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RFノイズの侵入を阻め!イミュニティを高める設計技法(1/5 ページ)

携帯電話は電波をやりとりする代表的なシステムである。これが電磁波ノイズの原因となることは容易に想像がつく。しかし、実際にはインバータ方式の蛍光灯といった機器ですら、ほかの電子機器を誤動作させる電磁波ノイズの発生源となり得る。本稿では、RFノイズによって電子機器にどのような症状が起きるのか、またノイズ耐性(イミュニティ)を高める手法はどのようなものになるのかを解説する。

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人身事故の原因にも

 電子機器は常にRFノイズ(無線周波数帯域の電磁波ノイズ)にさらされている。その発生源には、テレビ/ラジオ放送やレーダーなど、意図的に電磁波を放出しているものや、機器自体が動作することによって意図せず生じさせているものがある。また、RFノイズの中には、電力が大きく、スピーカのボイスコイルに電圧を誘起して人の耳に聞こえる雑音を発生するものもある。

 オーディオ機器に害を与える程度のノイズならば、エンドユーザーを不快にさせる程度で済むこともあるだろう。しかし、工作機械や航空機の計器などの誤動作を引き起こすものであれば、人身事故のような重大な問題につながりかねない。

 そのような事故を未然に防ぐために、EU(欧州連合)や米国では地域内で販売される製品に対して、機器からのRFI(radio frequency interference:無線周波数妨害)/EMI(electro magnetic interference:電磁波妨害)や外部からのノイズを受けて誤動作するEMS(electro magnetic susceptibility:電磁感受性)に関する法規制が制定されている。EUでは10年以上前にCE(conformite europeenne)イミュニティコンプライアンス試験規格が制定された。この規格の厳しさは、その制定後にEMS対策の技術者に認識され、FCC(Federal Communications Commission:米国連邦通信委員会)が定める規格よりも満足するのが困難だと評価された。

 多くの場合、技術者は設計の後工程でEMS対策を行う。このような技術者の意識について、米Microchip Technology社のテクニカルエンジニアであるSteve Bible氏は、「技術者というものは自身に火の粉が降りかからない限りその問題点を認識しない傾向にある。しかし、その問題に気が付いたときには、大抵の場合、危機的状況にある。つまり、設計に誤りがあったとしても、問題が生じない限りその誤りに気付くこと自体が容易ではないのだ」と指摘した。続けて「後でそれに気が付き、その特効薬を探そうとしても、問題の解決は非常に困難だ」(同氏)とし、事前に対策を行うことの重要性を説いた。

電磁環境を知る

 事前の対策によって外部からのRFI/EMIに対する高い耐性(immunity:イミュニティ)を得るには、まず、設計の対象となる機器がどのような電磁環境にさらされるのかを理解することが重要である。例えば、家庭用の電力送電設備は50Hzか60Hzの電磁波を放射する。同様に、腕時計の水晶発振器は32kHz、蛍光灯のインバータは40kHz、通路照明用のセンサーは50kHz〜100kHzの電磁波の放射源となる。また、RF帯域では、FCCの規定で無線局と見なされるテレビ/ラジオの放送局や、公的/アマチュア/軍用など種々の無線局、携帯電話機、無線LANなどの放射源が存在する。さらに高い周波数では、レーダーシステムや特殊軍用システムなどに使用されるマイクロ波、宇宙線がノイズ源となる*1)

 このような多種多様な電磁波に対する対策/サポートの難しさを、米Analog Devices社で高精度アナログ製品部門のディレクタを務めるSteve Sockolov氏は次のように説明した。

 「RFノイズの感受性に起因する問題に対してユーザーサポートを行うのは容易なことではない。なぜなら、オペアンプをはじめとする部品の配置方法はあまりにも多岐にわたり、また、それが稼働する電磁環境も多様だからである。さらに、RFノイズの中には、特定周波数のものだけでなく、連続スペクトラムとして現われるものもある」。

 その上で、同氏は、「RFノイズに対する当社のアプローチの1つは、センサー用オペアンプ『AD8556』に見て取れる。この製品の機能は『AD8555』と同じだが、あらかじめRFI対策用のフィルタを入力端子や基準信号端子、クランプ端子などに組み込んでいる。これらのフィルタによって、広帯域にわたるRFノイズが侵入するのを抑えている」とIC側での対応を紹介した。

 実際には、すべてのRFノイズが機器の誤動作の原因になるわけではない。上述した腕時計用の水晶発振器から出力される電磁波は、周波数が低く、レベルが微弱である。そのため、この電磁波は必ずしも重大なノイズ源というわけではない。同様にそのほかのRFノイズも常に対策が必要なものというわけではない。電磁環境を把握し、何が問題となり得るのかを判別することも必要である。


脚注

※1…『フェムトオーダーの電流測定に挑む』(Paul Rako、EDN Japan 2007年8月号、p.38)


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