検索
特集

DC-DCコンバータのEMIノイズPWM方式、ZCS/ZVS方式のノイズ特性を把握する(2/3 ページ)

DC-DCコンバータは、その方式によってノイズ特性が異なる。特に低ノイズであることが求められる用途では、製品を適切に選択するために、方式ごとのノイズの発生原理と特性の差異を理解しておかなければならない。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

ノイズ特性の違い

 図1は、PWM、ZCS/ZVSコンバータのスイッチング素子を流れる電流波形を表している。ZCS/ZVSコンバータでは、パルス幅、つまりはオン時間T1が固定されており、繰り返し速度、すなわち周期T2が変動する。一方、PWMコンバータはその逆であり、繰り返し周波数が固定で、パルス幅が変動する。立ち上がり/降下時間T3は両方ともに固定である。図1のように、ZCS/ZVSコンバータでは電流波形が実質的に半波整流正弦波であるため、立ち上がり/降下エッジによる高周波成分が発生しない。


図1 PWMコンバータとZCS/ZVSコンバータの電流波形
図1 PWMコンバータとZCS/ZVSコンバータの電流波形

 PWMコンバータの信号波形の周波数分布は図2(a)のようになる。一方、ZCS/ZVSコンバータのそれは図2(b)のようになる。PWMコンバータのほうは、高調波の振幅が大きく、高次まで広く分布している。一方、ZCS/ZVSコンバータでは、高調波の振幅は小さく狭い周波数範囲にスペクトルが集中することになる。

図2 各方式の電流波形の周波数分布
図2 各方式の電流波形の周波数分布 (a)はPWMコンバータの信号波形の周波数特性で、(b)はZCS/ ZVSコンバータの信号波形の周波数特性。縦軸は振幅の相対値を表し、横軸は高調波の次数を表す。波形のスケールは正確ではない。

 PWMコンバータでは、電流変化速度(di/dt)が大きいことから寄生素子が強く励起される。そのため、EMIノイズへの対応が難しくなる。寄生素子の励起により、10MHz〜30MHzくらいの範囲でノイズが発生する。そのノイズがトランスを経由してコモンモードで2次側に結合するので、低減するのが困難なのだ。一方、ZCS/ZVSコンバータの電流波形は立ち上がり/降下のエッジがなく滑らかに遷移する。そのため、寄生素子に起因するノイズが少ない。

 低ノイズが求められる用途で用いるためにDC-DCコンバータのノイズを最小化したいなら、まず第一に、本質的にコモンモードノイズの少ない ZCS/ ZVSのような方式の製品を選択すべきである。逆に、そのような用途には使用すべきでない製品もある。例えば、制御素子が銅板の上に組み立てられているような製品では、1次側電位を基準とする制御素子と2次側電位を基準とする制御素子との間に銅板を挟んで寄生容量が形成され、コモンモードノイズが増大する。

 補足事項だが、EMI規格に制約されない用途であっても、コモンモードノイズを効果的に低減するために、DC-DCコンバータの入力端子と出力端子にはバイパスコンデンサを使用するのが普通である。図3に、バイパスコンデンサのみをフィルタとして使用して、ZCS/ZVSコンバータのノイズを計測した結果を示しておく。

図3 ZCS/ZVSコンバータのノイズ特性
図3 ZCS/ZVSコンバータのノイズ特性 バイパスコンデンサのみをフィルタとして使用した。入力電圧は48V、出力電圧は5V、出力電流は30A。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る