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オペアンプ設計の要諦をつかむ(4/5 ページ)

オペアンプの設計では、用途に応じてさまざまな特性を実現しなければならない。しかし、何を目標とするかにかかわらず、共通に留意すべき事柄もいくつかある。本稿では、そうしたポイントをピックアップし、設計を進める上で指針となる「考え方」を提示する。

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差動入力段のDCゲイン

 続いて、gmとも関係があるので差動入力段のDCゲインについて述べておこう。差動入力段のゲインは、次段以降の入力インピーダンスが無限大であると仮定しても、おのずとある有限の値になる。その最も大きな要因は、入力トランジスタ自身の出力インピーダンスにある。

 オペアンプのゲインAvは、以下のように表すことができる。


 ここでRoは、次段(ゲイン段)の入力インピーダンス、カレントミラー回路(ターンアラウンド回路)の出力インピーダンス、入力トランジスタ自身の出力インピーダンスの3つを並列に合成したものとなる。入力トランジスタ自身の出力インピーダンスに比べて残り2つは比較的大きいので無視すると、入力トランジスタ自身の出力インピーダンスroがほぼRoとなる。

 ACゲインはオペアンプが内蔵する位相補償容量に依存するが、DCゲインを上げたければ、上式からgmを増大させればよいように思える。従って、Icを増やせばDCゲインが上がるかといえばそうではない。シミュレーションを実施すればすぐ分かることだが、Icを2倍にすればAvが6dB向上するというものではないのだ。なぜなら、Icを増やすとRoも小さくなるからである。そのため、Icを増やしてもゲインは変わらないか、場合によっては下がることもある。

 上の説明では、カレントミラー回路の出力インピーダンスは無視したが、これについては、エミッタ抵抗REによって出力インピーダンスが高くなるので考慮しなくてよい。例えばRE=2000ΩでIcが100μA、温度が300Kでアーリー電圧が100Vの場合、その値は以下のようになって無視できることが分かる。

 また、次段の入力インピーダンスについては、ゲイン段ではエミッタフォロアによって信号を受けるため、通常、その入力インピーダンスはIc=100μAの入力トランジスタの出力インピーダンスよりも大きくなる。

簡易オペアンプテスター

 ここでは、オペアンプを簡単にテストする方法を紹介しておく。図Aに示す簡易オペアンプテスターは、基本的に最も一般的な差動入力、シングルエンド出力タイプのオペアンプに適用することができる。簡易とはいうものの、実は高価な自動試験装置(ATE)でもこれと同じ原理が使われている。

図A 簡易オペアンプテスターの構成図
図A 簡易オペアンプテスターの構成図

 このテスターを用いれば、可変DC電源とDVM(digital volt meter)を用意するだけで、ほとんどの基本的なDCパラメータを容易に測定できる。例えば、入力オフセット電圧Vos1であれば、SW1とSW2を閉じてVoutの値を読むことで測定可能である。また、最大出力電圧Vomaxについては、Vinを徐々に上げて(または下げて)いくと、いずれ入力オフセット電圧Vos1が大きく振れて基準値を超える。そのときのDUT(測定の対象となるオペアンプ)の出力電圧がVomaxとなる。同様に、最大出力電流IomaxはDUTの出力に外部から電流を流し込むか、あるいは小さな値の抵抗を負荷として使って負荷電流を変えていき、Vos1が基準値を超えるときの値から得ることができる。

 それ以外にも、表Aのような項目の測定が行える。

 また、VinにDC電圧を与える代わりに正弦波信号(ただし、10Hz程度まで)を入力することで、オシロスコープを用いて開ループゲインの周波数特性を観測することもできる。オシロスコープのリサージュが開かない範囲で有効な測定が行える。

表A 測定可能な項目とその方法
表A 測定可能な項目とその方法 注)このほかに、最大出力電圧や最大出力電流も測定できる。

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