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逆風下も会場は活況、電動自動車関連技術も多数第1回 国際カーエレクトロニクス技術展(2/2 ページ)

カーレクトロニクス関連技術の専門展示会として、『第1回国際カーエレクトロニクス技術展』が、2009年1月28日から30日まで東京ビッグサイトで開催された。自動車と電機、いずれの業界も不況にあえぐ中、逆風と言ってよい環境下での開催ではあったものの、会場は活況を示した。

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ITSに対応する開発ツール

 車載システムの開発ツールの展示も多数行われた。

 ベクター・ジャパンは、車載LANの開発ツール「CANoe/CANalyzer」の新オプションである「CANoe/CANalyzer.IP」を発表した。従来の、CANoe/CANalyzerでは、CAN(Controller Area Network)をはじめ、リアルタイム性と安全性を優先した車載LANへの対応が中心だった。それに対し、新オプションを使えば、インターネットなどに用いられているイーサーネットベースのIP(Internet Protocol)通信に対応できるようになる。


写真7「CANoe/CANalyzer.IP」のデモンストレーション
写真7 「CANoe/CANalyzer.IP」のデモンストレーション 右下の折り畳んだノート型パソコンが、自動車を模したものとして機能している(右上のディスプレイに状態が表示されている)。中央のノート型パソコンは右下のノート型パソコンとCANで通信している。また、左下の折り畳んだノート型パソコンとはWi-Fiで通信しており、左上のディスプレイ(左下のノート型パソコンの画面)に車速やエンジン回転数などをリアルタイムで表示している。

 「車車間、路車間など、自動車と車外で双方向通信することでさまざまな機能を実現するITS(高度道路交通システム)では、IP通信を利用することになる」(ベクター・ジャパン)という。展示では、CANネットワークを搭載した自動車、その自動車とCANで接続した無線ゲートウエイ、無線ゲートウエイとIP通信を行って自動車の状態をモニターするパソコンを、3台のノート型パソコンを使って仮想的に見せるデモンストレーションを行った(写真7)。


写真8車載用OSモジュール「AXE-AUTOSAR」を実装したルネサステクノロジ製の評価ボード
写真8 車載用OSモジュール「AXE-AUTOSAR」を実装したルネサステクノロジ製の評価ボード

 アックスは、欧州の車載ソフトウエアの標準規格であるAUTOSARのリリース3.0に準拠した車載用OSモジュール「AXE-AUTOSAR」と、そのOSモジュールを実装したルネサス テクノロジ製の評価ボード(「SH72546」を搭載する)を展示した(写真8)。AXE-AUTOSARは、AUTOSARに準拠することに加えて、国内の車載ソフトウエアの標準化団体JasParが推奨している、AUTOSARを利用する際のガイドラインにも沿っている。また、割り込みサービスルーチンやタスクの実行時間を制限するタイミング保護機構、一連の処理を静的に定義されたそれぞれのタイミングで順次実行するスケジュールテーブル機構などをサポートしている。


写真9 PT-LABCARのデモンストレーション
写真9 PT-LABCARのデモンストレーション 4気筒のガソリンエンジンのシミュレーションを行っている。PT-LABCAR専用の拡張ボードを搭載した汎用のパソコンとECUを接続してシミュレーションを行い、パソコンからのアナログ出力をオシロスコープに表示している。

 イータスは、ガソリン/ディーゼルエンジンの気筒内における燃焼圧シミュレーションをリアルタイムで行える試験システムを展示した。写真9に示したのは、実際に開発した自動車のECUをシミュレーションモデルに接続してループ試験を行う、HILS(Hardware-In-the-Loop Simulation)と呼ばれる試験システムである。同社のHILSシステム「PT-LABCAR」では、米Intel社のマルチコアCPUを使うことで、エンジンの気筒内における燃料爆発の制御に必要な20μs〜50μsの時間精度の高速モデル領域と、吸気/排気系をはじめ0.5ms〜1.5msの時間精度でも十分な低速モデル領域を複数のCPUコアで分担し、両領域の間のタイミング同期をとることができる。「これまで実現できなかった、エンジンシステム全体と気筒内の燃焼圧をリアルタイムに連携させたシミュレーション環境を構築できるようになる」(イータス)という。

新規格MOST150の実力

写真10MOST150による通信のデモンストレーション
写真10 MOST150による通信のデモンストレーション HD/SD映像のリソース、映像をディスプレイに表示するためのメディアボード、イーサーネット通信の入出力ボードを、プラスチック製光ファイバ(POF)によりリング状に接続している。

 最後に、来場者の目を引いた展示をいくつかピックアップして紹介する。

 MOST Cooperation(以下、MOSTCO)は、車載LAN規格のMOST(Media Oriented Systems Transport)を策定している標準化団体である。カーエレ展において、MOSTCOは、最大通信速度が150メガビット/秒の新規格であるMOST150に関する実演展示を行った(写真10)。展示では、MOST150で構築したネットワーク内において、2つのHD(高品位)映像と12のSD(標準品位)映像を同時にストリーミング通信しても、遅延などの問題が起こらないことを示した。さらに、帯域をイーサーネット通信にも割り振っており、ストリーミング通信中でも、MOST150のネットワークに接続したノート型パソコンから外部のインターネットにアクセスすることができる。

写真11「DT018054VD」を搭載した開発ボード
写真11 「DT018054VD」を搭載した開発ボード DT018054VDは、出力インターフェースとしてはITU-RBT.656とYUVに対応する。入力インターフェースは、アナログの車載カメラに対応するためにコンポジット端子を備えている。

 「これだけの数の映像を、非同期である一般的なイーサーネット接続で同時にストリーミングする場合には、ギガビット/秒クラスの通信速度が必要だろう。それに対し、MOST150であれば150メガビット/秒で済む。なお、スペース的な問題がなければ、3つのHD映像、18のSD映像を同時にストリーミング通信するデモンストレーションも可能だった」(MOSTCO)という。


写真12「DT018054VD」を搭載した車載カメラで撮影した映像
写真12 「DT018054VD」を搭載した車載カメラで撮影した映像 画面左側の明るい部分では輝度を抑え、右側の暗い部分では視認性を上げている。

 大日本印刷(以下、DNP)は、画像補正用IC「DT018054シリーズ」の車載カメラ向け新製品「DT018054VD」を搭載した開発ボードを展示した(写真11)。同シリーズは、人間の網膜を模倣した処理を行うアルゴリズムを使用する、英Apical社の画像処理技術を基に開発された。このアルゴリズムでは、1ピクセルごとに補正を行うため、ダイナミックレンジの狭いディスプレイで映像を表示する場合でも、実物のコントラストや色調に近い映像を再現することができる。例えば、「直射日光などの影響で白くなった映像では輝度を抑え、逆に日陰で見えにくい部分の映像ではその部分の視認性を上げることもできる」(DNP)という(写真12)。


写真13「AK2591」を搭載した基板
写真13 「AK2591」を搭載した基板 中央のチップがAK2591。その左上に実装された長方形のモジュールがSAW(SurfaceAcousticWave)フィルタ。2009年秋には、IC内部にSAWフィルタを組み込んだ製品を投入する計画である。

 旭化成エレクトロニクスは、国内の地上デジタル放送(地デジ)用シリコンチューナIC「AK2591」を展示した(写真13)。地デジの受信機能を持つカーナビゲーションシステム向けに展開する。AK2591の最大の特徴は、210mWという少ない消費電力である。「他社製品の400mW〜500mWという値に比べれば、210mWという数値のインパクトが理解できると思う」(旭化成エレクトロニクス)という。


写真14HRVシリーズ(左)とHRXシリーズ(右)
写真14 HRVシリーズ(左)とHRXシリーズ(右) 新シリーズでは、経時劣化の起きにくい材料を使用したり、保証値(検査値)を厳しく設定したりすることで信頼性を向上した。

 ルビコンは、車載用アルミ電解コンデンサの新シリーズ「HRVシリーズ」と「HRXシリーズ」を展示した。(写真14)。HRVシリーズはチップタイプ、HRXシリーズはリードタイプのコンデンサであり、両シリーズとも125℃の温度環境で3000時間の動作が保証されている。特に、従来品では125〜130℃程度となっている最大ジャンクション温度(Tjmax)を、150℃にまで向上した。主に、電動パワーステアリング(EPS)などの低圧パワー回路の用途に向ける。サンプル出荷はすでに開始しており、量産開始は2009年春を予定している。

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