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加速する電源回路のデジタル化ミックスドシグナル制御の使いどころを知る(2/3 ページ)

電源回路の制御処理をデジタル化するニーズが高まっている。だが、そのすべてをデジタル化するのは処理速度やコストの面で現実的ではない。アナログ回路とデジタル回路を適切に組み合わせることで、最良の電源回路を実現できる。

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2次電池の電源システム

 電源におけるデジタル回路の使いどころを示す例として、双方向の給電に対応したDC-DCコンバータ(以下、双方向給電DC-DCコンバータ)を用いた2次電池電源システムを取り上げる(図1)。ここでは、2次電池が4セル直列接続のリチウムイオン電池パックであり、AC-DCコンバータから供給される電圧が7Vであるとする。

図1 双方向給電DC-DCコンバータを用いた2次電池電源システム
図1 双方向給電DC-DCコンバータを用いた2次電池電源システム この構成の双方向給電DC-DCコンバータは、リチウムイオン電池の充電と、リチウムイオン電池からDCバスへの電源供給の役割を果たす。

 双方向給電DC-DCコンバータの役割の1つは、2次電池の充電である。7Vの入力電圧をDC-DCコンバータで昇圧し、電池に入力する電流や電圧を制御することになる。2次電池の充電は発火などの危険を伴うので、高速充電モードなどといったモードごとのプロファイルに従って、高い精度で安定して行わなければならない。

 一般的な充電プロファイルは、いくつかのステージから成る。第1のステージでは、電池パックの電圧を計測し、充電可能範囲にあるかどうかを判定する。過放電した電池パックを高速充電すると電池が破損する恐れがあるためだ。充電可能範囲にあると判断されれば、第2ステージに移る。このステージでは、電源制御システムがプレ充電モードに入り、少ない電流で充電を始める。続く第3ステージでは高速充電モードに入り、多量の定電流で充電を進める。第4ステージは定電圧充電モードとなり、最終ステージでは充電電流が電池パックの定格容量に対して一定の比率になると充電を完了する。

 多くの場合、充電中の電池パックの電圧計測には、A-Dコンバータを利用する。その際、対象がスマート電池パックである場合には、電池内部のマイクロコントローラと通信を行う必要がある。

 双方向給電DC-DCコンバータのもう1つの役割が、2次電池から電源バスに対しての電源供給である。つまり、入力電源である7V電源が供給されない場合に、リチウムイオン電池パックからメインシステム電源用の安定化電圧を供給する必要がある。例えば、メインシステムに対して、電池パック電圧である12V〜16.8Vを双方向給電DC-DCコンバータにより6Vに降圧し、最大電流が15Aで90Wの電力を供給するといった具合である。

 なお、双方向給電DC-DCコンバータのもう1つの役割として、入力電源を供給するAC-DCコンバータが突然停止した場合に、メインシステムの電圧が急激に低下するのを防ぎ、システムリセットが働かないようにするというものもある。

 双方向給電DC-DCコンバータの動作の詳細を見てみると、電池の充電中には双方向給電DC-DCコンバータは昇圧動作を行う。昇圧動作する際には、負荷あるいは電池が外された場合にダメージを防ぐよう過電圧出力に対する保護機能が不可欠だ。また、電池がメインシステム電源として使用される場合には、双方向給電DC-DCコンバータは降圧動作を行う。いずれにしてもスイッチング動作を行うので、500kHz程度の高い周波数を選択して回路の実装面積を縮小することが望ましいだろう。

 このような双方向給電DC-DCコンバータには、ミックスドシグナル設計(mixed signal design)を適用することをお勧めする。

 AC-DCコンバータが接続されて動作しているときには、電源バスの電圧は7Vになる。この7Vの電圧がメインシステムの電源になり、さらに2次電池の充電用電源にもなる。AC-DCコンバータが停止した場合、双方向給電DC-DCコンバータのコントローラが2次電池への充電を停止する。また、同時に電源バスに6Vの電源を供給するために双方向給電DC-DCコンバータの動作を降圧モードに変更する。このような双方向給電DC-DCコンバータは、nチャンネルMOSFETやマイクロコントローラを用いた同期式昇降圧コンバータによって構成される(図2)。

図2 双方向給電DC-DCコンバータの構成
図2 双方向給電DC-DCコンバータの構成 双方向の給電機能は、nチャンネルMOSFETを用いた同期式昇圧/降圧コンバータにより実現する。

 この構成において、マイクロコントローラの役割は、電源バスの電圧測定や、電源バスにAC-DCコンバータから7Vの電圧が供給されていることの確認、電池パックの電圧の計測と充電状態の判定、充電プロファイルに沿った充電制御などである。また、双方向給電DC-DCコンバータには、2次電池への充電中のプログラマブルな電流源としての役割に加え、7Vの電圧が停止した場合の電源として動作する役割がある。

 このような種々の動作は、2つのアナログ制御ループとマイクロコントローラによって結合するミックスドシグナルの電源回路によって実現するとよい(図3)。実際の回路動作を説明すると、充電の際、マイクロコントローラは内蔵するA-Dコンバータを使って電池パックの電圧を測定して各充電ステージの充電電流と充電電圧の制御を行う。電池パックの電圧が最大電圧に達した場合には、充電電流を減少させる。次に充電電流の積分値がパック容量の7%まで達したら充電を完了するといった具合に動作する。

図3 マイクロコントローラ/PWMICを利用した電源回路
図3 マイクロコントローラ/PWMICを利用した電源回路 アナログのPWMICがリチウムイオン電池パックへの充電とリチウムイオン電池パックからDCバスへの電源供給を切り換える。デジタルのマイクロコントローラから供給される基準電流信号とソフトウエアにより制御される10ビットのPWM基準信号により、充電電流を適正なレベルにコントロールする。

 図3において、AC-DCコンバータから7Vの電圧が供給されている場合、電圧アンプ(VAMP)の反転入力端子電圧が非反転入力端子電圧の基準電圧2.5Vを超える値になり、アンプ出力がグラウンドレベルに張り付く。その結果、電圧アンプ出力が仮想的なグラウンドとなり、これと電流アンプ(IAMP)出力の間に分圧回路が構成される。

 AC-DCコンバータからの7Vの電圧が停止した場合、電池パックが放電モードとなり、電流の方向が反転して、電流アンプの非反転入力端子電圧が負になる。これに対し電流アンプの反転入力端子への入力はマイクロコントローラにより生成される正レベルの基準電圧(電流)であるため、電流アンプ出力がローサイドに引かれる。その結果、電流アンプ出力端が仮想的なグラウンドになる。この仮想的なグラウンドを基準として電圧アンプが動作し、電源バスが6Vで安定する。

 このような双方向給電DC-DCコンバータの設計上のポイントの1つは、すべての場合において電源バスが瞬時停止しないようにすることである。この瞬停が発生する最悪条件は、最大電流によって電池を充電している際にAC-DCコンバータからの7V電圧が停止した場合である。この最悪条件では、インダクタに流れる電流は、2次電池に向かっていた2Aが逆方向に切り替わり、電源バスに接続された負荷に向けて流れることになる。その際の遷移速度は、2つのアナログループ間での処理の受け渡しがどの程度の応答時間で行われるかによって決まる。

 設計上のもう1つのポイントは、電池パックが完全に充電された場合の双方向給電DC-DCコンバータの動作だ。電池パックが完全に充電されているならば、充電電流は充電も放電もしない0Aにならなければならない。この条件を実現するには、10ビット以上の分解能で動作するソフトウエア制御が可能なPWM回路によって0Aに十分近い値に充電電流を制御できなければならない。ただし、小さな値の電流検出抵抗を使用すると計測誤差とオフセット誤差の影響が顕著になる。

 この問題については、電池のアイドル電流を校正することにより対処できるだろう。例えば、PWM基準信号を変化させながら電流を計測することによって、電池のアイドル電流値を決定し、校正値として記憶しておく。この校正値を使用して、充電が完了した場合のPWMの設定を決定すればよい。これにより、AC-DCコンバータからの電圧が停止しても問題がない状態になる。

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