「携帯型オシロ」は使い勝手で選べ!:主要4製品を徹底比較(2/4 ページ)
「携帯型オシロスコープはベンチ型オシロスコープの低スペック版にすぎない」――このような従来の常識にとらわれている方も多いのではないか。しかし、実際には最新の携帯型オシロは性能面で大きな進化を遂げている。また、ベンチ型にはない「携帯性」という大きな特徴も備えている。本稿では、携帯型オシロ主要4製品を実際に使用して検証したそれぞれの使い勝手についてリポートする。
4チャンネルの柔軟な入力仕様――AEMC社 OX 7104-C
AEMC社のOX 7104-Cは、市場で唯一、4チャンネルの入力を備える携帯型オシロスコープである。その性能は、分解能が12ビットで帯域幅が100MHzとなっている。また、タッチスクリーンによって操作できるという特徴を備える(図1)。ハイエンドの製品に分類され、価格が5995米ドルと高額である。同じ価格帯のベンチ型オシロスコープが数多く存在するので、携帯性が重要でないならば購入する意味がないかもしれない(AEMC社は3995米ドルで2チャンネル版の「AEMC OX 7102-C」も提供している)。ただし、そうしたベンチ型製品のほとんどは8ビット分解能なので、OX 7104-Cの12ビットという分解能は特筆すべき点である。
■外観の特徴
OX 7104-Cのハードウエアにおける最大の特徴は、専用アダプタ/プローブとタッチスクリーンである。
まず、専用アダプタ/プローブについて紹介すると、同製品の上部には、カスタムコネクタを用いた入力チャンネルが4つ並んでいる。オシロスコープのプローブを接続する際には、付属する専用のプローブ(図2)を用いる。オシロスコープのプローブには先端にライトが付いており、プローブのスイッチでそれをオン/オフできる。機器内などの暗い測定ポイントをプロービングする際に便利だ。また、この専用プローブが接続されると、オシロスコープ本体は接続された事実とプローブのゲインを自動検知する。
オシロスコープのプローブではなく、BNCケーブルを接続したい場合には、専用のBNCジャックアダプタを用いる。また、テスターのプローブやリード線を接続したい場合には、バナナジャックを備えたDMM用アダプタを用いる。そのほかに専用の電流プローブも備えている。
このように、アダプタ/プローブを変更できるようになっていることは、非常に便利な特徴である。なぜなら、ユーザーがアダプタ/プローブを選択することによって、個々の入力チャンネルに対する入力方式を自由に決定できるからだ。言い換えると、ユーザーは入力チャンネルの用途を自由に決定することができるのである。この柔軟性は今回評価したほかの3製品にはない特徴である。ほかの3製品は2チャンネルのオシロスコープ入力と1チャンネルのDMM入力を備えるが、それらの用途は固定されており構成を変更することはできない。
ユーザーインターフェースを見てみると、本体にはボタンが整然と並んでいる。しかし、これらのボタンを使用せずにタッチスクリーンとタッチペンで操作することもできる。例えば、チャンネルの設定を変更する方法には、タッチスクリーン上でチャンネルの色の付いたボックスをタップするか、メニューボタンを押すかの2通りがある。このタッチスクリーンを搭載することも、ほかの3製品にない特徴である。
ACアダプタは重量が450gもあり、外形も大きい。とはいえ、オシロ本体が2次電池を内蔵しているので、充電さえしておけば、重いACアダプタを持ち運ぶ必要はない。
図2 OX7104-Cに付属するオシロスコープ/DMM専用プローブ OX7104-Cは、カスタムコネクタにアダプタ/プローブを接続することによってチャンネルの用途を自由に変更することができる。また、オシロスコープのプローブ(右)は、先端にライトを備えている。
■測定機能の特徴
OX 7104-Cは、40Hz〜450Hzの周波数に対応するハーモニックアナライザを備えている。これは電力品質解析向けに設計されたものである。この機能を試してみたところ、低電圧においては5kHzまで信頼性の高い測定結果を得ることができた。具体的には、正弦波を入力してハーモニックアナライザを実行したところ、基本波成分のみが観測できた。また、方形波を入力した場合には、奇数次の高調波成分が観測できた。
このハーモニックアナライザの画面には、30次までの高調波成分が表示される。また、各成分の下にチェックボックスが表示され、それをタップすると、その高調波の振幅と位相情報が表示される。加えて、それらの信号の実効値と全高調波歪(ひずみ)率を表示することも可能だ。
■パソコンとの連携機能
付属するパソコン用ソフトウエア「SX-Metro」を用いると、OX 7104-Cからパソコンへのデータの移動やオシロスコープのリモート操作が可能になる。
パソコンとの接続には、RS-232Cとイーサーネットの2通りの方法が存在する。まず、RS-232Cを用いた接続を評価した。その結果、パソコンはすぐにオシロスコープを認識することができた。一方のイーサーネットを用いた接続では、RS-232Cのように簡単に接続を確立することはできなかった。接続を確立するためには、まず、SX-Metroの「オプション」メニューを開き、オシロスコープのアドレスに合わせてIP(internet protocol)アドレスを設定する必要があった。また、認識後も通信エラーが継続して生じたので、このソフトウエアの評価は、RS-232Cによる接続を用いて行うことにした。
画面イメージをパソコンに送信する場合、オシロスコープのファイルマネジャを使用する必要がある。その使用方法は複雑であるため、操作を理解するのに数度の試行を要した。
また、通信ケーブルを本体のコネクタに挿入するのも困難であった。ケーブルを挿入するには、コネクタのリリースボタンを押さなければならなかったり、確実に接続するためにコネクタを揺り動かしたりする必要があるのだ。さらに、あまり強く押すとコネクタを破損させてしまいそうだ。
通信コネクタと電源コネクタにはカバーが付いている。これらは簡単に取れてしまうが、装置とカバーがつながっているため紛失する心配はない。
■総評
OX 7104-Cは非常に高機能な製品である。特にベンチ型オシロスコープに匹敵する帯域幅/分解能を備えることと、4つの入力チャンネルをオシロスコープやDMMなどの用途に自由に利用できることが評価できる。しかし、パソコンとの通信にはハードウエアとソフトウエアの両面で問題がある。また、その価格がかなり高価である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.