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LED室内灯の開発に役立つ熱流体シミュレーション(2/3 ページ)

全世界的な温室効果ガスの低減に向けた動きに対応して、さまざまな工業分野で環境負荷を低減する製品の開発が進められている。自動車照明の分野でその中心となっているのがLEDである。ハロゲン電球やHID(高輝度放電ランプ)をLEDに置き換えることにより、消費電力の低減や、照明部品の長寿命化による廃棄物量の削減などが期待できる。本稿では、そうしたLED室内灯の開発における熱流体シミュレーションの有用性について解説する。

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LED単体の熱計算モデル

 筆者ら(市光工業)は、LEDの熱流体シミュレーションツールとして、カナダMAYA Heat Transfer Technologies社の「ESC/TMG」を使用している。同ツールは、米Siemens PLM Software社の3次元CADツール「I-deas」に組み込まれており、LEDの熱モデルのような比較的簡単な形状はI-deasで作成すればよい。また、複雑な部品形状の場合は、設計時に用いる形状データをI-deasにインポートしてから熱計算モデルを組み立てることになる。その後、シミュレーションにおける計算時間を短縮するために、計算モデルの簡略化を図る。最後に、計算メッシュを作成して計算条件を付与すれば、直ちにシミュレーションを実行することができる。

 また、シミュレーション結果の検討後、再シミュレーションが必要な場合は、I-deas上で計算モデルの多くの部分を修正できるので、再実行までの作業工数も少なくて済む。

 LEDの熱流体シミュレーションを実施する場合、最も重要なのがLED単体の熱計算モデルの作成である。ただし、ほとんどのLED製品では、パッケージ内部部品の寸法までは公開されていない。そのため、必要な寸法および各部の形状は、顕微鏡や断面写真などにより細部を観察して得ることとした。

 作成したLEDの熱計算モデルは、実物と同様にカソード上にチップを取り付ける構成とした。そして、熱はカソードから回路基板に伝達されるとともに、カソードからパッケージ内部を経由してアノード側にも伝わる構造となっている。各部を結ぶ金線による熱移動は、微量であると仮定して省略した。

 LED内部で発生した熱は、回路基板上の銅箔に伝達され、ユニット全体に拡散する。通常、作成したLEDの熱計算モデルは簡略化されていたり、さまざまな仮定を含んでいたりするため、必ずモデル単体での検証が必要となる。筆者らは、熱流体シミュレーションの精度向上を目的として、室内灯用LEDに限らず、ヘッドランプ用およびリアランプ用LEDについても単体モデルの検証を実施している。

 今回は、LEDを1つだけ取り付けた、FR4と銅箔で構成する簡単な回路基板により検証を行った。具体的には、LEDパッケージの温度を熱電対により計測し、シミュレーション結果と比較した。通常、LEDを使用した照明機器の温度計測は、各部の温度が一定となる数分から数十分後に実施されることが多い。そのため、環境温度、負荷電力が初期の設定よりわずかに変化する。従って、厳密な比較を行うためには、シミュレーションも計測時の環境温度、負荷電力で実施する必要がある。本試験の場合、計測時の環境温度は25.2℃、LEDの負荷電力は0.33Wであった。この条件で、LEDパッケージのカソード側端部の温度は、実測値で45.2℃であった。これに対してシミュレーションによる計算値は46.4℃となっており、モデルの計算精度に問題がないことを確認できた。

 なお、LEDメーカーからは、カソード側端部からジャンクション部までの熱抵抗に関する情報が提供されている。これらの数値と負荷電力の積から、ジャンクション部までの温度上昇予測値として27.1℃という結果が直ちに得られる。これに、カソード側端部の温度45.2℃を加えることにより、Tjは 72.3℃と予測される。

LEDユニットの検証

 続いて、マップランプ用LEDユニットの試作品に対してシミュレーションを実施するために、ユニット全体の熱計算モデルを作成した。基板についてはソリッドモデルとして作成し、銅箔パターンおよびサーマルビア内面の銅メッキ層は、厚さが0.1mm以下であることから、2次元シェルで作成した。また、LED 以外の抵抗器などの熱源は、設置面に存在する定熱源として定義した。

 LEDユニットの熱計算モデルは、微小な角部および屈曲部を除き、試作品をほぼ忠実に模して作成した。ただし、基板とヒートシンクの間に挿入する熱伝導シートは、取り付けネジの締め付け圧力による圧縮は考慮せず、無負荷状態と同じ厚さ1mmとした。

 一般に、異なる部品が接触する部位には、接触熱抵抗が存在し、温度上昇の一因となる。本モデルの場合、LED‐基板間、基板‐熱伝導シート間、熱伝導シート‐ヒートシンク間の3カ所が接触面となる。いずれも、固体接触に比べて密着性が高いため、シミュレーションでは接触面の熱抵抗を考慮しないこととした。また、試作品では回路基板表面にレジストが塗布されているが、LEDを含む回路の熱が銅箔パターンとサーマルビアを介して、直ちに基板裏面に伝達されると考えられるため、シミュレーションでは考慮していない。

 筆者らは、LED照明機器の開発を行う場合、LED単体の検証に続いてランプハウジングなどを含まないLEDユニット単体の検証を実施している。前述したとおり、LEDからの熱は、ほとんどが固体内部を通過してヒートシンク表面から空気へ伝達される。そのため、ほかの光源のように、赤外線を発してユニット自体やランプハウジングを局部的に熱することや、外部に熱が放射されることはない。多くの場合、LEDランプハウジングは、熱的に単なる樹脂容器にすぎず、容積に応じた熱容量の大きさにより、LEDユニット周囲の空気温度を上昇させているだけである。従って、LEDユニットをランプハウジングに設置した場合の温度は、LEDユニット単体の計測値または計算値から、ある程度推定することができる。また、LEDユニット単体であれば、検証時に、熱電対などの温度計測センサーを取り付けやすく、サーモグラフィによる温度計測も可能になる。

図3LEDヘッドランプユニットの温度分布
図3 LEDヘッドランプユニットの温度分布 回路基板上で発生した熱は、ほとんどがヒートシンクに伝達される。このため、2つのLEDの温度はほかの熱源の影響を受けず、ほぼ同じ値になる。

 シミュレーションは、LEDユニットでの検証試験と同一の条件で実施する。LED1個当たりの負荷電力を0.31Wとし、その85%が熱に変換されると仮定した。抵抗などを含む総発熱量は1.29Wで、環境温度は24.6℃であった。

 図3に示したのは、樹脂カバーを取り除いた状態で、LEDユニットの温度分布を表示した結果である。この図には、計算値に加えて、実測値も示してある。 LEDのカソード部と基板裏面の温度差は約3℃。サーマルビアを介して熱が裏面に伝達されていることがわかる。LEDカソード部と最も離れたヒートシンク端との温度差は約5℃である。2つのLEDを含め、いずれも実験値と計算値の差は1℃以下となった。従って、LEDユニットの計算モデルも、LED単体モデルと同様に、計算精度に問題がないことがわかる。

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