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LED室内灯の開発に役立つ熱流体シミュレーション(1/3 ページ)

全世界的な温室効果ガスの低減に向けた動きに対応して、さまざまな工業分野で環境負荷を低減する製品の開発が進められている。自動車照明の分野でその中心となっているのがLEDである。ハロゲン電球やHID(高輝度放電ランプ)をLEDに置き換えることにより、消費電力の低減や、照明部品の長寿命化による廃棄物量の削減などが期待できる。本稿では、そうしたLED室内灯の開発における熱流体シミュレーションの有用性について解説する。

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熱設計が重要なLED照明

 自動車は、車室内外に多数の照明部品を搭載している。そうした自動車照明部品の光源に、LED化の波が押し寄せている。例えば、ヘッドランプとリアランプには、すでにLED光源が採用されるようになっている。リアランプは、低出力のLEDを使用できることもあって、早い時期から市場に製品が登場していた。そして、自動車照明におけるLED化の波は、室内灯にも押し寄せている。間もなく、ルームランプ、マップランプなどの光源としても普及していくであろう。

 LED照明の課題とされるのが、発光部の温度(ジャンクション温度:Tj)の上昇により起こる性能の低下である。例えば、光束(外部に放出される光の総量)の減少、色温度(発光色)の変化、短寿命化などの現象が挙げられる。こうしたことを防ぐには、自動車の室内灯においても、ほかのLED照明と同様に効果的な冷却が必要となる。

 LED照明を自然空冷する場合、最も安価な放熱機器であるヒートシンクを利用することが多い。しかし、LEDの発熱量、ユニットの配置方法、周囲温度、設置スペースなど、考慮すべきパラメータが多数あるため、その試作回数は増加する傾向にある。

 最近では、試作品の製作回数や実験にかかる工数を低減するために、設計の上流段階から熱流体シミュレーションによる放熱効果の予測が行われるようになっている。かつて、補助的な位置づけでしか利用されなかった熱流体シミュレーションだが、今や基本設計に必須の支援ツールとなった。

 以下、LED室内灯の試作品の評価結果と、熱流体シミュレーションの結果を対比することで、同シミュレーションの有用性を明らかにしたい。

ヒートシンクの最適化

写真1LED室内灯とLEDマップランプユニット
写真1 LED室内灯とLEDマップランプユニット (a)はLED室内灯全体、(b)は室内灯の内部に設置されたLEDマップランプユニット。

 写真1(a)は、試作したLED室内灯である。その内部は、3つの部分に分かれており、中央は電球を使ったルームランプ、左右がLED光源を採用したマップランプとなっている(写真1(b))。マップランプは光の照射範囲が狭いので、自動車照明としては比較的出力の低い白色LEDが使用される。発熱量は LEDヘッドランプやLEDリアランプと比較して小さいが、設置場所が車内の天井という狭いスペースになるため、天井と車体の間のわずかな空間で効果的に放熱を行わなければならない。

図1LEDマップランプユニットの構造
図1 LEDマップランプユニットの構造 

 一般に、発熱量の大きなLEDは、ヒートシンクに直接取り付けて放熱を促進させる。そのため、点灯回路は別の場所に設置することが多い。一方、LED室内灯の場合は、低出力のLEDが少数使用されるだけなので、LEDを点灯回路の基板上に配置することが可能である。図1に示したのは、LEDマップランプユニットの構造である。同ユニットは、取り付け金具を兼ねたヒートシンク、LEDが実装された回路基板、レンズ付きの樹脂カバーで構成される。今回の試作品は、Tjの最大値(Tjmax)が130℃の表面実装型LEDを2個使用している。表面実装型LEDは、コンパクトで放熱性に優れ、設置スペースに制限のある室内灯に適した光源である。

図2LEDマップランプユニットの放熱経路
図2 LEDマップランプユニットの放熱経路 LEDから発生する熱は、そのほとんどが熱伝導によりヒートシンクの内部を通過し、ヒートシンクから空気に放出される。

 LEDを実装した回路基板の裏面は、厚さ1mmの熱伝導シートを介してアルミ製ヒートシンクに取り付けられている。なお、密閉された空間内では放熱が不十分なので、室内灯のハウジングにおけるマップランプのスペースの裏面には開口部が設けられている。この開口部から、ヒートシンクを室内灯の外の空気に触れさせることにより放熱が可能になる。一般に、LEDは赤外線放射量が非常に少ないため、図2に示すとおり、ほとんどの熱は発熱部から固体内部を通過して、ヒートシンク表面から空気に放出される。従って、LEDのTjを低く抑えるには、各構成部品の熱抵抗を小さくした上で、ヒートシンクを最適に設計する必要がある。

 今回の試作品は、回路基板上に抵抗などがあって発熱する上に、樹脂カバーで覆う構造となっている。そのため、LEDから生じる分を含めて、回路裏面に熱を効果的に逃さなければならない。そこで、FR4を使用した基板に多数のサーマルビアを設けるなど、熱が基板裏面に伝わりやすい構造とした。

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