレーン当たりの帯域幅が270Mバイト/秒、もう1つは、ペアレーン当たりの帯域幅が162Mバイト/秒である。この差動信号を用いたメインリンクは高速であるだけでなく、HDMIと同様に単一方向で、(具体的な値は示されていないが)遅延が小さいとされている。

 また、HDMIと違い伝送速度とピクセル周波数は独立(アイソレーション)している。従って、ピクセルの深さや解像度、フレーム周波数、および転送ストリーム内の音声データやDRM情報などの付加データの有無ならびにその量は、自由に調整できる。

 例えば、ペアレーン1本で270Mバイト/秒の接続では、1920×1080ピクセルの60フィールド/秒インターレース方式に対し、30ビット/ピクセルで4:4:4 YCbCrの映像ストリームにしたり、1680×1060ピクセルの96フレーム/秒プログレッシブ走査で、18ビット/ピクセルのRGB映像ストリームにしたりすることができる。また、ペアレーン4本のDisplayPort接続ならば、1920×1080ピクセルの96フレーム/秒プログレッシブ走査方式で36ビット/ピクセルの4:4:4 YCbCrの映像ストリーム、1920×1080ピクセルの120フレーム/秒プログレッシブ走査で24ビット/ピクセルの4:2:2 YCbCrの映像ストリーム、または2560×1536ピクセルの60フレーム/秒プログレッシブ走査で30ビット/ピクセルのRGB映像ストリームなどを実現することができる。

 このようにDisplayPortでは、メインリンクのペアレーン数、映像信号、音声信号、DRMの適用といった面で、数え切れないほどの組み合わせが可能である。このメインリンクとは別に、帯域幅1Mビット/秒、最大遅延500msの半二重双方向の補助チャンネルがある。この双方向通信によって送信機器と受信先との間のハンドシェイク、ならびに送信機器と受信機器との間で互いの機能に関する情報交換を行う。ホットプラグ検知は接続先が変更されたことを検出するために備えている。

図4 DisplayPortの概念図
図4 DisplayPortの概念図 DisplayPortは、映像や音声、そのほかの情報を送信機器から受信機器へ転送する手段としてパケット方式を採用している。外部チャンネルが送信機器と受信機器の間の通信を行い、ホットプラグ検知が接続を検出する。

■DisplayPortの問題点

 筆者は米国オレゴン州で開催された「2005 SID(society for information display) ADEAC(Americas display engineering and applications conference)」で、DisplayPortに関する詳細な技術説明を聞いた。当時、同規格はまだ草案の段階であった。だが、より最近になって、カリフォルニア州で開催された「SMPTE(society of motion picture and television engineers) Technical Conference and Exhibition」で行われた発表を通し、DisplayPortに対するきちんとした業界サポートがあまり存在しないことが分かり驚いた。

 多くの企業が、DVIやHDMIをサポートするためにロイヤルティを支払うのは終わりにしたいと考えている。そのために、彼らはDisplayPort規格を採用するというプレスリリースを喜んで発表する。しかし、本稿の執筆時点で、DisplayPortチップを実際に発表したのは米Analogix Semiconductor社のみである。

 つい最近まで、DRMに関しても、HDMI、DVI、DisplayPortの間には相違があった。DisplayPortは当初、Philips社が開発した知名度の低いDRM技術である「Certicom」をオプションで実装する予定であった。一方でHDMIやDVIは、10年近く前から実現され、ハリウッドの映画業界など、大規模なコンテンツ著作権所有者らによる大きな後ろ盾を持つHDCPをサポートしている。2006年11月の初めに、VESAはDisplayPort規格の次期バージョン1.1にHDCPのサポートを追加すると発表した。おそらく、その背景にはこの事実があったのだろう。

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