「携帯型オシロ」は使い勝手で選べ!:主要4製品を徹底比較(3/4 ページ)
「携帯型オシロスコープはベンチ型オシロスコープの低スペック版にすぎない」――このような従来の常識にとらわれている方も多いのではないか。しかし、実際には最新の携帯型オシロは性能面で大きな進化を遂げている。また、ベンチ型にはない「携帯性」という大きな特徴も備えている。本稿では、携帯型オシロ主要4製品を実際に使用して検証したそれぞれの使い勝手についてリポートする。
高度な記録機能と左利き対応――Fluke社 199C ScopeMeter
Fluke社は携帯型オシロスコープの先駆者的存在である。その最新版である199Cは、初期のScopeMeterよりもかなり進化している。価格は、AEMC社OX 7104-Cの約半分で、Agilent社のU1604AとPROTEK社の860Fの2倍弱である。性能は、帯域幅が200MHzで、サンプリングレートが最大2.5ギガサンプル/秒となっている。
■外観の特徴
外観の特徴から紹介すると、表示画面は今回取り上げた4製品の中で最も大きい(図3)。屋内で使用する場合であれば、はっきりと見える。だが、屋外で使用する場合には、プラスチック製の透過板の光沢が強いため、反射によって表示画像がはっきり見えない。
4製品の中で最も堅牢であることと、ハンドストラップ/ハングストラップを備えていることが大きな特徴だと言える。ハンドストラップは、オシロスコープ本体の左側に付いているが、これを右側に移動させることもできる。つまり、評価した4製品中で唯一、左利きのユーザーに対応していると言える。ただし、ハンドストラップを移動すると、右側に備え付けられている光通信ポートをふさいでしまうという問題がある。ハングストラップは、オシロスコープ本体を何かにぶら下げて使用することを可能にする。これも4製品の中で同製品だけが備える特徴である。
ユーザーインターフェースは、同社従来品よりもずっと使用しやすいものとなっている。画面に表示される4つのソフトウエアキーは、互いの距離がやや近すぎるものの、整然と並んでおり、ボタンと画面上のソフトウエアキーの対応が直感的に理解できる。
■測定機能の特徴
199Cには、「Zoom」と「Replay」の2つのボタンがある。Zoomボタンを押すと、時間分解能(time/div)が半分になり波形が拡大表示される。一方のReplayボタンを使えば、過去に表示された100画面を瞬時に表示することができる。ただし注意しなければならないのは、Replay機能を一度使用して終了すると、新たな100画面の記録が開始され、それ以前の画面データが失われてしまうことだ。
同製品が備える記録機能は、ほかの3製品と比較して高度なものだと言える。「トレンドプロット」と「スコープレコード」、「DMMレコーダ」の3つのモードが用意されている。これらのうち、トレンドプロットを使えば、オシロスコープのプロットから、ピークツーピーク電圧やAC電圧、立ち上がり時間、周波数などを解析しその結果を記録することができる。スコープレコードは、装置の内部メモリーにオシロスコープのモードで測定した長大なデータ列を保存するというものだ。DMMレコーダは、DMMにより測定したデータを保存する機能であり、その保存データをグラフ化することもできる。
これらの記録機能では、メモリーがいっぱいになるまでデータを記録し、その後データを圧縮して半分のメモリー領域を空けるという動作が行われる。このことによって、装置が備えるメモリー容量の2倍のデータを保存できる。また、1入力当たり保存可能なデータ数は2万7000個である。さらに、メモリーがいっぱいになったら記録を停止するといった動作の設定も行える。
任意波形発生器を用いて信号の振幅や周波数を変化させ、それを199Cに入力して実効値のトレンドプロットを試してみた。その結果、信号の変化を容易にグラフ化することができた。この機能により、信号の長期的な変化を観測することができるだろう。
■パソコンとの連携機能
オプションのパソコン用ソフトウエア「FlukeView」を用いれば、パソコンとオシロスコープ本体を接続して画面のスナップショットを保存することができる。ただし、パソコン側でオシロスコープの表示画面をリアルタイムに得ることはできない。
また、FlukeViewの「Instrument」メニューを用いれば、本体をリモート制御することも可能である。例えば、オシロスコープやDMM、記録などのモードをパソコン側から変更したり、測定用の設定をパソコン側に記憶させたりすることも可能だ。加えて、DMMによって測定したデータをリアルタイムに取得し、パソコンにそのデータを記録することもできる。さらに、波形をパソコン側にダウンロードしてその波形の周波数スペクトラムを解析することも可能である(199C本体は、スペクトラム解析の機能を備えていない)。
■総評
199Cは4製品の中で最も堅牢で高性能な携帯型オシロスコープである。特に、左利きの人にとっては便利な製品であろう。また、ハングストラップが付いているため、測定の際に両手がふさがってしまうような用途にはもってこいだ。パソコン用ソフトウエアは、測定後にパソコン側で解析する用途に適したものとなっている。唯一の欠点は、屋外で使用すると反射光によって表示画面が見にくいことだ。
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