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最新ツールが支えるモデルベース設計(1/3 ページ)

組み込みシステムの大規模化、複雑化が進むに従って、ソフトウエア開発の負担が大きくなってきた。そこで数年前から注目されてきたのがモデルベース設計である。本稿では、モデルベースのソフトウエア開発をサポートするために、どのようなツールが開発されており、どのように活用されているのかを紹介する。

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普及が進むモデルベース設計

 ICや基板を製作する前に、ソフトウエアを使って、設計した回路を慎重に評価することで、エンジニアはかなりの問題を取り除くことができる。開発の対象となるものがICであれ航空機の機体であれ、モデルベース設計や早期検証用のツールは、いち早くエラーを検出し、予定どおりに市場へ製品を投入することに一役買っている。

 モデルベース設計は、開発の対象とするシステムを記述したモデルを仕様として定義し、そのモデルに沿って開発プロセスを再構築するというものだ。医療機器や航空宇宙機器の設計技術者などのようなドメインエキスパートにとって、低レベルのハードウエア/ソフトウエアの詳細を理解する必要がなくなるという重要な利点をもたらす*1)。それ以外にも、実際にテストを行うまで検出できないようなエラーを、仕様を定義する段階で検出できるようにすることで、時間やコストの節約にも貢献する。現在、提供されているモデリング/プロトタイピングツールには、メカトロニクスシステムからRTL(Register Transfer Level)ベースのIP(Intellectual Property)を利用したSoC(System on Chip)まで、あらゆる種類をカバーするものが存在する。

 当然のことながら、自動車業界では、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車などといった新しい技術を採用した製品開発の取り組みにおいて、モデルベースの設計/シミュレーションを積極的に採用している。

 モデルベース設計およびラピッドプロトタイピングが特にその威力を発揮するのは、概念検証の作業や、仕様が顧客の要件を満たしているか否かを確認する作業においてだ。1つの例を挙げよう。米Alliance Spacesystems社は、火星探査ローバー「Spirit」や「Opportunity」などに向けたロボットアームを開発している*2)。同社のメカトロニクスグループを統括するSean Dougherty氏によると、「ハッブル宇宙望遠鏡では、故障した機器を交換するために100個もの留め具を外さなければならない。当初、NASA(米航空宇宙局)は、その作業が可能なものなのかどうか見通しを持っていなかった」と述べる。それに対し、Alliance Spacesystems社は、米National Instruments社のハードウエアおよびソフトウエアを使用することにより、X、Y、Z軸方向に動作し、ビジョンシステムによって留め具を認識するロボットのプロトタイプを3カ月以内で完成させた。

 もう少し身近な応用例を挙げると、Alliance Spacesystems社は、映画でカーチェイスを撮影するために用いる車載カメラブーム(車の屋根に設置する撮影用の装置)を開発した。航空宇宙用途などでは、リードタイムが長く、仕様書や要件書が慎重にレビューされるのに対し、映画制作などの用途では、何度も試作を繰り返しながら必要なものを作り上げていく傾向にある。「例えば、National Instruments社の『LabVIEW』や『CompactRIO』のようなソフトウエア/ハードウエアを使用すれば、顧客の要求の変化に対応した新しいバージョンを迅速に開発することができる」とDougherty氏は述べる。


脚注

※1…『組み込みソフト開発の“主役”は誰に?』(Rick Nelson、EDN Japan 2009年12月号、p.26)

※2…"Alliance Spacesystems Relies on the NI Graphical System Design Platform to Develop Sophisticated Robotics," National Instruments, 2009


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