意外に手ごわい「ダイオード」:Wired, Weird(2/2 ページ)
一言でダイオードといっても、回路全体を見渡して用途に応じたものを使わなくてはならない。回路保護用ダイオードを例に、使い方を示した。
ダイオードには違いないけれど……
「ダイオード」とひとくくりに分類できる素子は何種もあるが、それぞれにはさまざまな点で違いがある。
筆者は、LEDを整流器の代わりに使えば、その発光の度合いを基に電流計として利用できるのではないかと思って調査をしたことがある。その結果、LEDの逆電圧の絶対最大定格はわずか4Vほどであることがわかった。これでは低すぎて、整流には使えない。フォトカプラなどでは、内蔵するダイオードに逆電圧が加わったときの保護のため、図4のように保護用のダイオードが使われる。このように、LEDでは逆電圧に対する考慮が必要だ。
一方で、紫外線LEDのように、静電気に弱い種類のLEDもある。この性質から、紫外線LEDは保護用のツェナーダイオードを備えている(図5)。紫外線LEDに静電ノイズが印加されたとしても、順方向に印加されるのであれば問題ないようにも思える。図4とは異なり、ツェナーダイオードを使っている理由について、筆者はメーカーに尋ねたことがある。しかし、明確な回答は得られなかった。想像するに、紫外線LEDはフォトカプラが内蔵するLEDよりも高速性に劣るため、すぐには順方向に電流が流れず、高電圧が生じてしまうからではないだろうか。LEDをスイッチングダイオードと同じような性質のものだと考えてはならない。
もう1つ例を挙げよう。東芝のESD保護用ツェナーダイオードのデータシートを見ると、その冒頭に「ESD保護用以外の用途には使用できません」と書いてある。ツェナーダイオードには違いないが、一般的な定電圧ダイオードとしての用途には向かないということだ。また、スペックシートを見ても、順方向電流については書かれていない。図2のような用途において、リレーで振動的な電圧が生じたときのプラス方向の電圧を抑えるためにツェナーダイオードを使おうとした場合、順方向電流の規格がわからないと困る。
根本的な勘違い
ある会社の入社試験で、次のような問題を出題したことがある。
6V、10mAにおける動作抵抗が30Ωの定電圧ダイオードに、10mAの電流を流した。このとき、ダイオードが消費する電力を求めよ
答えは6〔V〕×10〔mA〕=60〔mW〕である。しかし、「動作抵抗が30Ω」という“わな”に引っ掛かり、10〔mA〕×10〔mA〕×30〔Ω〕=3〔mW〕と回答してしまう人が多い。
また、派遣先の会社で、図6のような回路を見掛けたことがある。筆者の知らないアイデアを適用した回路なのかとも思ったが、そうでもないらしい。この回路の設計者に尋ねたところ、「レギュレータの入力電圧を下げるためにダイオードを付加した。しかし、ダイオードが発熱するので、その熱を分散させるためにダイオードに並列に抵抗を追加した」という説明であった。設計者は、電圧降下だけに注目してしまい、ダイオードを付加したのではないだろうか。上記の入社問題の回答者と同様に、ダイオードの発熱についても考慮する必要があるのだが、それよりも先に、レギュレータ自体の放熱について配慮すべきである。
図6の回路のレギュレータは表面実装タイプのもので、出力が放熱タブになっていた。しかし、基板にはICの面積分しか銅箔が存在しない状態であった。これでは効果的に放熱することはできない。グラウンドパターンは広いので、放熱の面で有利である。従って、放熱タブをグラウンドにつなぐタイプの製品を使用するとよい。
図6の回路ではダイオードがじゃまだ。入力電圧を下げることを目的とした場合、ダイオードがなければ、抵抗を大きくしてレギュレータの損失を減らすことができる。ダイオードが定電圧ダイオードのように働くと、この方法が使えない。抵抗を大きくしても、レギュレータの入力電圧は下がらないからだ。
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