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磁気センサー活用への第一歩用途に最適な製品を選択するために(3/5 ページ)

「磁気センサー」には、いくつもの実現方式があり、それぞれに長所/短所が存在する。呼び方だけ見ても、ガウスメーター、テスラメーター、磁束計、磁力計などさまざまだ。しかも、数米ドルから数万米ドルまでと、価格帯の幅も広い。では、多くの選択肢の中から、用途に最適な製品を的確に選択するには何を理解しておけばよいのか。本稿では、こうした観点から、磁気センサーに関する基本的な情報を整理して提供する。

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誘導型センサー

 ここまでに紹介したように、磁気測定の用途は広い分野にまたがっている。当然、それぞれの用途に適した磁気センサーの種類は異なり、適切な選択が不可欠だ(図2*6)。ここからは、各種磁気センサーの原理、それぞれの特徴などについてまとめた上で、代表的な製品を紹介していこう。


図2 各種磁気センサーの感度の範囲(提供:Honeywell社)
図2 各種磁気センサーの感度の範囲(提供:Honeywell社) センサーの種類によって感度、応答範囲に数桁の違いがある。

 最初に取り上げるのは誘導型センサーである。これは最も基本的な磁気センサーだと言える。誘導型センサーは磁気コアにコイル(サーチコイル)を巻いた構造を成し、コイルと交わる磁束が変化すると、コイルの両端に電圧が誘起される(電磁誘導)ことで機能する。このタイプのセンサーが検出できる磁界はACであり、DC磁界は計測できない。その一方で、少しの変更を加えることでAC電界の検出にも利用可能である。検出できるAC磁界の上限周波数は磁気コアの特性によって決まる。

 誘導型センサーは低価格のガウスメーターによく使用されている。健康管理機器の分野が大きな市場である。

写真2 誘導型センサーの例(提供:AlphaLab社)
写真2 誘導型センサーの例(提供:AlphaLab社) 誘導型磁気センサーではAC磁界しか測定できない。

■製品の例

 誘導型センサーは安価であり、300米ドル程度で販売されている(写真2)。AC磁界の計測に用いられ、電力線やモーターが発生する磁界を測定できる。また、配線に断線があるとそこで磁界が不連続になるので、断線個所の検出にも利用可能だ。また1軸用のものと3軸用のものがある。

 製品の例を挙げると、米Sypris Test&Measurement社(以下、Sypris社)から25Hz以上のAC磁界を3軸で測定できる「4100シリーズ」が供給されている。このシリーズの製品である「4180」の価格は324米ドルとなっている。

ホール効果型センサー

 誘導型センサーには、DC磁界を測定できないという大きな欠点がある。一方、この欠点を持たない代表的なものがホール効果型センサーである。ホール効果とは、半導体に電流を流し、それに直交する向きに磁界を印加すると、電流と磁界の両方に直交する起電力が発生する現象のことだ。ホール素子からの出力は磁界の強度に比例する。これをセンサー素子に利用したものがホール効果型センサーである。

 ホール効果型センサーは1軸方向にしか働かないが、3個のセンサーを組み合わせることで3軸の測定に対応した製品も供給されている。この3軸センサーは、地磁気の測定に利用できる。

 ホール効果型センサーの弱点は正確さに欠けることである。この弱点は、経時変化や温度変化によって特性が変動しやすいことに起因する。後述する核磁気共鳴型センサーは、この種の特性変動が小さい。そのため、ユーザーによっては、特性変動の対策として、数台程度の低価格なホール効果型センサーに対して1台の割合で核磁気共鳴型センサーを用意し、ホール効果型センサーの校正に使用している。

■製品の例

写真3 卓上型ガウスメーターの例(提供:Sypris社)
写真3 卓上型ガウスメーターの例(提供:Sypris社) 1軸用のDCガウスメーター「6100」(Sypris社製)。±0.25%のDC精度を実現している。

 ホール効果型センサーは融通性が高く応用範囲も広い。製品の価格は、1軸用では500〜800米ドル、3軸用だと1000米ドルを超える。Sypris社の「5100シリーズ」はDC磁界、または20kHzまでのAC磁界を1G〜20kGの範囲で測定でき、精度は2%である。同シリーズの「5180」であれば、周波数は30kHzまで、磁界範囲は30kGまで、精度は1.1%という値を実現している。同製品は、ピークホールド機能を持ち、アナログ出力とUSBインターフェースを備える。価格は1325米ドルだが、985米ドルの「5170」などもある。

 Sypris社は卓上用センサーも供給している。ガウスメーターの「6010」(写真3)は価格が2492米ドル、ガウスメーター/テスラメーターの「7010」は4365米ドルである。7010は精度(DC測定時)が±0.25%で、磁束密度、周波数、温度、最小/最大値、プラス/マイナスのピーク値などを同時に測定/表示できる。3軸用としては「7030」があり、価格は6864米ドルである。

写真4 DC磁力計とセンサープローブの例(提供:AlphaLab社)
写真4 DC磁力計とセンサープローブの例(提供:AlphaLab社) このセンサープローブは直線状で用いるほか、L字型に曲げた状態でも使用できる。1000回曲げても破損しない。

 写真4に示すAlphaLab社のDC磁力センサー/センサープローブは価格が380米ドル。10kGまで測定でき、精度は周囲温度が華氏30〜110度(−1.1〜43.3℃)の範囲でDC/AC磁界に対して±2%である。測定ユニットは擬似実効値を出力し、45Hz〜2kHzの範囲に対応できる。NIST(National Institute of Standards and Technology:米国技術標準局)基準に準拠した校正が行われている。

 そのほかのホール効果型センサーとしては、RS-232C経由でパソコンに接続できるガウスメーター「VGM01」がある(米Hirst Magnetic Instruments社製)。また、スイスMetrolab社は3個のホール効果素子を1個のICに組み込んだ3軸用センサープローブ「THM1176」を供給している(写真5)。THM1176は、周波数範囲がDC〜1kHz、強度範囲が0〜20Tの磁界を3軸で測定でき、大きさは193.54mm3。また、USBインターフェースを備え、PDA端末に測定結果を表示することが可能だ(PDA端末はオプション)。同製品、PDA端末、ソフトウエアはGMW Associates社から入手できる。

写真5 ホール効果型の3軸センサープローブ(提供:GMWAssociates社)
写真5 ホール効果型の3軸センサープローブ(提供:GMWAssociates社) USB経由で、センサー出力(測定値)をPDA端末に表示することができる。

 ドイツChen Yang Technologies社の「CYHT-201」もホール効果型センサーであり、DC/AC磁界の測定が行える。精度はDC〜200kHzの範囲で±5%で、測定値は4.5桁の液晶ディスプレイに表示される。

 米Tel-Atomic社はハンドヘルド型のホール効果型テスラメーター「TeslaMeter 2000」を供給している。価格はトランスバースプローブを含めて719米ドルである。精度はDC測定で±0.5%、AC測定で±2%。このほかに、同社は150米ドルのアキシャルプローブも提供しており、3軸用プローブも開発中である。

 米Lake Shore Cryotronics社はハンドヘルド型ガウスメーター「410」を供給している。測定範囲は0.1G〜20kG(0.01mT〜2T)、分解能は100mG、精度はフルスケールに対してDCで±0.1%、ACで±5%、周波数範囲は10kHzまでとなっている。ピークホールド機能や、フィルタ処理機能、相対値表示、ゼロ点表示、警報音発生などの付加機能を備える。

 より小型な製品としては、米Carlsen Melton社の「GM-200A」が329米ドルで入手できる。同製品を使えば、10kGまでの磁界を精度2%、分解能1Gで測定可能である。なお、校正証明を入手するには50米ドルを要する。

 ハイエンドのホール効果型センサーとしては、ニュージーランドGroup3 Technology社のテスラメーター「DTM-151」がある。価格は4390米ドルで、DCおよび周波数の低いAC測定に対応する。精度はフルスケールの±0.01%、分解能は20ビットである。同社は、これよりやや低価格な「DTM-133」も供給しており、その価格は2380米ドル。リニアリティ補償機能を備え、精度は0.03%、分解能は最大10ppm、温度安定性は100ppm/℃である。これら2製品はGMW Associates社が販売している。


脚注

※6…Caruso, Michael J; Tamara Bratland; Carl H Smith, PhD; and Robert Schneider, "A New Perspective on Magnetic Field Sensing," Honeywell Inc, May 1998


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